165 / 214
166話 凪2
しおりを挟む凪に黒鉄を振るうが、凪の体に触れた瞬間、凪の体が変形し、黒鉄をガジガジと噛んでいた。
黒鉄はそんな攻撃を受けているのにもかかわらず、ビクともしていない。
本当にこの刀は強いな。
しかし、刀は大丈夫だったものの、凪の体から触手のようなものが伸びて来たので、俺はすぐさま刀を離した。
なんだこれ、気持ち悪い。
俺は露骨に嫌な顔をしながら後ろへと跳び退いた。
今の凪の姿は完全にエイリアンか何かみたいだった。
かろうじて人間の姿は保ってはいるが、完全に人外になってしまっている。
まぁ、元々こいつは人間とは思っていなかったし、どっちでもいいのだがな。
俺は伸びてきた触手を素早く切り落とした。
その触手から流れ出た液体は触れた地面を瞬時に溶かしていた。
あの液体は酸なのか。
俺の事を食べようとしていることから、あの酸は胃液か何かなのだろう。
胃液にしてはかなり溶けすぎな気もするが、人外のやることだから分からない。
俺の体にも少しかかったが、瞬時に治せる程度だった。
浴びるように掛りでもしたら治しても治してもまた体に残った酸によって体が溶かされ続け少し面倒そうだが、この程度の量なら問題は無い。
黒鉄も無事だ。
切り落とされた触手は地面に落ちてうねうねと動き続けている。
本体からは切り離されているはずなのに物凄い生命力だ。
これなら本体にも苦痛を与えながら殺すことが出来そうだ。
俺は普通の攻撃では通らないと思い、魔力を込めた一撃を叩き込んだ。
しかし、凪はその攻撃を受け、黒鉄を食べようとした。
黒鉄自体は食べられたりすることは無かったが、それに宿っていた魔力などが吸収されてしまった。
そうか、こいつは魔力を食うことができるのか。
魔法のような魔力を使った攻撃を主体としている人からすれば死活問題だろうが、幸いな事に俺の攻撃は魔力を使うものが主では無い。
俺はまた凪を掴もうとした。
生理的嫌悪感はあるが、そんな事を言っている場合では無い。
凪は俺の事を食べたいからか、さっき掴まれてやられた事を忘れたかのように俺の手をそのまま受け入れた。
目の前で俺の手が食べられていく。
血肉や骨などがバキバキと砕かれこいつの体の中に入っていく様は最悪なものだった。
食われるにしてもよりによってこいつにだけは食われたくない。
だが、これもこいつを倒す為にはしょうがないのだ。
俺は手を治しながら、凪をしっかりと掴む。
【夢奪】
俺は再度そのスキルを使った。
しかし、それで自分が吸収されてしまうことを悟ったのか、凪も動き出した。
【具現《小口》】
その瞬間、俺の周りに、そして凪の中に大きさが1センチ以下の様々な種類の口が現れた。
地獄絵図だ。
俺は堪らずその場から逃げ出そうとするが、その口たちは俺の事を喰らおうと迫ってくる。
その数はとんでもない数で、ざっと見た感じでも何万個という規模だった。
その大量の口が集まって来る姿はこの世の終わりのようだった。
俺はその口を切り刻もうとするが、俺の攻撃は全てすり抜けてしまう。
斬っているはずなのに、まるで手応えが無いのだ。
そしてその口たちは俺の周りにへばりついたり、俺の中に入ってきたりして、一斉に俺の事を喰らい始める。
中から外まで全身が激痛に襲われる。
耐え難い感覚に俺は凪から手を離してしまう。
凪の力を奪おうと思ったのに、それは出来なかった。
その代わり、俺は俺の身体中にへばりついている口共に夢奪を使った。
そうすると、口共は徐々に消えていった。
そして、俺は周りに飛び回っている小さな口から逃げながら凪の隙を伺う。
今までの経験上、夢奪というスキルは相手の魔力か何かを奪ったりする能力だと考えている。
このスキルを使えば相手の力を奪って自分のものにする事によって圧倒的なアドバンテージを獲得し、敵を圧倒することが出来るはずだ。
しかし、凪の力も何かを食らうことに特化したものなのだろう。
先程は特に感じなかったが、今になると、凪が俺を食らう度に俺の魔力が減っていっている気がする。
スキルが無くなったりはしていないが、身体能力が微かに下がってきている。
凪から吸収する事でそれは取り戻すことが出来るのだが、その力は拮抗しており、それによるアドバンテージなどは獲得出来ていない。
依然として凪は無数の口を放出し続けており、口の数は次第に増えていった。
全て夢奪で消し去ってやりたいが、このスキルを使っている感覚としては、飴玉を溶けきっていない大きい状態で飲み込む時のような感覚なんだ。
確かにその程度なら我慢出来るが、それをずっと続けていれば窒息してしまう。
それと同じように俺が夢奪を使い続けるといけないのだ。
だから俺は夢奪を連発して使うことは出来ない。
だから俺はその口の発生源である凪を叩こうとしているのだ。
やっぱり人外がやることは恐ろしいな。
だが、凪を絶対に殺すという心さえ持っていればいずれ必ず殺す事は出来る。
そう俺は確信し、凪の隙を伺い、攻撃を繰り出していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
629
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる