66 / 214
67話 盾
しおりを挟む「何だったのあれ?」
俺達はとりあえずあの部屋から少し離れた場所に避難していた。
ゴブリンの数もそうだし、あの女の人がこっちに来てしまっても困る。
あの女の人単体と戦うのならまだ何とかなるが、ゴブリンも合わさるとなると話は別だ。
ゴブリン一体一体は弱いとはいえあの数だ。
対処しているうちにあの女の人に攻撃されて終わりだろう。
「あの感じは完全にあの女の人が居た部屋と感じが同じだ。下の階で出た時もあんな感じだった。」
「そうだったのね…………。」
とはいえあそこを通らなくては上に行くことは出来ない。
「とりあえずゴブリンの対処をしようか。」
「そうね。」
俺達が逃げる時にかなりの数のゴブリンも着いてきた。
そいつらを放置する訳にもいかないので、俺達は来た道を引き返した。
少し経つと階段付近にかなりの数のゴブリンが群がっていた。
「ここは私がやるわ。」
「いや、ダメだ。ここで陽夏が体力を消耗してしまってはかなり危険だ。陽夏はあの女の人との戦いに備えて体力を温存していてくれ。」
俺はあの女の人に決定打になるような超強力な技を使う事は出来ないため、実質陽夏がダメになってしまってた勝ち目が無くなる。
だから陽夏を今戦わせる訳にはいかないのだ。
俺はゴブリンの方へと行き、刀に魔力を込める。
陽夏には遠く及ばないが、俺もまぁまぁの強さの技を使えるのだ。
魔力を放出しゴブリン達を切る。
爆音が鳴り響き、その一撃でほとんどのゴブリンが息絶えた。
俺は残ったゴブリンを処理していく。
「晴輝はほんとなんでも出来るのね。」
陽夏が少し呆れたような声でそういいこっちへ来た。
「いやぁ、まだまだだよ。今のだって本気の一撃だし、陽夏と比べたら全然だよ。」
「けど、それも箱をいっぱい開けたらもっと強くなるんでしょ?」
まぁ、確かに筋力系のスキルや剣術系のスキルのレベルを上げていけばもっともっと威力をあげることが出来る。
だからといって俺は陽夏に勝てるビジョンが見えない。
「まぁ、確かに強くはなれるがそれは陽夏も同じだろ?」
「まぁそうね、この前もよく分からないけどものすごくパワーアップしたしね。」
今俺と陽夏が戦ったらまず間違いなく陽夏が勝つだろう。
仲間が居たりしたら話は別かもしれない。
なぜなら俺の力は今の所治すという側面に偏っている。
味方が居たら永遠に治し続けて不死の軍勢みたいのを作れるかもしれない。
しかし、それがいなければ確実に個として強いのは陽夏だ。
まぁ、そんな陽夏がこっちの味方というのは非常に心強い事なんだけどな。
「とりあえずどうする? あの女の人に挑むか?」
「そうね、いつまでもここにいたところで何も始まらないしとりあえず行く?」
「そうするか。」
陽夏はかなりガンガン行くタイプなのでこういう時の話がスムーズでいいな。
俺が2人いたらどっちも慎重になっていつまで経っても行かないだろうからな。
陽夏の勢いに後押しされた俺達はまた階段を上がった。
さっき倒したゴブリンがほとんどだったのか、部屋にはほとんどゴブリンが残っていなかった。
しかし、気になるのはあの女の人だ。
「…………盾?」
あの女の人は前回のように杖を持った姿ではなく、非常に大きな盾を持っていた。
さっきはゴブリンに隠れて見えなかったが、今回は杖ではなく盾を持っているようだ。
「とりあえず俺は様子を見てみるから陽夏はいつでも攻撃出来るように準備していてくれ!」
「わかった!」
俺は陽夏にそう伝え盾の女の人へと走り出した。
まずは俺から攻撃してみるのが1番安全だ。
なんせ俺の能力は治すことに偏っている。
首を切られても死ななかったぐらいだ。
しかも、その時よりも能力は上がっている。
俺は躊躇することなくその盾に切りかかった。
カキーン
金属音が鳴り響く。
く、硬い!
盾を見ても傷1つ着いていない。
やはりそんなにやわなものじゃないか。
正面突破は無理だと思い、俺は回り込んで攻撃しようとするが、尽く盾をこちらに向けられてしまう。
せめて陽夏に背を向ける形にしようとするが、そうなった瞬間素早い動きで体制を変えて何とか陽夏に背を向けないようにしている。
攻めにくいな…………。
だが、杖の女の人のように火の玉をバンバン打ってこないだけまだマシだな。
この盾の女の人は防ぐだけで攻撃はしてこない。
これならいずれ倒せるだろう。
…………こんな事を思ったのが間違いだったのだろうか。
とりあえずもう1回斬りかかろうとして盾の前に行った瞬間、盾が赤く光った。
まずいと思い避けようとするが、そんなの間に合うはずもなく、直後、爆音とともに俺の体は吹き飛ばされた。
身体中が焼ける痛みと陽夏の叫び声が聞こえる。
目もやられたのか体がどうなっているのかは見えない。
しかし、少なくとも綺麗な状態では無いだろう。
逆に見れなくなって良かったのかもしれないな。
俺はすぐさま体に治れと念じた。
身体中の痛みが一瞬にて引いていき、痛みも無くなった。
限界を突破した俺の能力は魔力を込めたりすることも無く、念ずるだけで身体中が治るレベルまで強化されていた。
しかし、そんな能力があってもあの盾の女の人を倒せなくては意味が無い。
さて、どうしたものか…………。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる