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119話 部屋着

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 俺が箱をぶち壊そうとしていると、部屋にコナーが入って来た。


「…………何やってるんだい。」

「…………気にしないでくれ。」


 なにか言ってくる人が居ないうちはそこまで何も考えていなかったが、コナーにそう言われると何だか少し恥ずかしく思えてきた。


「まぁ、忘れるけど、程々にね?」

「あぁ。」


 俺も大人なんだ。

 もう少し落ち着いていかなくてはな。


「コナーの用事はもう終わったのか?」


 俺の集中している時の時間感覚は狂っているのでどのくらい経ったのか分からないが、少なくともかなりの時間がかかっているはずだ。


「あぁ、うん。ちょっと色々あって結構時間かかっちゃったけどもう終わったよ。それで陽夏ちゃんはどこに行ったんだい? 君達一緒に居たと思うけど…………。」

「あぁ、何か刀を試すとか言ってどっか行ったぞ。」

「そうなのかい? けどもう夜も明けた所だし、もう帰ってきてると思うんだけど…………。まさかまだ外で刀を振ってたりしないよね?」

「…………陽夏なら有り得るな。」


 陽夏は疲れていなければ寝ないで色々やろうとするほど何かをやろうとしてしまう人間だ。

 刀の能力を試す事が楽しくなって未だに振り続けてる可能性だってある。


「…………探しに行くか。」

「…………そうだね、流石にその状態でダンジョンに連れて行くわけにもいかないからね。休んでなかったら無理やり寝かしつけよう。」


 陽夏がそれのせいで戦いに支障が出たりでもしたら困るからな。

 仲間の体調管理もしっかりしなくてはいけない。


「いや、まて、そう言えばお前も寝てないんじゃないのか?」

「あぁ、僕はしっかり寝てるよ。この薬を飲んだからね。」


 そう言ってコナーはポケットから一瓶の薬を取り出した。


「てってれー、睡眠薬ー。この薬はちょっと寝るだけでも何時間も寝たぐらいの効果が得られる位に睡眠の質をあげてくれるものなんだ。まぁ、使いすぎたら不眠症とかになっちゃうみたいだから多用は出来ないんだけどね。」

「そうか。便利だな、その薬。というかダンジョン産の薬便利すぎないか? ダンジョンが現れる前だったら大ヒットだっただろうな…………。」

「まぁ、それを取るためのダンジョンが産まれたせいでこんな世の中になったんだけどね。」

「あぁ、皮肉なもんだな。」

「とりあえず陽夏ちゃんを探しに行こうか。」

「分かった。」


 俺達は外に出ていき陽夏を探す。

 しかし、どこを探しても陽夏は出てこない。


「あれ、もしかしたら普通に自分の部屋で眠っているのかも。」

「確かにな。別にゆうちゃんの部屋で寝る必要も無いもんな。」


 何故か失念していたが、よく良く考えれば陽夏には陽夏の部屋があるんだし、そこで寝るのが当たり前だよな。


「あれ、何で僕その発想が出てこなかったんだろ。陽夏ちゃんは外で練習をしてるって思い込んでたけど、普通にそんな訳ないよね。」

「まぁ、そうだな。」


 なんで俺達がそんな発送に至らなかったかは分からないが、気にしないで俺達は陽夏の部屋へ向かった。

 トントントンと陽夏の部屋の扉を叩く。

 返事は無い。

 もう1回大きめに扉を叩くと奥の方から小さな声ではーいと言う声が聞こえた。

 やはり陽夏はここで寝ていたようだ。

 奥からドタバタとこちらへ向かってくる音が聞こえる


「はーい、誰…………って晴輝!?」

「ちょ、陽夏、お前服薄すぎだろ!」


 陽夏は驚いていたが、本当に驚いているのはこっちだ。

 陽夏は名前は分からないが兎に角薄いシャツの様なものを1枚だけ着た状態で出てきた。


「んー? そうかな?」

「そうだよ、てかそれズボンとか履いてんのか!?」

「え?」


 そう言って陽夏は服の裾を捲った。

 俺は咄嗟に目を手で覆い隠す。


「おいおいおい! やめろ!」

「いやいや、普通にズボン履いてるよ? ほら、短パン履いてるでしょ?」


 陽夏がそういうので俺はチラッと覗く。

 そこには一応ズボンがあった。

 しかし異様に短いズボンだ。


「それ履いてるって言わないから! 早く履き替えてきて!」

「えー? 分かったわよ。」


 陽夏は不服そうに部屋に戻っていった。

 え? あれくらいなのが普通なのか?

 確かに体は隠せてはいたが、それにしても少し露出が多いんじゃないのか?

 あぁ言うのは俺みたいなおっさんに見せるものじゃ無いだろう。


「晴輝君、ちょっと厳しすぎないかい? 部屋着だったらあのくらい普通だよ。」

「そうなのか? 俺に普通を説いても分からないのは知ってるだろ? そんな俺からしたらあれはもはや下着で外に出ているようにしかみえないぞ?」

「あはは、いつの時代の頑固親父? あのくらいでグチグチ言われてたら陽夏ちゃんが可哀想だよ。」

「…………いやでもあれはダメだろ…………。」


 あんな部屋着着ているのなんてアニメでしか見た事がな…………いや、アニメ以外で女の子の部屋着見た事ないわ。

 そうか、そういう事か。

 俺はただ女の子に慣れていないだけなのか。

 そうかそうか…………。


「はぁ、コナー、俺はちょっとゆうちゃんの所に行ってくるから陽夏頼んだ。」

「えっ、ちょっと!」


 制止するコナーの声は無視して俺はゆうちゃんの元へ駆けた。
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