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16話 食糧確保
しおりを挟む部屋の中を見回すと、随分と高そうなタンスを見つけた。
よし、これで力試しをしてみよう。
タンスには重厚感があり、金属のようなもので装飾されている。
重さで言うと軽く100キロくらいはありそうだ。
俺はとりあえずタンスを持ってみた。
すると、思ったよりも簡単に持てた。
かなり重たい物なのも分かるのだが、それ以上に俺の力が強くなっている事を感じた。
この力はやばい。
そう、肌で感じられたのだ。感覚でものを言うため正確では無いが、多分1トン程度なら持てそうな程の力がありそうだ。
俺は少し怖くなったため、力試しを止めた。
これ以上やると本当にこの家のものを壊してしまいそうだからだ。
初めはある程度色んなものを壊してしまおうと思っていたが、それも限度はある。
この力を使えばこの家が半壊するくらいの被害を与えることが出来そうだ。
そこまでやる程の度胸は俺には無い。
「きょ、今日はこのくらいで勘弁してやる!」
誰も居ない部屋にそのダサい台詞が響く。
俺はそのままその家を出た。
家を出ると、その家の柵のそばにゴブリンが二体居るのが見えた。
一体ならまだしも二体か…………。
俺はこの前の事もあり、2体以上のゴブリンとの戦いを躊躇していた。
…………よし、決めた。気づかれないように家に帰ろう。
俺が気づかれないようにゆっくりと扉を開けると…………。
ギイィィ
「げっ。」
その音を聞き、ゴブリン達はこちらに気づいてしまった。
クソ、金持ちの家ならもっと扉とかちゃんと錆止めしとけよ!
まぁ、避難してかなりの日数が経って居るため無理な事なのだが、それでもキレずには居られなかった。
もうこれは戦うしかない。
逃げるという選択肢もあるが、ここら辺周辺には思ったよりも沢山のゴブリンが居る。
なので、逃げたりして居るとゴブリンが物凄い数になって追いかけてくる事になるのだ。
そうして、逃げた先の俺の家の周辺に集まって、何とかして俺の家に入ってきて俺を殺すだろう。
だから、戦うしかないのだ。
俺はナイフを構えた。
左だ。左のゴブリンから狙おう。
俺は何回も戦っているうちに左から右にナイフを振ると戦いやすいことに気づいた。
生物学的にどうなのかは分からないが、俺的にはこれが1番やりやすいのだ。
そうすると、攻撃後には体が右を向く。なので右から殺ると左のゴブリンに背を向けることになるのだ。
前回の戦いがそうだ。俺はその反省を活かして今回は左を狙う事にした。
俺は左のゴブリンに素早く迫る。ゴブリンは反応出来ていない。
「はっ!」
俺はそのまま左のゴブリンの首をはねた。物凄く軽い感触だ。
力が上がった効果だろうか。俺はそのままの勢いで右にいたゴブリンの首もはねる。
「勝った…………?」
実にあっさりとした勝利だった。
戦略など立てなくても良かったかもしれないと思うほどの圧勝だ。
そして、俺はそれを可能とする箱の力が少し怖くなった。
俺はビビりなんだ。この箱から手に入る力には代償は無いのか。
そもそもこの箱は何なのか。
分からないものばかりだ。
だが、実際に今は利益しか出ていない。
昔のトラウマだってこんなにも簡単に打ち勝てた。この戦いでかかった時間などものの数秒だ。
俺は強くなった。それでいいじゃないか。
恐怖に支配されそうになる思考を振り払う。
とりあえず家に帰ろう。食糧はたんまり手に入れた。
これだけあればまた引きこもることも可能だ。
まぁ、防衛者とやらになったからにはゴブリンを倒さなくてはいけないとは思うが、別に絶対という訳でもない。
たまに気分転換に外に出てそこで出会ったゴブリンと戦う位で良いだろう。
ゴブリン程度なら俺でも楽に倒せそうだ。これで社会に貢献できるってんだったら楽なもんだろう。
俺は帰りながらゴブリン達を倒しながら帰ることにした。
ゴブリンって今の俺からしたら弱く感じるけど、普通の人からしてみたらマジで殺人鬼みたいなもんだな。
身体能力は普通の人間とさほど変わらないから普通に殺されてしまうんだ。
そういえば俺もこの前陽夏に助けて貰えなかったら多分死んでたよな。
…………そう思うと陽夏には感謝してもしきれないな。
仕方が無い。陽夏のためにもちょっと頑張ってゴブリン倒すか。
俺はちょっとだけ覚悟を決める事にした。
それからゴブリンを倒しながら帰宅するが、特に攻撃を食らうなどということは無く、すんなりと帰ってくることが出来た。
とりあえず、汚いが布団にダイブする。
もうずっと洗ってないし、俺自身も風呂など入っていないのでもう気にしないことにしている。
というか水も止まっているので風呂に入ることはまずまずできない。こういう事は気にしないことに限る。
よし、始めるか。
俺は2度目のエンドレス箱開けタイムに入った。
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