謎の箱を拾ったら人生が変わった件〜ダンジョンが現れた世界で謎の箱の力を使って最強目指します〜

黒飛清兎

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165話 凪

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 俺は同じような平原を走る。

 凪を探すためだ。

 俺はこの近くに凪が居ると確信している。

 俺はある気配を感じてその場に止まった。


「なにか来る…………。」


 音がしたり、何かが見えた訳では無い。

 というか、何も無い。

 しかし、それこそおかしかった。

 このだだっ広い平原の奥から、何も無いが近づいてきている。

 俺は黒鉄を構え、その方向を見る。

 闇だ。

 俺の目には何も映らない、闇の塊のような物が近づいてきている。

 暗いとかそういうレベルじゃない。

 完全に光を通していない。

 俺は直感的に、あれが凪だと思った。

 今だからこそ分かるあの異質さ。

 まるで周りの魔力を全て吸収しているような様子だ。

 俺は黒鉄に魔力を込める。

 凪はそれに反応したのか勢い良くこちらに近づいてくる。

 近づくと、凪は金切り声とも違う本当に人間から出ている声とは思えない声を上げていた。

 知性があるようには聞こえない。

 だが、そんなのは関係無い。

 俺の憎悪が吹き上がる。

 諸悪の根源、凪への憎悪は凄まじかった。

 まるで俺が俺で無くなるような感覚だった。


「…………死ね!」


 俺は闇雲に黒鉄へと攻撃を放つ。

 しかし、その攻撃は闇に飲み込まれ、消えてなくなってしまう。

 …………なんなんだあれは?

 まるで攻撃が効いていない。

 俺はその様子を見て歯軋りをした。

 こんなんじゃダメだ。

 ゆうちゃんをあんな目に合わせたヤツが辛い思いをしないなんて、絶対に許せない。

 少なくとも永遠に死の何倍もの苦しみを、いや、その程度では生ぬるい。

 何よりも苦しんでもらわなければいけない。

 なのにあれはなんだ?

 苦しむどころが、そんな事を感じる理性もないのでは無いか?

 しかも俺の攻撃は通らない。

 俺の憎悪がどんどんと増していく。

 凪はそんな俺に対してどんどんと近づいてくる。

 その闇が俺に触れた瞬間、俺はそれに飲み込まれるような錯覚に陥った。

 そして、その闇の真ん中で何かがニヤリと笑った。


「やっとだ…………僕のメインデッシュ、みぃつけた!」

「…………。」


 気持ち悪い。

 どこまでも気持ち悪い。

 こいつはゆうちゃんをあんな目にあわせた挙句、さらに罪を重ねようっていうのか?

 俺はその闇の中にいるであろう凪へと直接斬り掛かる。


「あはははははははは! 今ならそれだって…………!」


 その瞬間、激しい金属が鳴り響いた。

 その音は俺の手に持っている黒鉄から放たれていた。


「なんで…………。まぁ、いいっすよ、僕はメインディッシュが食べれればそれで満足っすよ!」

「…………カスが! 食わせるわけが無いだろ!」


 俺は体を捻り、その吸い込まれる感覚を払おうとするが、上手くいかない。

 それでも俺は凪がいるであろう場所に斬り掛かる。

 その度に激しい金属音が鳴るが、すぐに手応えがなくなってしまう。

 多分避けられたのだろう。

 凪は姿形や音すらも消している。

 ただ本人が喋ろうとしていることだけが俺に聞こえているため、凪が何処にいるかは見当もつかない。

 ただ、闇雲に黒鉄を振り回すしか無い。

 しかし、嫌な事に金属音がなるにつれて少しづつ俺の手や体にもダメージが入っていることに気づく。

 様々な攻撃を俺の中のナニカが防いでいるという感覚はある。

 この闇の中に居るだけでも俺は体を蝕み続けられているのだろう。

 だが、それの殆どは俺の中のナニカが処理して俺に攻撃が届かないようにしてくれていた。


「…………やっぱり、メインディッシュなだけあってしぶといっすね。けど、それだけ美味しいってことっすよね!」

「…………。」


 もう俺は凪の言葉に暴言を吐く気すら無くなってきた。

 こいつは駄目だ、もう終わっている。

 この世に居ていいものじゃない。

 本当はじわりじわりと痛ぶって拷問という拷問をうけさせ、あらゆる苦痛を与えてつつ一生延命し続け死さえ許さない気でいたが、気が変わった。

 あれは今ここで殺す。

 俺はまず今ここをおおっている闇を何とかすることにした。

 俺は闇に手を伸ばし、凪を掴む。

 …………物凄い勢いで俺の腕が食われている。

 だが、その程度では俺の再生に劣っている。

 俺はそのまま呟く。


夢奪ばく


 俺はそのスキルを使った。

 効果ははっきりいって分からない。

 だが、その使い方は俺の中のナニカが教えてくれるのだ。

 俺がそのスキルを使うと、瞬時にその闇に光が差し込む。

 周りが色付き、凪の姿が見える。


「…………は?」


 俺はその姿を見て唖然としてしまう。

 それは確実に凪だった。

 凪だったのだが、明らかに全てがおかしい。

 何故なら、凪の姿は真っ黒な人型の影のような姿だったからだ。

 凪は周りの闇が払われた事に驚いたのか、少し困惑した様子を見せていた。

 なぜあんな姿になってしまったのかは分からないが、確実に碌でもない理由だろう。

 少しだけ困惑していた凪だったが、俺の事をその目で見た瞬間、ニタリと笑った。

 俺は腹の奥から何かが込み上げてくるような感覚に陥る。

 勿論何も食べていないので何も出るはずは無い。

 それでも俺は嗚咽を漏らした。

 あれは生理的に無理だ。

 俺は黒鉄を向ける。


「お前だけは殺す!」


 俺はそのまま凪へと立ち向かった。
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