母のギフトがすごいんです

えだ

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第1章

第7話 戻れない

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 あれから俺たちは生存者がいないかハピタ町を歩き回った後に、夜を過ごす場所として裏山の“秘密基地”へと移動した。

 やはり、ハピタ町には生存者はいなかった。業火で焼かれ、何か大きな化け物に踏み荒らされたようだった。

 裏山の秘密基地は、俺らが廃品を利用して作った自慢の小屋だ。壊れた樽や木箱を積み上げ、木や布で屋根まで作っている。まぁ、小屋の中には1人くらいしか入るスペースはないんだけど。

 プライベートのない孤児院という環境から、少しでも息抜きできる場所が欲しかった。そして作り上げたこの秘密基地に今日ほど感謝した日はないだろう。幸いにも、秘密基地は焼かれてもいなく、踏み荒らされてもなかった。

 今からドトルを抱えて隣町に行けるほど、俺たちに体力は残されていなかった。だから、俺たちは秘密基地にたどり着いた途端に安堵した。

「‥よかった‥ここまで焼かれてなくて‥」

 溢れるようにそう呟くと同時に、情け無いことに腰が抜けてしまった。
もう、全てがぼろぼろだ‥。

 あの男との戦いが終わって数分後、ドトルを包んでいた回復魔法が消えた。脈や顔色も正常で、首元の傷跡も消えていた。ドトルは深く眠ったままだけど、俺の魔力が尽きる前にドトルを治すことができて心底ホッとした。

 体力も魔力も、今にも尽きてしまいそうだ。
ーーでも‥‥守れてよかった‥。

 ジークの背中ですやすや眠るドトルを見て、ほっと小さく息を吐く。
ジークとレグラがいてよかった。2人がいなければドトルを守ることはできなかった。

「大丈夫か?リージュ‥。お前、背中とか思いっきり打ってただろ」

「それはジークも同じじゃん。‥‥でも俺、本当死ぬかと思った‥。自分の弱さを思い知ったよ」

「‥‥ドトルを治したみたいに、自分に回復魔法かけれねーの?」

 ジークが小屋の中に敷かれた布の上にドトルを寝かせた。

「もう魔力が尽きそうだから、いまは魔法使えないと思う‥。というか‥レグラめっちゃ強かったね!!」

 レグラは小屋の前に枝を集めて、その枝の山に魔法で火をつけた。ぱちぱちと音を立て、赤い炎が薄暗い周囲を照らした。

「‥‥‥‥炎の魔法は得意みたい。皮肉だけどね」

 私たちの全てを焼いたのは炎なのに、とレグラは言う。
目を瞑ったらすぐに深く眠ってしまいそうなほどに体も精神も疲れているけど、ハピタ町に訪れた悲劇があまりにも悲惨すぎて、気を抜くと発狂しそうになる。懸命に“今できること”を建設的に考えようとしているけど、そんなの現実逃避でしかない。

「‥‥もう戻れないと思う」

 ジークは言った。
ハピタ町はもうないし、元の生活が送れるわけじゃない。だけどジークが言いたいのはどうやらそういう話とは違うらしい。

 火で照らされるジークの目は、どこか遠くを見ていた。

「‥‥なんでハピタがある日突然こんな目に合わなきゃいけなかったのか、理由がわからない。理由を聞いたところで納得もできねーだろうけど」

「‥うん」

「俺は、許せない。‥だから、許さない」

 秘密基地から見えるハピタ町は、悲しい遺物でしかなくなった。昨日までみんなが当たり前に生活をしていたはずなのに。

「‥‥‥私も、許せないよ。‥プーレナイトのせいで、私は人を殺しちゃったの。もう、戻れないよ‥」

 レグラは俯きながらそう言った。その細い体はカタカタと震えている。

「‥‥‥レグラ、レグラがいなかったら俺たちは殺されてたよ。ドトルも助けられなかった」

 俺がそう言うとレグラは両手で顔を覆い、苦しげに声を荒らげた。

「だから、プーレナイトが憎いの!!!あいつらがハピタを襲わなければ、あの男がみんなを殺そうとしてなければ、私は人を殺してなかった!!!」

 虚しく響いたレグラの声は、そのまま泣き声に変わっていった。レグラの泣き言を聞きながら、俺は気付かれないように静かに涙を流した。たぶん、ジークも泣いてた。
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