謎の箱を拾ったら人生が変わった件〜ダンジョンが現れた世界で謎の箱の力を使って最強目指します〜

黒飛清兎

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84話 お酒?

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「大丈夫か!?」


 俺は咄嗟に陽夏を治そうとするが、特におかしいところは無い。

 陽夏はやや呆然としつつも、嬉々とした声で返事をする。


「大丈夫…………というか、これ凄いわよ!」

「え?」


 陽夏は目を輝かせて俺に迫る。

 様子を見る限り、何か悪い事が起こったわけでは無さそうだ。

 というか、どちらかと言うといい事が起こったようなテンションだ。


「えっとね、なんか、この石を使ったら剣術のスキルのレベルが上がったの!」

「えっ、嘘だろ!?」


 俺はスキルを手に入れられる石があるということにも驚いたが、一番驚いたのは陽夏のスキルがまだだということだ。

 陽夏からしたらそれは吃驚仰天な事なんだろうが、俺はそこにはそこまで驚かなかった。

 そもそもスキルが手に入るものなら俺がいつも使っているあの謎の箱があるし、特におかしな事ではないと思う。

 しかし、陽夏のスキルがまだまでしかいっていないというのはいくら聞いても信じられない。

 だってあの陽夏だぞ?

 あのはちゃめちゃに強い陽夏だぞ?

 その陽夏が俺よりも低いレベルのスキルしか持っていないというのはとても信じられなかった。

 まぁ、他のスキルや刀の力がいい具合に噛み合わさってあの力を出しているのだろうが、それでもその真実に慄いてしまう。


「ち、ちなみに今剣術のレベルはどのくらいなんだ?」

「えー? 晴輝がそれ言っちゃうー? あの箱の事を頑なに隠してた晴輝がー?」

「あっ、いやっ。」

「まぁ、良いわよ。晴輝は信頼出来るしそのくらい全然教えるわよ。今のレベルは6ね。」

「ろ、ろく…………。」


 えっと、俺のレベルは、鬼剣術とのレベルも合わせて…………13か…………。

 うん、もう考えないようにしよう。


「あ、けど俺は特にレベルは上がったりして無いぞ?」


 良く考えれば陽夏は持っただけで使えたのに俺は持っただけでは何も起こらなかった。


「とりあえずまた見つければいいじゃない。」

「まぁ、そうだな。」

「そうと決まれば探索よ!」


 俺達は戦力増加の為にもあの石を探すことにした。

 今までは階段を探すことを中心に動いていたが、今度はあのでっぱりを探すことを中心に動く事にした。

 しかし、物欲センサーが働いているのか、まずそのでっぱりがいつまで経っても見当たらない。

 ゴブリンを相手にするのに時間がかかっているというのもある。

 特に刀のゴブリンと共に偶然他のゴブリンが一緒に現れでもした時は最悪だ。

 それだけでかなりの時間が消費される。

 数時間探しながら進み続け登った階段は数階程で、取れたあの石は4個だけだった。

 一応検証用に2個鞄の中に入れてある。

 剣術のレベルが上がった陽夏は今まで以上の戦闘力を発揮し、一体一ならあの刀のゴブリンにも一方的な戦いを出来るほどだった。


「あぁ、もう! ここにも無い!」


 そこから出てきたのは謎の薬とかが殆どであの石は全然出てこない。

 そりゃあのレベルの効果が出るものがポンポン出るのもおかしいが、それにしてももう少し出て欲しいものだ。


「うーん、もう気晴らしにこの薬でも飲んでみるか?」


 もう俺も中々にイライラしてきた。

 こうなったらもう薬を飲んでしまいたくなる。

 ただでさえカバンの中には水や食料やらなんやらで重たいのに、これ以上増えるのも重いし嫌だ。

 俺はいっその事と思いその手に入れた薬を飲み干す。


「痛たたたっ。」


 喉が焼けるような痛み。

 ダメだこれ、絶対まともなものじゃない。

 というかそういうものばっかりなんだとしたら鞄の中に入れておく必要も無い。

 俺は少しづつ舌に取ったりして確かめていく。

 効果の分からないものもいっぱいあったが、そういうものはとりあえず鞄の中に入れておき、明らかに毒や酸の様なものはとりあえず置いておいた。

 割ったりしなかったのは今度戻ってきた時に何か使うかもしれないからだ。


「晴輝ー、もう終わった?」

「あぁ、終わったぞ。あ、そうだこれ。」


 俺は舐めてみたものの中で非常に美味しかったものを陽夏に渡す。

 かなり甘みが強く、少し飲んでみたりしたが特に何ともなかったため、多分ジュースか何かだろう。


「何これ?」

「多分ジュースだと思う。凄く美味しかったから陽夏にもと思ってな。」

「へぇー、じゃあちょっと飲んでみようかな!」


 陽夏はそれを1口飲んでみる。


「あっ、何これ美味しい!」


 陽夏はぐびぐびと飲み始めた。

 良かった、やはり甘い物は脳内で幸せ物質を作ったりするらしいし、たまには飲みたくもなるだろう。


「はぁ、久しぶりの甘い物は良いわえ。」

「わえ?」

「んー? そうそう、あまひものー。」


 あれ、どうしたのだろうか。

 陽夏の顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「ねぇーねぇー、今のもっと無いのぉ? のみたーい。」

「あーっと。」


 えっと、これは酔ってるのか?

 明らかに呂律が回ってないし、顔も赤い。

 いや、けど俺はなんともなかったし…………あっ、そうか、スキルか。

 俺はスキルの量が多すぎてよくスキルの効果を忘れてしまう。

 今回は多分壮健が俺が酔っ払うのを防いでくれたのだろう。

 あー、まずい。この状態でここに居るのはかなり危ない。

 陽夏もフラフラだし、この状態では戦えないだろう。

 どうにかしなくては…………と考えていると、最悪の事態が発生した。

 ゴブリンだ。しかも刀のゴブリン。

 まずい、陽夏が危ない。

 俺は陽夏を守ろうと陽夏の前に出るが、陽夏は俺を押し出して前に出る。


「あっ、おい!」


 俺は引き留めようとするが、静止も聞かずに陽夏はものすごい速度でゴブリンに迫っていく。


 スパーン


 綺麗な音を立ててゴブリンの首が落ちる。


「えっ…………えっ?」


 まってくれ、今陽夏は酔っ払ってるんだよな? 何で通常時よりも強いんだ?

 俺が混乱していると陽夏が俺の方に向かって飛び込んでくる。


「ちょ、何やって…………。」

「くぅ、くぅ。」


 陽夏は俺の胸の中で眠ってしまった。

 あー、もうどうしよう。
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