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126話 襲撃1
しおりを挟む俺はゆうちゃんの体に抱きつく。
ほのかに暖かく、その温かさに俺の心は温められた。
まだ他にも色々やりたいことはある。
だが、それを未だに寝ているゆうちゃんにするのは何だか申し訳ない。
ゆうちゃんが起きてからのお楽しみという事にしておこうと思う。
「あれ、もういいのかい?」
「あぁ、これ以上触れ合っていれば本当にそれ以外の事が出来なくなってしまいそうだからな。これから襲撃もあるみたいだし、これ以上時間もかけられないだろ?」
「そっか、僕達の為になんだね、ありがとう。代わりと言っては何だけど、僕も絶対にゆうちゃんを生き返らせる手助けはするからね!」
コナーは嬉しそうにそう言った。
コナーはもう家族みたいなもんだし、別に代わりに何かをやるとかは良いんだけどな。
まぁ、ここはお互い助け合いだ。
お互いの事を気遣って行動するということが大切なのだろう。
「よし、もうそろそろ行くか、時間も無いだろうしな。」
「うん、僕の未来視によればもう危機はかなり近ずいて来ているはずだから、もうそろそろな筈だよ。」
危機はもうすぐそこまで来てるってことか。
俺の力がどれだけその危機とやらに対抗出来るかは分からないが、精一杯の事はしよう。
俺はまだ少し怠さが残る体に鞭を打ち立ち上がらせる。
俺の回復能力は少し失われはしたものの、治す力もあるので実質そこまで変わっていない筈だ。
体はいきなり力を失った余波で少し怠いが、この程度ならすぐ良くなるはずだ。
「じゃあ行こうか。」
俺はコナーに連れられ、外へ出た。
「ちょっとまっててね。」
そう言い、コナーは深呼吸をした。
やや経ち、コナーの目が大きく開かれ、赤く光出した。
能力を使っているようだ。
「…………うわぁ、やばいかも。」
コナーは顔を青くしてそう言う。
「どうした?」
「えっと、物凄い数の人がこっちに来てるとしか分からないけど、全員ある程度の戦闘が出来そうな人達ばかりだね…………。それに、動きが明らかにおかしい。少なくとも普通の集団じゃなさそうだ。」
「物凄い数か…………それってあのダンジョンで出たモンスターの数とかと比べたらどのくらいの数なんだ?」
「こっちの方が多いかな。はは、武装は整ってないけど、まるで軍隊みたいだ。あと数十分もすればここまで来てしまうと思う。陽夏ちゃんにお願いしてこの事は佐々木君に伝えてあるはずだから、もう避難の準備は出来てるはずだ。」
「全員あの防衛者組合の場所に集めるのか?」
「そうだね、まぁ、万が一の為に部屋とかには入らないで居てもらって、何時でも避難出来るように物資とかも集めてもらってるはずだ。佐々木君の事だからその程度まではしてくれてる筈だよ。もうそろそろ集まってくると思うよ。」
確かに俺達が外に出ている間に俺達の横を荷物を持った人が通り過ぎたりしていた。
これは佐々木が手配してくれていたことだったのだろう。
「あとは戦力を集めるだけだね、佐々木君が集めるだけは集めてるはずだから、あとは僕が指揮を受け継げばいいかな。それでなんだけど、晴輝君には遊撃手として戦って欲しいんだ。」
「遊撃手?」
「そう、君は1人で戦況を覆せる程の力を持っている。けど、君が出てしまえば君の能力を活かしきれない事になってしまうんだ。」
「あー、俺は単身で行った方がより多くの攻撃を引き付けられるとかそう言う事か?」
「ご名答。まぁ、相手に戦う意思が無い可能性もあるからこの作戦は使わなくなるかもしれないけどね。」
そんな事が起こるならそれが一番いいが、まぁ、そんな事起こる可能性は少ないんだろうな。
現にコナーは戦う気満々だからな。
コナーはそれからも戦うための作戦を俺に話してくる。
「あの集団は一種の洗脳状態にあったり、無理やり従わせられてる場合もあるかもしれないから、そういう時には君の耐久力を活かしてその人達を傷付けないように敵の司令部を潰したりして欲しいんだよね。まぁ、あの集団の人達が自らの意思でやってるんだったら…………全員生かしてはおけないけどね!」
「わ、分かった、分かったから一旦落ち着け、作戦は理解した。とりあえずその集めてくれている戦力の所に行こう、その人達にも作戦を説明しなきゃだろ?」
「あ、そうだね、早く行かなくちゃ。」
そのままコナーと俺は佐々木が防衛者達を集めてくれている場所へと向かった。
良かった、一瞬また闇コナーが出ていた。
闇コナーは心強いと言えば心強いが、如何せん怖すぎる。
コナーにはいつもニコニコと笑っていて欲しいからな。
佐々木が集めた人々の所へ行くと、コナーの周りに人々が集まってきた。
みんな口ぐちに何故集められたのか質問していた。
「みんな静かに! この前のダンジョンで僕の力が強くなった話はしたと思うんだけど、その強くなった力で僕は未来を見たんだ。そしたらこれからこのホテル街が襲撃を受けることを知ったんだよ。現に今その集団はすぐそこまで来てるあと数十分もあればここに着いてしまうだろう。僕達はそれを止めなければならない! みんな、力を貸してくれ!」
コナーはそう言い切った。
その言葉に周囲は一瞬どよめくが、すぐさまその声は叫び声や雄叫びに変わった。
「よし! みんな、この街をまもるぞ!」
『おー!!!』
みんなの心が1つにまとまった音がした。
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