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第十二章 波乱の鷹狩り

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 拒絶しようとした、まさにその時だった。バタバタという足音が、こちらへ近付いて来た。殿下が、さっと私の体を放す。

「ドニ殿下! こちらにいらっしゃったのですか。マルク殿下が、お呼びですよ」

 小走りでやって来たのは、鷹狩りに参加していた男性貴族の一人だった。彼は、私を見て一礼した。

「ああ、お話中失礼しました。ですが、マルク殿下は急いでいらして。早く戻るように、とのことでした」
「わかりました、すぐ参ります」

 言いながらドニ殿下は、チラと私をご覧になった。

「先に行ってくださいませ。私は、後からゆっくり参りますわ」
「すみません……。では、また後ほど」

 ドニ殿下は、呼びに来た男性に連れられて、急ぎ足で来た道を戻って行かれた。彼らの姿は、あっという間に見えなくなった。

(さて、私も戻るとしましょうか)

 だが次の瞬間、私は背後から、何者かにぐいと腕をつかまれた。振り返って、私は目を見張った。

「――アルベール様!? いつの間に……」
けて来たに決まっているでしょう。心配で、二人きりになんかさせられますか。そこに潜んで、見守っていたんですよ」

 アルベール様が、付近の草むらを指さす。何だか、妙に不機嫌だった。

「ありがとうございます……。でも、こんな風に会話を交わすのは、まずいですわ。私たち、別れたことになっていますもの……。もう失礼しますわね。私も、戻らなければ」

 踵を返そうとした私だったが、アルベール様は腕をつかんだまま、放してくださらない。それどころか、ぐいぐいと引っ張り、大木の陰へと連れて行くではないか。

「ちょっ……、アルベール様!?」
「俺がニコル嬢の屋敷へ行った時、見に来られたあなたの気持ちが、ようやくわかりましたよ」

 アルベール様は、ため息をつかれた。

「予想以上にきついですね、これは。まるであなたと殿下は、本当に愛し合っているようだ」
「ちょっと、何を仰っているんですの!?」
 
 私は、目を剥いた。

「ドニ殿下は、私をアンバーのように利用しようとしているだけですわよ。それに応えているのは、演技に決まっているじゃありませんの!」
「だからって、キスまでさせることは無いでしょう!」

 アルベール様が、目をつり上げる。

「許してはおりませんわよ! 拒むつもりでした!」
「迷われていたようですが」

 うっと、私はつまった。

(そこ、見てらっしゃったのね……)
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