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⑧迷い
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社交パーティーの後、ゲイリックは二人の令嬢と付き合うことになった。
公爵令嬢のマリアンも男爵令嬢のグレイスもどちらも魅力的に見えた。
ゲイリックが彼女たちに会うときは必ず一人ずつ、二人だけで会っていた。
マリアンと会っているときはグレイスが気になり、グレイスと会っているときはマリアンが気になるという、見事な優柔不断ぶりを見せていた。
彼女たちはそんなゲイリックを二人の女の間で揺れる少し決断力のない、それでも素敵な男性だと思っていた。
ゲイリックはどちらを口説けばいいのか分からず、そのうち、どちらにも甘い言葉を囁くようになっていた。
彼女たちの身持ちは固かった。マリアンは決してゲイリックに体を許さなかった。
対してグレイスは豊満な体を武器に積極的に迫っていたにもかかわらず、いざとなると体の関係を拒んでいた。
ゲイリックの好みのタイプはグレイスだったが、マリアンも嫌いではなかった。あのお淑やかで上品なマリアンにゲイリックは胸を熱くした。
『いっそのこと二人と結婚できればいいのに』
そんな都合の良いことを考え、どちらにするべきか悩んでいた時、二人がゲイリックに決断を求めた。
「ゲイリック、私とマリアンのどちらにするか、決めてほしいの」
グレイスがゲイリックに迫る。
マリアンも同じように迫る。
「ゲイリック、お父様にも命令されているの。あなたが私を選んでくれないなら、私はお父様の選んだ方と結婚をしなくちゃならないのよ」
ゲイリックの前に並んで立つ二人の令嬢が手を伸ばした。
グレイスが声を出した。
「私と結婚するか、それとも……」
マリアンも声を出す。
「私と結婚するか、はっきり今決めてほしいの。私たちは目を瞑るから、あなたが選んだ方の手を握ってください、ゲイリック!」
目を閉じて手を差し出しているマリアンとグレイス。
まだまだ時間はあると呑気に考えていたゲイリックに、突然の決断を求める二人の令嬢。
(うーん、困った。どうしよう……)
二人の体と顔を見比べ、ゲイリックは思い切って自分の性欲に任せることにした。
どちらと寝屋を共にしたいか、それのみを考えて、ゲイリックはグレイスを選んだ。
グレイスの手を握ろうとしたその時、小さな羽虫がゲイリックの目の前をしつこく飛び回っていた。
(なんだ、コイツは!)
虫を払い退けようとして、手を横に振り払った時、ゲイリックの手はマリアンの手に触れていた。
慌ててグレイスの手を握ろうとしたが、もう遅かった。
グレイスは手を引っ込め、マリアンは感激で泣いていた。
流石にゲイリックでも、今更今のは違うんだとは言えずに、流されるようにそのままマリアンと結婚したのだ。
それでも、結婚生活は素晴らしかった。マリアンとゲイリックの体の相性はとても良かったからだ。
おまけに公爵の爵位も継承して高い身分も手に入れた。
娘も生まれ幸せだったが、それでも考えてしまうのだ。
あの時、虫など気にせずグレイスの手を握っていたなら、自分はどうなっていたのかと……。
あの豊満な体と自分の相性はどうだったんだろうかと、考えてしまうのだった。
❖❖❖
「マイケルよ、人生は本当に一寸先は闇なのだ」
「……」
「お前がグレイスと上手くいくことを願ってはいるが、本当にグレイスでいいのか?今一度、よく考えてみろ」
そう言うとゲイリックは湯船から出ると出口に向かった。そして振り向いて言った。
「体の相性は意外に大切なものなんだぞ、マイケル。セシルとのことも、よく頭に入れて考えてみろ」
ゲイリックが浴室を出ていった。
マイケルはゲイリックの口から、セシルの名前が出たことに驚いた。
(セシルとのことをご存知だったのか、旦那様は……)
残されたマイケルは無言のまま湯船に浸かりながら、この期に及んで迷いが生じていた。
男爵家からの迎えがあとわずかに迫っていた。
「俺は、どうすればいい?」
自問したがやはり答えは出なかった……。
公爵令嬢のマリアンも男爵令嬢のグレイスもどちらも魅力的に見えた。
ゲイリックが彼女たちに会うときは必ず一人ずつ、二人だけで会っていた。
マリアンと会っているときはグレイスが気になり、グレイスと会っているときはマリアンが気になるという、見事な優柔不断ぶりを見せていた。
彼女たちはそんなゲイリックを二人の女の間で揺れる少し決断力のない、それでも素敵な男性だと思っていた。
ゲイリックはどちらを口説けばいいのか分からず、そのうち、どちらにも甘い言葉を囁くようになっていた。
彼女たちの身持ちは固かった。マリアンは決してゲイリックに体を許さなかった。
対してグレイスは豊満な体を武器に積極的に迫っていたにもかかわらず、いざとなると体の関係を拒んでいた。
ゲイリックの好みのタイプはグレイスだったが、マリアンも嫌いではなかった。あのお淑やかで上品なマリアンにゲイリックは胸を熱くした。
『いっそのこと二人と結婚できればいいのに』
そんな都合の良いことを考え、どちらにするべきか悩んでいた時、二人がゲイリックに決断を求めた。
「ゲイリック、私とマリアンのどちらにするか、決めてほしいの」
グレイスがゲイリックに迫る。
マリアンも同じように迫る。
「ゲイリック、お父様にも命令されているの。あなたが私を選んでくれないなら、私はお父様の選んだ方と結婚をしなくちゃならないのよ」
ゲイリックの前に並んで立つ二人の令嬢が手を伸ばした。
グレイスが声を出した。
「私と結婚するか、それとも……」
マリアンも声を出す。
「私と結婚するか、はっきり今決めてほしいの。私たちは目を瞑るから、あなたが選んだ方の手を握ってください、ゲイリック!」
目を閉じて手を差し出しているマリアンとグレイス。
まだまだ時間はあると呑気に考えていたゲイリックに、突然の決断を求める二人の令嬢。
(うーん、困った。どうしよう……)
二人の体と顔を見比べ、ゲイリックは思い切って自分の性欲に任せることにした。
どちらと寝屋を共にしたいか、それのみを考えて、ゲイリックはグレイスを選んだ。
グレイスの手を握ろうとしたその時、小さな羽虫がゲイリックの目の前をしつこく飛び回っていた。
(なんだ、コイツは!)
虫を払い退けようとして、手を横に振り払った時、ゲイリックの手はマリアンの手に触れていた。
慌ててグレイスの手を握ろうとしたが、もう遅かった。
グレイスは手を引っ込め、マリアンは感激で泣いていた。
流石にゲイリックでも、今更今のは違うんだとは言えずに、流されるようにそのままマリアンと結婚したのだ。
それでも、結婚生活は素晴らしかった。マリアンとゲイリックの体の相性はとても良かったからだ。
おまけに公爵の爵位も継承して高い身分も手に入れた。
娘も生まれ幸せだったが、それでも考えてしまうのだ。
あの時、虫など気にせずグレイスの手を握っていたなら、自分はどうなっていたのかと……。
あの豊満な体と自分の相性はどうだったんだろうかと、考えてしまうのだった。
❖❖❖
「マイケルよ、人生は本当に一寸先は闇なのだ」
「……」
「お前がグレイスと上手くいくことを願ってはいるが、本当にグレイスでいいのか?今一度、よく考えてみろ」
そう言うとゲイリックは湯船から出ると出口に向かった。そして振り向いて言った。
「体の相性は意外に大切なものなんだぞ、マイケル。セシルとのことも、よく頭に入れて考えてみろ」
ゲイリックが浴室を出ていった。
マイケルはゲイリックの口から、セシルの名前が出たことに驚いた。
(セシルとのことをご存知だったのか、旦那様は……)
残されたマイケルは無言のまま湯船に浸かりながら、この期に及んで迷いが生じていた。
男爵家からの迎えがあとわずかに迫っていた。
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