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⑨立ち位置
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マイケルは入浴を済ませた後、自室に戻り、出かける支度を始めた。
大きなカバンに着替えの衣類を詰め込み、部屋の中を見回し感慨にふける。
(俺の荷物って、少なかったんだな……)
自分の人生の道筋が大きく変わろうとしていることを、マイケルは実感していた。
頭の中にグレイスの豊満な体が浮かび上がる。
「では行くか……」
マイケルがドアを開けると目の前にセシルが立っていた。
セシルはマイケルのカバンを見て、「やっぱり行くことに決めたんだ」と小さな声で言った。
「……うん、とりあえず行ってみるよ」
「そう、じゃあ、元気でね、マイケル」
「……」
セシルの寂しそうな声色に、思わず手に持っていた鞄を離してセシルを抱きしめた。
「セシル……」
「マイケル、離れてくれる?」
「え?」
「あなたはグレイス様を選んだんでしょ?だったら私を抱きしめたりなんかしないで」
セシルはマイケルから体をずらして離れると、「じゃあね、マイケル」そう言って姿を消した。
「セシル……」
❖❖❖
マイケルは玄関の入り口に自分の荷物を置くと食堂へ向かった。
グレイスからの迎えが来るまで執事としての仕事を全うするつもりだった。
だがそこでドアノッカーを叩く音が響いた。
マイケルは踵を返し玄関へ向かった。
玄関扉をゆっくりと開けて外を見ると、グレイスが立っていた。
まさかグレイス自ら自分を迎えに来るとは思っていなかったマイケルは、いつものように動揺する心を抑えて無表情のまま話しかけた。
「お待ちしておりました。グレイス様」
「ごきげんよう、マイケル」
玄関の中に入るとグレイスの目に大きな鞄が一つ目に入った。
「決心してくれたようね」
「はい、グレイス様」
「マイケル、公爵様にお会いしたいのだけど……」
「では、こちらにどうぞ」
マイケルは、グレイスを食堂へ案内することにした。
食堂の前に行くと、マイケルは扉を少しだけ開けて顔出し、声をかけた。
「旦那様、グレイス様がお越しになりました。こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」
すでに上座に座っていたゲイリックが頷いた。
「ああ」
二人が中へ入ると、マリアンとビセットも席に着いていた。
(ん?)
マイケルはテーブルを見て不思議に思った。食事の用意が、あと二人分用意されていたからだ。
(まさか……)
マリアンがグレイスに声をかけた。
「グレイス、マイケル、あなたたちも一緒に夕食を食べませんか?」
マイケルはグレイスの顔を見たが、グレイスはマイケルの顔を見ずにマリアンに返事をした。
「いいのかしら?ご一緒して」
ゲイリックもにこやかに言葉をかけた。
「ああ、もちろんだ。さ、一緒に食べよう。マイケル、お前も座りなさい」
危うく鉄仮面の表情が崩れそうになったが、気を引き締め答えた。
「それでは、お言葉に甘えて列席させていただきます」
グレイスはマリアンの隣に、マイケルはビセットの隣に座った。
ゲイリックが声をかけた。
「では、いただこう」
皆が食事を始める。マイケルには見慣れた料理だったが、食べるのは初めてだった。
厚切りのステーキをフォークで押さえ、ナイフで切る。一口大に切った肉を口に入れて噛みしめる。
(美味い)
あまりの美味しさに涙が出そうになったマイケル。
マリアンがグレイスに話しかける。
「グレイス、本当にマイケルを連れていくつもりなの?」
「あら、嫌な言い方をするのね、マリアン。彼は自分の意思で私のところへ来るのよ?ねえ、そうでしょう?マイケル」
マイケルが返事をする前にゲイリックが話し始めた。
「そうだ、言うのを忘れていた」
ゲイリックが一口水を飲んでマイケルに言った。
「マイケル、万が一、グレイスと上手く行かなくて男爵家を出ることになっても、もうここへは戻ってこなくていいぞ」
「はい?あの、それはどういう意味でしょうか?」
ゲイリックがニヤリと笑った。
「お前は今日限りで首だ」
「首?ですか……」
マイケルはグレイスと上手く行かなかった場合でも、公爵家に出戻り、再び執事を務められると思っていた。
それが駄目だと言われて、逃げ場を失ったようで心細くなった。
黙ったままのマイケルにグレイスが声をかける。
「どうしたの?マイケル。帰るところがないと心配?」
「いえ、そのようなことは……」
マイケルの声が小さくなる。
ゲイリックがまた話しかける。
「マイケル、お前はいくつになった?」
「……22歳です」
ゲイリックがチラリとグレイスを見てマイケルを見た。
「グレイスは37歳だ。お前とは15歳も違う。このことが分かるか?」
「……はい……あの、旦那様は、年の差のことをおっしゃっておられるのでしょうか?」
「ああ、今はまだいいが、お前が55歳の時、グレイスは70歳。ヨボヨボのおばあさんだぞ?」
「……」
「今は魅力的な体型をしておるが、その頃にはしわしわの」「ゲイリック!」
グレイスの鋭い声が遮る。
「いい加減にしてくれないかしら?未来の話は結構よ。今の私はしわしわでも、ヨボヨボでもないんだから!」
「……」言葉の詰まるゲイリック。
マリアンが笑う。
「あなた、グレイスがしわしわのヨボヨボなら、私も同じなんですけど?それに、あなたは私たちよりも5歳も年上なのよ?」
ゲイリックはほんの少し唇を尖らせた。
「ふん、マイケルにちょっとだけ未来の話を聞かせてやっただけだ」
マイケルは苦笑いをしながら考え事をしていた。
(55歳って……俺にはまだ想像もできないが、その時でもまだ俺は女を求めているのだろうか?)
この後は静かになり、食事が進んで行く。セシルが食器を下げていき、各々の前にワイングラス並べ始めた。
マリアンがグレイスに提案をした。
「ねえ、グレイス、今夜は泊まって行けば?」
「え?」驚くグレイス。
ゲイリックも続く。
「そうだ、その方がいい。それに、マイケルを連れて帰れば、本当に後には引けなくなってしまうぞ?」
「……」考え込むグレイス。
娘のビセットまで話に首を突っ込んできた。
「グレイス様、すぐにでも婚姻届けを出すのならともかく、そうするつもりはないのでしょう?このままマイケルを連れ帰ると、それだけで社交界では大変な噂になってしまいますよ?」
グレイスがビセットを見つめた。ビセットは構わず話を続けた。
「セミン男爵家の未亡人は、子供欲しさに若い男を囲い、夜な夜ないけないことをしている、なんて噂が飛び交うかも知れませんよ」
グレイスが真面目に答えた。
「……子供ができるなら、なんて言われても構わないわ」
マリアンが言葉をかける。
「もしも、それで子供ができたとしても、その子はずっと陰口を叩かれるかもしれないのよ?」
「でも、世継ぎが……」
ゲイリックが言った。
「親戚から後継者を募ればいいではないか。体がうずくのなら私が」「あなた!」
ゲイリックに釘を刺してグレイスに話しかけるマリアン。
「今夜一夜だけ、マイケルと寝屋を共にして、様子を見たら?3ヶ月後妊娠していたらそのまま産めばいいじゃない。不義の子って言われるだろうけど」
「そ、そうね……」
ここまで黙って話を聞いていたマイケル。ようやく自分の立場が分かってきた。
(これはもう間違いない。俺は……種馬としか見られていない……)
男爵になるのを夢みていたマイケルの心が……折れかけていた。
ゲイリックがワイングラスを掲げて言った。
「では乾杯といこうではないか」
その呼びかけに皆がワイングラスを高く掲げ、ゲイリックの「乾杯!」という掛け声に呼応して「乾杯!」と唱えた。
しかしマイケルだけは呆然とした顔でビセットを見ていた。
ビセットは乾杯の声とともにマイケルに向かって声をかけていたのだ。
『セシルは妊娠しているわ』と……。
大きなカバンに着替えの衣類を詰め込み、部屋の中を見回し感慨にふける。
(俺の荷物って、少なかったんだな……)
自分の人生の道筋が大きく変わろうとしていることを、マイケルは実感していた。
頭の中にグレイスの豊満な体が浮かび上がる。
「では行くか……」
マイケルがドアを開けると目の前にセシルが立っていた。
セシルはマイケルのカバンを見て、「やっぱり行くことに決めたんだ」と小さな声で言った。
「……うん、とりあえず行ってみるよ」
「そう、じゃあ、元気でね、マイケル」
「……」
セシルの寂しそうな声色に、思わず手に持っていた鞄を離してセシルを抱きしめた。
「セシル……」
「マイケル、離れてくれる?」
「え?」
「あなたはグレイス様を選んだんでしょ?だったら私を抱きしめたりなんかしないで」
セシルはマイケルから体をずらして離れると、「じゃあね、マイケル」そう言って姿を消した。
「セシル……」
❖❖❖
マイケルは玄関の入り口に自分の荷物を置くと食堂へ向かった。
グレイスからの迎えが来るまで執事としての仕事を全うするつもりだった。
だがそこでドアノッカーを叩く音が響いた。
マイケルは踵を返し玄関へ向かった。
玄関扉をゆっくりと開けて外を見ると、グレイスが立っていた。
まさかグレイス自ら自分を迎えに来るとは思っていなかったマイケルは、いつものように動揺する心を抑えて無表情のまま話しかけた。
「お待ちしておりました。グレイス様」
「ごきげんよう、マイケル」
玄関の中に入るとグレイスの目に大きな鞄が一つ目に入った。
「決心してくれたようね」
「はい、グレイス様」
「マイケル、公爵様にお会いしたいのだけど……」
「では、こちらにどうぞ」
マイケルは、グレイスを食堂へ案内することにした。
食堂の前に行くと、マイケルは扉を少しだけ開けて顔出し、声をかけた。
「旦那様、グレイス様がお越しになりました。こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」
すでに上座に座っていたゲイリックが頷いた。
「ああ」
二人が中へ入ると、マリアンとビセットも席に着いていた。
(ん?)
マイケルはテーブルを見て不思議に思った。食事の用意が、あと二人分用意されていたからだ。
(まさか……)
マリアンがグレイスに声をかけた。
「グレイス、マイケル、あなたたちも一緒に夕食を食べませんか?」
マイケルはグレイスの顔を見たが、グレイスはマイケルの顔を見ずにマリアンに返事をした。
「いいのかしら?ご一緒して」
ゲイリックもにこやかに言葉をかけた。
「ああ、もちろんだ。さ、一緒に食べよう。マイケル、お前も座りなさい」
危うく鉄仮面の表情が崩れそうになったが、気を引き締め答えた。
「それでは、お言葉に甘えて列席させていただきます」
グレイスはマリアンの隣に、マイケルはビセットの隣に座った。
ゲイリックが声をかけた。
「では、いただこう」
皆が食事を始める。マイケルには見慣れた料理だったが、食べるのは初めてだった。
厚切りのステーキをフォークで押さえ、ナイフで切る。一口大に切った肉を口に入れて噛みしめる。
(美味い)
あまりの美味しさに涙が出そうになったマイケル。
マリアンがグレイスに話しかける。
「グレイス、本当にマイケルを連れていくつもりなの?」
「あら、嫌な言い方をするのね、マリアン。彼は自分の意思で私のところへ来るのよ?ねえ、そうでしょう?マイケル」
マイケルが返事をする前にゲイリックが話し始めた。
「そうだ、言うのを忘れていた」
ゲイリックが一口水を飲んでマイケルに言った。
「マイケル、万が一、グレイスと上手く行かなくて男爵家を出ることになっても、もうここへは戻ってこなくていいぞ」
「はい?あの、それはどういう意味でしょうか?」
ゲイリックがニヤリと笑った。
「お前は今日限りで首だ」
「首?ですか……」
マイケルはグレイスと上手く行かなかった場合でも、公爵家に出戻り、再び執事を務められると思っていた。
それが駄目だと言われて、逃げ場を失ったようで心細くなった。
黙ったままのマイケルにグレイスが声をかける。
「どうしたの?マイケル。帰るところがないと心配?」
「いえ、そのようなことは……」
マイケルの声が小さくなる。
ゲイリックがまた話しかける。
「マイケル、お前はいくつになった?」
「……22歳です」
ゲイリックがチラリとグレイスを見てマイケルを見た。
「グレイスは37歳だ。お前とは15歳も違う。このことが分かるか?」
「……はい……あの、旦那様は、年の差のことをおっしゃっておられるのでしょうか?」
「ああ、今はまだいいが、お前が55歳の時、グレイスは70歳。ヨボヨボのおばあさんだぞ?」
「……」
「今は魅力的な体型をしておるが、その頃にはしわしわの」「ゲイリック!」
グレイスの鋭い声が遮る。
「いい加減にしてくれないかしら?未来の話は結構よ。今の私はしわしわでも、ヨボヨボでもないんだから!」
「……」言葉の詰まるゲイリック。
マリアンが笑う。
「あなた、グレイスがしわしわのヨボヨボなら、私も同じなんですけど?それに、あなたは私たちよりも5歳も年上なのよ?」
ゲイリックはほんの少し唇を尖らせた。
「ふん、マイケルにちょっとだけ未来の話を聞かせてやっただけだ」
マイケルは苦笑いをしながら考え事をしていた。
(55歳って……俺にはまだ想像もできないが、その時でもまだ俺は女を求めているのだろうか?)
この後は静かになり、食事が進んで行く。セシルが食器を下げていき、各々の前にワイングラス並べ始めた。
マリアンがグレイスに提案をした。
「ねえ、グレイス、今夜は泊まって行けば?」
「え?」驚くグレイス。
ゲイリックも続く。
「そうだ、その方がいい。それに、マイケルを連れて帰れば、本当に後には引けなくなってしまうぞ?」
「……」考え込むグレイス。
娘のビセットまで話に首を突っ込んできた。
「グレイス様、すぐにでも婚姻届けを出すのならともかく、そうするつもりはないのでしょう?このままマイケルを連れ帰ると、それだけで社交界では大変な噂になってしまいますよ?」
グレイスがビセットを見つめた。ビセットは構わず話を続けた。
「セミン男爵家の未亡人は、子供欲しさに若い男を囲い、夜な夜ないけないことをしている、なんて噂が飛び交うかも知れませんよ」
グレイスが真面目に答えた。
「……子供ができるなら、なんて言われても構わないわ」
マリアンが言葉をかける。
「もしも、それで子供ができたとしても、その子はずっと陰口を叩かれるかもしれないのよ?」
「でも、世継ぎが……」
ゲイリックが言った。
「親戚から後継者を募ればいいではないか。体がうずくのなら私が」「あなた!」
ゲイリックに釘を刺してグレイスに話しかけるマリアン。
「今夜一夜だけ、マイケルと寝屋を共にして、様子を見たら?3ヶ月後妊娠していたらそのまま産めばいいじゃない。不義の子って言われるだろうけど」
「そ、そうね……」
ここまで黙って話を聞いていたマイケル。ようやく自分の立場が分かってきた。
(これはもう間違いない。俺は……種馬としか見られていない……)
男爵になるのを夢みていたマイケルの心が……折れかけていた。
ゲイリックがワイングラスを掲げて言った。
「では乾杯といこうではないか」
その呼びかけに皆がワイングラスを高く掲げ、ゲイリックの「乾杯!」という掛け声に呼応して「乾杯!」と唱えた。
しかしマイケルだけは呆然とした顔でビセットを見ていた。
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