謎の箱を拾ったら人生が変わった件〜ダンジョンが現れた世界で謎の箱の力を使って最強目指します〜

黒飛清兎

文字の大きさ
13 / 214

13話 独りの戦い

しおりを挟む
 俺はゴブリンを前にして冷や汗をかいていた。

 独りというのはこんなにも不安になるものなのか。

 今まで俺は独りで引き篭って生きていた俺が言うのもなんだが、やはり人は独りでは生きていけない生き物なのだろう。

 だが、俺は俺自身の欲の為に1人で生きる事を選んだ。覚悟を決めなくては。

 俺の事を警戒して、殺気を放ってくるゴブリンはもう今にも襲いかかってこようと鉈を構えている。

 俺もナイフを構え、精神を落ち着かせる。


「はっ!!」


 ゴブリン達よりも早く動き出した俺は先手を取った。

 ゴブリン達は少し後ずさって鉈でガードをしようとするが、俺が素早く動いた為1歩及ばず右のゴブリンの首を落とすことに成功した。


 だが、次の瞬間、俺の左肩に鋭い痛みがはしる。


「ぐあっ!」


 いたいいたいいたいいたい!


 何が起こったのか理解が追い付かない。

 俺はパニックになりながらも、何とか左側にナイフを振った。


「ギャァッ!」


 右手にはしる生々しい感触。これは肉を切った時の感覚だ。

 その方向を見ると片腕が無くなってしまったゴブリンが居た。運良く腕を切り落とせたようだ。

 しかも切り落とせたのは鉈を持っていた方の腕だったようで、鉈が地面に転がっている。

 ゴブリンが鉈を拾おうと屈んだ所を狙い、俺はそのゴブリンの首を落とした。


「はぁ、はぁ、いてぇ!」


 声を出しても何もよくならないのは分かっていたが、それでも声を出さずには居られなかった。

 左肩を見てみると、20センチ程の大怪我をしていた。

 アドレナリンが大量に出ているのか、そのレベルの怪我にしては痛くないが、それでも痛い。

 このままでは出血したり、そこから細菌が入ったりしてやばい事になりそうだ。

 とりあえず消毒とかをしなくては。

 俺は家の中に入るがある事を思い出す。


「俺医療キットとか持ってねぇー!」


 運動などをしていない俺は怪我をすることもないためそういった物は家にないのだ。

 何か代用できるものはないかと部屋を見回す。

 目に入ってきたのは壁一面に置いてある謎の箱達だ。


 …………これで何とかならないかな?


 かなり危険な賭けにはなるだろうが、それでも試せるものはこれくらいしかない。

 俺はいつも通り箱を開け始めた。

 何個開けたか分からないが、微妙に数えるのが億劫になり始めた頃、頭に声が鳴り響いた。


【スキル《再生LV1》を入手しました】


 俺は賭けに勝てたようだ。


「よしよし、じゃあ治ってくれーーー!!」


 俺は左肩を見る。


「う、うーん。ま、まぁ、そんなに早くは変化無いよね。」


 俺は全く変化のない左肩をもう一度見る。


「あ、あの、もう結構痛くて辛うじて耐えてるみたいな状況なんですよ。」


 アドレナリンの効果などとうに切れていて、途中からは本当に地獄だった。

 血小板のお陰で血は固まったが、それでも痛いものは痛いのだ。

 だから、もっとこうシュルシュルシュルーっと治ってくれることを期待したのだが…………。


「くそがぁっ! 痛っ!」


 イラついて叫ぶが叫んだだけでも左肩はズキリと痛んだ。


 しょうがない。もう1回箱を開け続けよう。


 急いで箱を開けるということはかなりきつかった。

 いつもならもっとルンルンで開けるが、今回はそうもいかない。

 まず普通に痛い。そのせいで全然あかなかったらイライラしてくるのだ。

 くっそ、こんな事になるくらいならマジで魅力スキルとか取らないで筋力とかそういうのをあげておくべきだった!

 俺は悪態をつきながらも黙々と箱を開けた。


【スキル《耐久LV1》を入手しました】


 このスキルはなんだ? と思った瞬間にそのスキルの効果を理解した。

 痛みが少しだけ引いたのだ。

 痛みが引いたと言うよりは、痛みに耐えられるようになったという感じだが、感覚的には痛みが引いたような感じだった。

 どのくらい引いたかと言えばちょっとしか減っていないのだが、それでも精神的には余裕が出来た。

 そして冷静になると箱を開けているうちに少しづつ腕の痛みが引いていっていることに気づいた。やはり再生の効果は出ているのだろう。

 まぁ、全然痛いんだがな。それでも1番痛かった時の半分くらいまで痛みは引いた。

 なので俺はまた箱を開け続けた。

 早く痛みを無くしたい。その一心で箱を開け続けた。

 精神的に余裕が出来たからか、箱を開けるきつさはかなり減った。

 そうなると箱を開ける速度も上がったように感じた。

 やっぱりイライラしながら何かをやると上手くいくわけないよね。

 
 そうして俺は窓から朝日が差し込むまで箱を開け続けた。

 再生はLV2になり、耐久はLV4にまで上がった。
 その頃には痛みもかなり減ったし、心做しか傷口も少し小さくなったように見えた。


 はぁ、一時はどうなるかと思った。

 そう思うと一気に眠気が襲ってきた。

 もういっか。

 俺はベッドで箱を開けていたので、そのままベッドに倒れ込んだ。

 次からは戦闘系のスキルを重点的に取ろうと肝に銘じ、眠りについた。


 
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...