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125話 生き返る
しおりを挟む陽夏は新しい武器を使うと初めのうちは大体失敗するが、なんかいか使ううちにどんどん上達していき、その頃にはもうある程度使えるようになっていた。
それまでの間に俺が何回も犠牲になっているのはまぁ許すことにしよう。
そんな事もあったが、俺達は変わらぬ速度で地上まで戻ってきた。
いざ帰ろうとすると、何故かコナーが俺達のことを引き止めた。
コナーは青い顔をしながら言った。
「…………ちょっと急いで帰った方がいいかもしれない。」
「…………どうした?」
「今ちょっと未来を見てみたんだけど、どうやらホテル街に誰かが襲撃しに来るらしい。」
「襲撃!?」
「ま、待ってくれ、それって人間が来るってことか!?」
モンスターが大群で襲ってきた事は何度かある。
だからそれには慣れているはずだ。
だが、人間となると話は別だろう。
人間と戦い慣れている人なんかこの日本にはそうそういない。
頼みの綱の警察だってもう壊滅状態だ。
つまり人間が襲撃しに来てしまってはホテル街も壊滅状態になってしまう。
「それっていつになったら来るんだ!?」
「まぁ、落ち着いてよ、襲撃されるとは言っても僕達が帰るくらいの時間はあるみたいだから大丈夫だよ。」
「よ、良かった、けど早く帰っておいた方がいいわよね?」
「そうだね。まだ時間はあるけど何があるかは分からないしね。」
「そうか、じゃあ急いで帰るか。」
襲撃に備えるために俺達は大急ぎでホテル街まで戻った。
ホテル街は今はまだ襲撃を受けていないようで、いつも通りの日常を取り戻したいた。
というかモンスターが居なくなった分活気に満ち溢れているようだった。
「うん、みんな頑張って復興してるみたいだね、こんな時に襲撃なんて…………。」
「絶対に阻止しなきゃ駄目ね!」
今から復興するという時にまたこの場所をボロボロにされては折角モンスターが出なくなったって言うのに意味が無い。
みんなの為にも襲撃などさせてはいけない。
「それで、後どのくらいかかりそうなんだ?」
「うーん、まだ大丈夫だとは思うよ。ゆうちゃんを生き返らせるくらいの時間はあると思う!」
「そうか、じゃあ俺はゆうちゃんを生き返らせて来る、それが終わったら俺もそっちに行く!」
「あー、一応僕も着いて行くよ。」
コナーがそう言うので、俺とコナーは2人で部屋に入っていく。
ゆうちゃんを見ると未だに同じ容貌をしていた。
このまま生き返らせることが出来る。
そう思うと本当に嬉しさが溢れる。
「それで、ここからどうするんだい?」
「あぁ、俺の能力の一部をゆうちゃんにあげるんだ。限界突破した能力は他人に受け渡す事も出来るみたいなんだ。」
「そんな事が出来るのかい!?」
「あぁ、だが、そのまま渡すと脳が情報過多でおかしくなってしまうらしい。けど、俺の渡そうとしている能力は自分自身を復元していく能力だから、これを受け渡せばゆうちゃんの脳がおかしくなる事は無いんだ。」
「そうなんだ。じゃあ、それでゆうちゃんは元通りになるってことかい?」
「いや、ここからまた俺がゆうちゃんを治さなくては生き返る事は出来ないみたいだ。それで肉体だけは生き返る。」
「肉体だけ?」
「あぁ、ここから動けるくらいに回復させるにはまだほかの事をしなくては行けないらしい。」
それをまだ探さなければいけないのだが、それを待つよりもゆうちゃんの肉体を生き返らせたい。
だからこそ今こうしてやろうとしているのだ。
「あ、まだ、完全に生き返るという訳じゃないんだね。けどそれでも1歩前進だね!」
「あぁ、そうだな。じゃあやるぞ。」
俺がゆうちゃんに近ずいていくと、コナーは少し離れた位置でそれを見つめていた。
気を使ってくれたのだろう。
俺はゆうちゃんに近ずいていき、手を差し伸べる。
そして俺の力の源をゆうちゃんに移すように移動させる。
これが体内魔力という物なのだろう。
限界を解除したスキルを手に入れた時から少しづつ感じられるようになっていたものだ。
それをゆうちゃんに移す。
俺の体が物凄い脱力感を覚えさせる。
「だっ、大丈夫かい!?」
こなーが俺の事を抑えてくれた。
あぁ、俺は倒れかけていたらしい。
俺はあの自分を復元する能力にかなり頼り切っていたらしい。
だが、俺は今ここで倒れる訳には行かない。
コナーの助けを借りながらも俺はまたしっかりと立ち上がる。
俺はゆうちゃんの体を治していく。
今はまだゆうちゃんの体の中で俺の体の力が馴染んでいないため、治す事は出来ないが、それでもダメージはおっていっている。
俺はそれを直して言った。
ドクン。
ゆうちゃんの心臓が脈打つ。
「生き返った?」
俺はフラフラとゆうちゃんの胸に顔を押し付ける。
すると、微かながらも心臓が動いている。
「成功だ!」
俺の心が安堵と歓喜の色に染まる。
「ふふっ、良かったね。」
「あぁ、やっとだ!」
何年も1人だったはずなのに、1人には慣れていたはずなのに俺に空いたゆうちゃんという穴はとてもおおきおものとなっていた。
今、その穴が少しだけ塞がったような気がした。
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