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124話 急いで帰還
しおりを挟むダンジョンを駆け下りながら俺は陽夏の話を聞く。
ゆうちゃんの事も優先しなくてはいけないが、それと同時にゆうちゃんを真に生き返らせる方法を見つけなければいけないからな。
どうしてそこまで焦っているかと言うと、どうやら肉体の蘇生と言うのはそこまで難しい事では無いみたいなんだ。
これは俺があの情報が流れた時に知った事なのだが、肉体的に生き返らせる方法は色々あるらしい。
例えばその人をゾンビなどにしてしまうという方法だ。
それだったらその人の体は治って動く事も出来る様になるだろう。
しかし、それだけでは生き返らせたとは言えないと俺は思った。
確かに肉体は生き返っているのだが、それだともはや人間じゃない。
俺はゆうちゃんを元の状態に戻したいんだ。
そこで今から俺がやろうとしているのがその方法だ。
俺の能力を組み合わせることで、複び治すという事が出来るようになるらしい。
ただ治すのではなくもう治せなくなったものですら治せるようになる力があるらしい。
その方法が肉体的を治すだけなら一番穏便で綺麗に治るやり方らしい。
だが、やはりそれだけでは足りない。
脳や体がすっかり治っていたとしてもその状態では体も動かなければ脳も動かないらしい。
脳死状態とはまた違うのだが、そんなニュアンスの状態になってしまうらしい。
そこから普通の状態にする方法はまだ分かっていない。
だからこそ今は陽夏などから情報を集めなければいけないのだ。
「それで、また何か記憶が出てきたりはしたのか?」
「うん、とは言っても今回はそこまで進展は無かったわ。ただ、あのモルフィスっていう人が晴輝なんだけど晴輝じゃないっていう感覚が強くなったわ。」
「どういう事だ?」
「私もよくわかってないんだけど、今回の記憶は何かそのモルフィスと勉強をしたり一緒に遊んだ記憶だったの。話し方とか仕草とかは全然晴輝とは違ったんだけど、けどやっぱりあれは晴輝だって思うの。けどやっぱりまだこの記憶が何なのかはよく分かってないわ。」
「そうか…………。」
まぁ、ダンジョンは世界中に無数にある訳だし、この1回で記憶が完全に取り戻せるなど思ってはいない。
が、やはりその記憶と俺は少なからず関わっているのだろう。
この事については後々調べていこう。
ダンジョンによる被害者をこれ以上出さない事にも繋がるだろうしな。
「あ、そうだ、いつからか分からないけど、また使える武器のバリュエーションが増えたのよ! ほらみてね。」
そういうと陽夏は刀を鉄球の様なものへと変えた。
オークのダンジョンで一番最初にあった女の人と同じ様な物だった。
陽夏は他にもこのダンジョンで出会った女の人の武器に刀を変えていく。
「多分あの吸収した女の人と同じ武器を使えるって事だと思うわ。これなら戦闘の幅が広がって良いわね。」
「あぁ、そうだな。」
やはり武器の幅が広がると戦術の幅も広がる。
うちには遠距離攻撃を出来る人が居ないのでその役割になってもらったり、耐久力の高いモンスターとかと戦う時に刀よりも攻撃力の高い武器に変えたりするということも出来るだろう。
「…………けど、結構メインウェポンは刀なんだろ?」
「うん、はっきりいって刀以外はまだ上手く使えないからね。練習はするからいずれ使えるようになるわよ。」
「そうか、頑張ってくれ!」
刀をあれだけ使えるというのにもかかわらず他の武器の練習もするなんて本当に強くなることに貪欲なんだな。
陽夏はあのホテル街を守る為に戦闘力が必要だからな。
その年齢でそこまでできるのは素直に尊敬する。
「あ、みんな、オークがでてきたよ。」
コナーが遥遠くを指さしてそう言う。
よーく見たら親指サイズにしか見えないオークがそこに集まっていた。
コナーは階段を探すだけでなく索敵もしてくれてるので、非常に安全に進めている。
今回も早めにコナーが知らせてくれていたためすぐさま行動ができる。
「あっ、じゃあ私この鉄球使ってみるわ!」
そう言って陽夏は鉄球をグルングルンと振り回す。
「ちょ、あぶなっ! わかったわかった。じゃ、俺が前の方で敵を押さえつけておくから後ろから好きに練習してくれ!」
「わかった、ありがとう!」
作戦が決まり、俺達はオークへと近ずいていった。
オークは俺達に気づきしだし中々のスピードでこちらに迫ってくる。
ウルフ未満ゴブリン以上といったスピードだ。
俺はその前列にいたオークに斬りかかりそしてヘイトをこっちに向け確実に後ろに攻撃が及ばないようにする。
「晴輝ありがとう! じゃあ一発大っきいの行くわよ!」
ブオンと風を切る音が聞こえる。
「あっ、やばっ!」
その声が聞こえた瞬間俺は悪い予感を感じた。
直後背面に非常に鈍く重い衝撃をうける。
骨は完全に折れまくっているだろう。
そんな俺は更なる地獄を味わう事になら。
俺の背中を押し出した鉄球の威力は落ちること無く、俺の体をオークに近ずけていった。
そしてその後俺の体はオークにベッタリとくっつくのであった。
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