謎の箱を拾ったら人生が変わった件〜ダンジョンが現れた世界で謎の箱の力を使って最強目指します〜

黒飛清兎

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158話 ゾンビ男再来2

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 残った15体の攻撃は苛烈を極めた。

 俺の体は容易に切り刻まれていくが、その瞬間に直ぐに治すことが出来るため、その程度の攻撃という訳だ。

 それなら俺は負けることは無い。

 俺はカウンター戦法でゾンビを少しづつ攻撃していき、その数を少しづつ減らしていく。

 一体、二体とゾンビが倒れ伏す度に他のゾンビの攻撃は激しくなる。

 それでもその攻撃は俺の体を一撃で消し炭にする程の威力は無いため、俺は死なない。

 ここまで来るとどっちがゾンビが分からないと思ってしまうが、それは気にしないことにしよう。


「ぐぅっ!? わ、私ののゾンビ達がこんなにも!? いや、まだです、今いるゾンビ達は先鋭達、つまり今まで攻撃できていなかったゾンビすらも攻撃できている事になる…………ならば勝てる!」

「…………。」


 ゾンビ男はゾンビ達の働きに一抹の不安を覚えつつも、まだギリギリ上から目線な態度は崩していなかった。

 そんなゾンビ男の事を金髪男は無表情で見詰めていた。

 何を考えているのか読めなく、少し不安はあるが、まぁ、大丈夫だろう。

 それはまだゾンビを攻撃し続ける。

 黒鉄は有り得ない硬さと鋭さを誇り、余程の防御力がない限りどんなものでも容易に切り裂くはずなのに、今残っている五体のゾンビはその刃を一切通さない。

 ただただ金属音が鳴り響き、俺は左右に回り込まれたゾンビに攻撃されているだけだった。

 俺は何をやっているんだ!?

 こんな事していてもジリ貧だ、ここまで減ったのだったら本体を叩きに行った方が良い。

 何の俺はそうしようとしない。

 ただただゾンビに攻撃してゾンビ達を強くしているだけだ。

 本当にこいつは勝つ気があるのか…………。

 そう思ったが、ゾンビの数はじわりじわりと減っていく。

 周りの地形や敵の攻撃などを上手く使ってゾンビの数を減らしている。

 どうやら勝つ気はあるみたいだ。

 だが、どうしてこんな事をするかが分からない。

 こんな事などせずにさっさとあのゾンビ男を倒してしまえばいいものの、まるでゾンビを一体に纏めてから一気に倒してしまおうとしているような…………。

 しかし、それもできてしまいそうなほどゾンビは数を減らしていく。

 その度にゾンビ男がどんどんと青い顔になっていく様は見ものだったが、それでもそれが見たいがためにこれをやっているとは思えなかった。

 俺の中のナニカとはいえ俺ではあるのだ。

 その思考は何となくだが分かる。

 それはただ愉悦を求めてその行動を取っているようには見えなかったのだ。

 その時、金髪男が何かに気がついたようで、ゾンビ男に話しかける。


「お、おい! そのゾンビを退けろ! 早くしなきゃ間に合わない!」

「え、な、何でですか!? このままだと最強のゾンビが産まれてあの男を殺せるというのに!」

「いいから早く下げろ!」


 ゾンビ男はその命令に怪訝そうな顔をする。

 そして、少し思考したあと、ゾンビにひとつの司令を下した。


「…………さ、さぁ、全員喰らいあいなさい! 最強のゾンビを産むのです!」


 ゾンビ男は金髪男の命令は聞か無いことにしたようだ。

 その言葉に金髪男は苦い顔をする。

 これは僥倖だ。

 あのいけ好かない顔が歪んでいる姿を見れた。

 だが、なんであいつはあんな事を言ったんだ?

 あいつからしても最強のゾンビが産まれれば俺を倒す事が出来る可能性が高くなるため、そっちの方がいいはずなのに…………。

 金髪男は焦ったように腕を振り上げた。


「くそっ! もう知らないからか!」


 そして金髪男は腕を振り下ろし、少し後ろへと下がって行った。

 くそ、嫌な予感がする。

 この前みたいな攻撃をされると少し困る。

 が、俺の顔はにやりと笑っていた。

 そして、逃げたりはせずにただ、共食いをしているゾンビへとゆっくりと近づいていく。

 その間にゾンビは互いを喰らい、一体のまるでこの世の兵器を詰め込んだような見た目をしたゾンビが産まれてしまっていた。

 こいつは明らかに強すぎる。

 こいつになら俺は為す術なく殺されてしまうかもしれない。

 だが、俺の顔の笑みは消えない。

 ゾンビ男は最強のゾンビが産まれたことに歓喜し、先程異常にドヤ顔をして俺を見下していた。


「ははははは! どうだ! 手も足も出ない……でしょう!?」


 俺は流石にもう終わりかと思った。

 俺の中のナニカはやはり俺の見方では無かったという事なのか?

 俺はにやりと笑いながらそのゾンビへと近づいていく。

 俺が死を覚悟したその時、俺の口が動く。


夢奪ばく


 俺はゾンビに手を当て、そのスキルを使っていた。

 すると、ゾンビは徐々にドロドロと溶けていき、その力が俺に流れてくるのを感じた。


「え…………な、何が起きて…………。」


 ゾンビ男はまるでお前がゾンビなのでは無いのか?と思うくらい顔を青くして俺と、溶けてもはやその姿を残していないゾンビだった物を見詰めていた。

 いや、何が起きてるかなんか俺にも分からないんだが…………。

 その様子を見て金髪男も顔を青くしていた。


「マジかよ…………。」


 金髪男はそう呟いた。
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