謎の箱を拾ったら人生が変わった件〜ダンジョンが現れた世界で謎の箱の力を使って最強目指します〜

黒飛清兎

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40話 謎の女の人

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 俺は階段から降りてくるゴブリンを待つが、いつまで経ってもやって来ない。


「あれで打ち切りだったのか? まぁいいや。ゆうちゃん! 階段の上を見に行くから着いてきて!」

「はーい!」


 俺達は階段を昇っていった。


「あれ? お兄ちゃん! あれゴブリンじゃ無いよ!」


 ゆうちゃんが指を指す所には、赤い髪をした女の人が立っていた。ローブのような物に身を包んでいて、ちょっと不思議な格好だ。


「あれは…………人間なのか?」


 俺は混乱していた。

 ただの女の人ならまだわかるのだ。

 だが、あの人はゴブリンの真ん中に平然として立っているのだ。

 ゴブリンはその女の人を認識はしているようだが、襲ったりはしない。


「お姉さーん。だいじょーぶー!?」


 ゆうちゃんがそう叫んだ。

 だが、その声は届かなかったのか、はたまた隠密のドレスの効果で聞こえなくなってしまったのか、女の人とゴブリンは反応を示さなかった。


「ゆうちゃんはここで待ってて。俺はあの人に話しかけてくるから。」

「分かっ…………って待って!? 浮気!? ダメ!」


 はっ! そうか! そうだよな! 

 俺は一度聞いた事がある。女の子とのデート中にほかの女の子の事を考えては行けないと!

 今はデート中…………かは分からないが、まぁ、男女二人が一緒にいるんだからデートみたいなものだよな。

 ダンジョンデート的な感じかな?

 そのデート中に他の女の子に声を掛けるなんて考えるよりもさらに罪深い事だよな!

 悪い事をしたら早めに謝るのが得策だろう。


「ゆうちゃんごめん! それは俺が考え無しだった! 浮気なんかする気1ミリも無いからね。俺はゆうちゃん一筋だから他の人にうつつを抜かす余裕なんて無いから安心してね。あの人は素通りしよう!」

「うーん。それもダメ!」


 えっ、じゃあ俺にどうしろと!?


「んー。えへへ。じゃあ、行ってもいいよ! 今の私は機嫌がいいからね!」

「いいのか!?」


 良く分からないが、許可は貰ったから声を掛けるか。
 

「じゃあ行ってくる!」


 俺は女の人の方へ駆け出した。


「だ、大丈夫ですか?」


 俺はその人の前に立ってそう声を掛ける。

 その間に俺のことに気付いたゴブリンが攻撃をしようとしてくるからそれを躱したり、逆に攻撃したりして退けていく。

 俺が声を掛けると、その女の人は物凄くびっくりしたような顔をして俺と距離を取った。


「ль д! ?」

「ん? 何言ってるんだ?」


 その女の人はよく分からない言語で話し始めた。

 
「Пч ы здь,? з э ль д?」

「お、おぅ、あいむじゃぱにーず。あいどんといんぐりっしゅ?」


 海外の人なのだろうか。

 英語の様には聞こえないが、俺はそんなに知識がある訳じゃ無いので英語の可能性もあるが、少なくとも何を言っているのか分からないことは分かる!

 俺が困っていると、その女の人はいきなりローブの中から杖のようなものを取り出しこちらに向けた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 敵意は無い!」

「Э ль. я ил пдля гз в люб лч. Пзль  пиь бя здь!」

「クソっ!」


 俺が誠心誠意敵意が無いことを示したにもかかわらず、この女の人は杖を下げず、何やら呪文のようなものを唱えだした。

 絶対これはヤバいやつだ!

 俺は昔見たアニメの魔法の詠唱を思い出しながらそう思った。この感じだと絶対に詠唱が終わる頃には魔法が飛んでくる!

 俺は嫌な予感後ろに飛び跳ねてその女の人から距離をとる。


キィン!


 今まで聞いた事のないような甲高い音が鳴り、女の人人の周りが光に包まれた。

 
 その光が無くなると、女の人の周りにいたゴブリンは全員消え去り、残ったのはくり抜かれたように丸いクレーターと女の人だけだった。

 咄嗟に避けておいて良かった。

 俺の額に一筋の汗がたれる。


「ゆうちゃん! 逃げるよ! こいつは無理だ! 先に階段を降りていてくれ!」

「わ、分かった!」


 ゆうちゃんは階段と俺を交互に見てアワアワしている。

 きっと俺を置いてっていいか分からず、迷っているのだろう。

 嬉しいが、今はそれどころじゃない。


 俺は踵を返して走り出す。

 あんなのと戦って勝てるわけないからな!

 消し炭にされちまうよ!


 俺はアワアワしているゆうちゃんを抱えて全速力で階段を下っていく。
 

「ゆうちゃん! ちょっとだけ耐えてくれ!」

「うんっ、分かっ、ったっよーっ!」


 くっ、辛そうだ。なんか運んでる人に振動などが来ないスキルとか無いのか!?

 俺はそんな事を考えながらも全速力で走った。

 俺は別に消し炭になっても良いとは思うのだが、ゆうちゃんに被害が及ぶのは看過できない。

 そして、自意識過剰かもしれないが、俺が死んでしまったらゆうちゃんが悲しむから俺も死ねない!

 だからこそ俺は無理して戦うことを選ばず、逃げたのだ。

 走り続け10分がたった頃。もう大丈夫だろうと思いゆうちゃんを下ろして少し休む事にした。


「ふえぇ。世界が傾いてみえるぅ。」


 俺から降りたゆうちゃんはフラフラとしながら地面に座った。


「ごめんね。大丈夫だった?」

「うん。けどちょっときもちわるいぃ。」


 うーん。やはり運んでる人に振動などが来ないスキルを取らなくてはな。

 それは一旦置いておくとして、今はあの女の人の事だ。

 あの人はやばい。

 いや、人なのかすらも怪しいが、あれがモンスターだとしても人だとしても、あのレベルの強さの敵が地上に出てきたらかなり不味い事態になる。

 
「コナーに報告しなくては。」

「ふえぇ、うわき?」


 ゆうちゃんがフラフラしながらも俺にそう言ってくるので、しっかり否定しつつ、俺はこれからの事を考えるのであった。


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