九年セフレ

三雲久遠

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二話

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 前戯らしい前戯も、準備らしい準備もせずに、ローションを垂らされ、いきなり挿れられた。

「あ……、新堂……、や……」

 着ていたものは全部はぎ取られ、煌々と部屋を照らす明かりの下で、足を大きく開き、男の目に何もかもを晒している。

「……くっ……ん!」

 行為に慣れきった体は易々と男を飲み込み、ほんの少し走る痛みが却っていいと感じる。

「はっ……っ、ああっ……、あ……」

 ゆっくりと突き込まれ、中の締りを存分に味わうように、細やかな出し入れが始まった。
俺はこれを待っていたのだと、ぞくぞくする快感に、身も心も小刻みに震え始める。

「んんっ……く…」

 始まってすぐだと言うのに、もう声が抑えられない。
早くも汗ばむ新堂の背中に両腕を回し、俺も僅かに腰を動かして応えた。

「……んっ、きつ……、痛いか?」

 痛くないと微かに首を左右に振る。
まだ若かった最初の頃は、痛みにしょっちゅう涙が出た。
でも、痛かろうが、辛かろうが、新堂に貫かれるこの瞬間の幸福感は変わらない。
まして今は、体の奥から尽きることなく悦びが湧き上がり、俺の正気を奪っていく。

「あっあっ……、は……あ……」

 新堂は体を起こし、俺の両手首を掴んで、大きく腰を突き込んできた。

「ああっ……!」

 衝撃で体が軋むほど、深いところを抉られる。
容赦なくそれを抜かれて、また奥底まで。
それを何度も繰り返され、鈍い痛みと気持ちのよさに自分から足をさらに大きく開いた。

 ひとしきりその体位を楽しんで、新堂は抜かずに俺を俯せにする。

「……うっ……ん…ぁ…」

 角度が変わり、思い掛けない場所を強く擦られ高い声が出た。
腰を突き出し這いつくばり、俺はこの男の犬になる。
今度は後ろから差し込まれ、片方の頬をシーツに擦り付けた。

「ああっ……ぅ、は……っ」

 転がっていた枕の端を掴み、もっとしてくれと腰を高く上げる。
ローションや体液で濡れ光っている淫らな場所を、俺は男に見せつけていた。

 何をされてもいい。
新堂が望むならどんなことでも応えたい。
もっとめちゃくちゃにしてくれと、爛れきった思念を送る。

「はっ……、んん……っ!」

 うっすら目を開け、俺の背後に覆いかぶさる男を流し見た。

「イイ……か?」

 新堂の熱い手が、勃ち上がった俺の前に回ってくる。
後ろを散々刺激され、勝手に濡れ始めたそこはもう陥落寸前まできていた。

「イイって言えよ……」

 がちがちに猛ったモノを大きな手で撫でまわされる。
俺のものが新堂の手をべとべとに汚していた。

「っは……、あ……あっ……」

 後ろをいいように突かれ、前を同時に愛されて、頭の中は真っ白になり、腰が震え始める。

「イイって言……え」

 セックスで昂ぶった新堂の声。
普段のこいつとは違う、息を荒げた、どこか上の空のようなこの声が、俺は昔から好きだった。

「……ん……ぁ……!」

 新堂が俺に感じてくれている。
そう思うだけで堪らなくて、目尻に涙が滲んでくる。
中のいいところを執拗に擦られると、もう腰を上げていられなくなった。
ぐしゃりと崩れた俺の片足を高々と抱え上げ、今度は横から、無理やり挿れられた。

「く…っ……」

 そのままゆっくり正常位へ、両足を大きく広げてベッドにずぶずぶに沈む。

「もっとだろ? まだ達くなよ」
「や……、もう……」

 体を激しく揺さぶられると、もう訳が分からなくなってくる。
体重を掛けて圧し掛かられ、押し潰されて息が苦しい。
それでも離したくなくて、汗に濡れた男の背中に両腕を回してしがみ付く。

「……俺が……いいか?」
「おまえが……いいっ……」

 俺を何度も貫いている最中、激しい息の下で、新堂はよくこんな風に甘ったるく聞いてくる。

「俺が……好きか……?」

 俺の答えなんか分かりきっているくせに、なぜ何度も言わせたがるのか。

「……好きっ……あ、ああっ……っ!」

 喉の奥から喘ぎともに、この俺のどうしようもない思いが溢れ出る。

「んっ…、んん」

 新堂の首に腕を回して、唇を求めたら、切羽詰まったような深いキスが返ってきた。

「……くっ…んっ、緒方…、好き…か?」

 深いキスと挿入で俺の体を切り刻み、その合間にまた同じことを聞いてくる。

「好……き……、新……、好き……、あ、あ、っ…ん…ん…っ」

 こんなときにしか言えない言葉を、俺は嬉々として繰り返す。
好きだと口にするごとに、思いが深くなっていく。
惚れた男に抱かれて、おかしくなりそうなほどセックスがよくて、
このまま死んでもいいと思うのは、いつもこの瞬間だった。
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