19 / 214
19話 箱の秘密の危機
しおりを挟む俺の脳が段々と正常に作動し始めて、やばい事をしていることに気づいてからの俺の行動は速かった。
流れる様な全力の土下座だ。
土下座は特にしなれている訳ではないが、それでもそんな事をやってしまえる程俺はやばい事やったと思っていた。
だって世界がこんな事になっている中で、それに対応することの出来る強い力を持った人達のトップの座に着いている人だ。弱いわけが無い。
下手すれば俺は不敬罪か何かでここで死刑にされ、異論は認めないみたいな感じになってしまうかもしれない。
それなら出来るだけ相手の怒りを鎮めるためにも土下座が最適解だと俺は判断したわけだ。
「ブファッ。」
コナーさんは思いっきり吹き出した。
「ちょっと、何やってるの! はーっ、面白すぎ!」
コナーさんは爆笑していた。
良かった。怒ってはいないようだ。というか、なんで笑っているのだろうか。別に面白いことはしていないのだがな。
「はぁ、別に怒ってないっからさ、だからっ、起き上がってっよっ。」
「良いんですか?」
「いいよいいよ。ずっとその体勢だったら笑っちゃって喋れないからっ。」
俺はコナーさんに言われた通りに起き上がる。
コナーさんは思っていたよりも小さく、コナーさんを見る為には自然と少し見下す様な体勢になってしまう。
まって、これって失礼なのか!? そういった目上の人と話す経験などまず無かったし、あったとしても大体が身長が俺よりも上の人だったからこんな経験初めてだ。
俺は考え抜いた末、少し屈んでコナーさんよりも少ししたあたりの身長に合わせた。これで見下す感じにはならないし、失礼じゃないはず。
「ええっと、君のさっきの行動とかから考える限り君の方が身長が高くて自然と見下す様な感じになるからそれだと失礼だから屈んだんだと思うんだけど、それって逆に僕の事をチビって言ってるような事になるって気づいてる?」
コナーさんは呆れた様子でそう言った。
そ、そうか! 確かにそうだ。畜生、またやっちまった。仕方が無い。また土下座を……………!
「わぁー! やめてやめて! もう良いから! 別に怒ってないよ!」
「すいません!」
「もうわかったから。で、なんの用でここに来たんだい? マスターの僕のところに来るくらいだから何かあったんじゃないのか?」
そうだ、忘れていたが陽夏に会おうと思っていたんだった。
「陽夏って人を知っていますか? 今から会おうと思って居たのですが人の波に呑まれてここまで流れ着いてしまったのです。だからその、別にそこまで大事な事でも無いんです。すいません。」
「あぁ、そうなんだ。てっきりスキルの鑑定を頼みに来たのだと思ったのだけどな。あそこの奴らは適当だから場所だけ伝えて後は放置みたいな事を良くするんだよ。」
あそことは多分俺がゴブリンを初めて殺したあの場所だろう。
そしてスキルの鑑定という言葉に俺はドキリとした。
俺は多分他の人には無いくらいの大量のスキルを持っている。それを見られると俺の箱の秘密までバレてしまうかもしれない。絶対に防がなくては。
そこで俺がとった行動は。
「では、僕はこの辺で帰りますね!」
逃げるだ!
こういう時は逃げるのが1番! どうせ俺は家に籠るんだ。逃げてしまえばどうとでもなる。
だが、俺の目論見は外れてしまった。
「ちょっと待ちなよ、君はスキルを獲得してないのかい? 君のような子を鑑定した記憶が無いんだ。君みたいに若くていい体をしているイケメンなんてそうそう居ないし、間違えないと思うんだけど。獲得して無いならついでに獲得してみようよ。君みたいな若い子は大歓迎だからね!」
まずいぞ。これは絶対に鑑定される流れだ。なんとしてでも回避しなくては。
「ええっと、ちょっと急いでいて…………。」
「え? そんなに急いでいるのに陽夏ちゃんに会おうとしていたの?」
「えっと、その。」
やばい。そこまで考えてなかった。急いで考えなくては!
「ほぅ、その反応。急いでいると言うのは嘘だね? そんなに鑑定されるのが嫌なのか、それとも今から僕に言えないようなことでもしようと言うのか…………。」
「いやっ! そんなことは!」
コナーさんの眼が紅く光る。まずい!
「その反応も怪しいね。どれどれ君のスキルは…………。ふぇっ!?」
コナーさんは間の抜けた表情で固まってしまった。これは、鑑定されてしまったな。まずい、怪しまれるか?
コナーさんはワナワナと震えている。
「あのっ! 誤解で「素晴らしい人材だぁ!」えっ!?」
コナーさんは目を光らせて俺の方を見た。
「ちょっと! 君はなんでそんなに強いんだい!? はぁ! はぁ! やばいよ! 興奮がおさまらない! 胸がドキドキする! 何なの!? これって恋!?」
「ちょ、何言って。」
俺が一歩後ずさると彼は物凄く焦った表情になった。ちょっと可愛い
「まってよ! 逃げるの!? やめてよ! 逃げないで! くっ、こうなったら!」
ドンッ
物凄い勢いのタックルだ。今の俺みたいにかなりの筋力がなければぶっ飛んで死んでるレベルだ。
そんなタックルを食らった俺はその場に留まることが出来るわけもなく、押し倒されてしまった。
「ちょっと、やめてください!」
俺は俺を拘束するその小さな身体を退かそうとするが、その顔を見てそんな気はなくなってしまった。
何故なら、その顔は今にも泣きそうな顔だったからだ。
「お願い、逃げないで。君みたいな素晴らしい人材は僕、見たことがないんだ! だから、お願い!」
「ヴッ。」
もう、そんな顔されたら断れ無いじゃないか。
「分かりましたから。だから、もう泣かないでください。」
「本当に? 嘘じゃない?」
「はっ、はい。」
「やった、やったー!」
コナーさんは満面の笑みを浮かべた。
この人可愛すぎないか? ショタコンの人の気持ちが分かりそうだ。
「やったー!晴輝君大好き! んー、すりすりー。」
「ちょ、恥ずかしいですって!」
コナーさんは俺に抱きついて顔を擦り付けてくる。
もう、俺はこの人が天使に見えてきたよ!?
そうして、コナーさんのその行動はコナーさんの頭が冷えるまでの数十分間続いたのであった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる