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⑪真実
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深夜、マイケルがセシルの部屋のドアをノックした。
「セシル、俺だ。マイケルだ」
ベッドにいたセシルが起き上がるとそっとドアに近づいた。
「セシル」
どうしようか迷っていると、ドアの前から立ち去る足音が聞こえた。
ガチャ……
その音にマイケルが振り返るとセシルが半開きのドアの間に立っていた。
「セシル」
マイケルが引き返しかけると、セシルがドアをすぐに閉めた。
「セシル、話があるんだ。頼むから中に入れてくれ」
「……」
「セシル」
セシルがドアの鍵を外した。
マイケルが、ドアノブを回してゆっくり引っ張るとドアが開いた。
素早く中に入り、セシルを抱きしめようとしたがセシルは後ずさる。
「話って何?」
「お腹の子供のことなんだけど……本当にいないのか?」
「……ええ」
「そうか……いないのか……」
セシルがムッとする。
「安心した?子供がいなくて」
「あ、いや、その反対だ。俺に子供ができたのかと思って、嬉しかったんだが……」
「え?」
マイケルの予想外の言葉に声が詰まるセシル。
「君と俺と、そして赤ちゃんが幸せに暮らす未来の姿が目に浮かんで……」
マイケルの目を窺うように、「それ、本心で言ってるの?」とセシルが尋ねた。
「もちろんだ。だからあの時、君に確かめたんだ。側に旦那様や奥様、それにグレイス様がいたけど、君に確かめずにはいられなかったんだ」
「マイケル……」
「俺は確かに、優柔不断でずるい男だ。君とグレイス様を測りにかけて選ぼうとしていた」
「……」
「俺が悪かった。だからもう一度、俺とやり直さないか?」
「お腹に子供はいなくても?」
「ああ、今回のことで自分にとって大切な人は誰かがよく分かったよ」
「それは……誰?」
「君だよ、セシル」
マイケルはセシルを力いっぱい抱きしめた。今度は、セシルは逃げなかった。
「マイケル……本当はね……」
「?」
「お腹に子供がいるの」
「……セシル」
マイケルはセシルを強く抱き締めたまま、無言で目を大きく見開いていた。
それを知らないセシルの目から、嬉し涙がこぼれ落ちた。
❖❖❖
執務室でくつろぐゲイリックにマリアンが言った。
「ねえ、ゲイリック、あなた、本当はあの時、グレイスを選ぼうとしていたんでしょう?」
「あの時?」
「私とグレイスがあなたに迫った時のことよ」
「……」
「羽虫が目の前を飛んでいて……」
慌てて、釈明するゲイリック。
「マイケルの奴だな?あいつ、思いの外、口が軽いな。あ、勘違いしないでくれ、あれはつい誇張してマイケルに話をしてしまっただけだ。確かに虫は飛んでいたが、私が選んだのは君なんだ、マリアン」
マリアンは笑いながら19年前のことを思い出していた。
グレイスとマリアンが共にゲイリックに手を差し出した時、彼がどちらの手を取るのか、実はマリアンは薄目を開けてその瞬間を見ていたのだ。
ゲイリックが本当はグレイスを選んだことを知っていた。だからゲイリックが今でもグレイスに惹かれているのを許している。
グレイスを想像して自分を抱いているゲイリックのことも許している。
それは二人を騙した自分への罰だと思って……。
先ほど、セシルの田舎に帰ると挨拶に来たマイケルとセシルが、馬車に乗り込み屋敷を出ていこうとしていた。
二人を乗せた馬車はゆっくりと動き出した。
ゲイリックとマリアンが執務室の窓から眺めている。
「あの二人は幸せになるのかな?」
ゲイリックが呟くとマリアンが答えた。
「三人でしょ?」
「え?」
「彼女のお腹の中には、あなたの子供がいるんじゃないの?」
ゲイリックが顔面蒼白になっていた……。
完
「セシル、俺だ。マイケルだ」
ベッドにいたセシルが起き上がるとそっとドアに近づいた。
「セシル」
どうしようか迷っていると、ドアの前から立ち去る足音が聞こえた。
ガチャ……
その音にマイケルが振り返るとセシルが半開きのドアの間に立っていた。
「セシル」
マイケルが引き返しかけると、セシルがドアをすぐに閉めた。
「セシル、話があるんだ。頼むから中に入れてくれ」
「……」
「セシル」
セシルがドアの鍵を外した。
マイケルが、ドアノブを回してゆっくり引っ張るとドアが開いた。
素早く中に入り、セシルを抱きしめようとしたがセシルは後ずさる。
「話って何?」
「お腹の子供のことなんだけど……本当にいないのか?」
「……ええ」
「そうか……いないのか……」
セシルがムッとする。
「安心した?子供がいなくて」
「あ、いや、その反対だ。俺に子供ができたのかと思って、嬉しかったんだが……」
「え?」
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マイケルの目を窺うように、「それ、本心で言ってるの?」とセシルが尋ねた。
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「マイケル……」
「俺は確かに、優柔不断でずるい男だ。君とグレイス様を測りにかけて選ぼうとしていた」
「……」
「俺が悪かった。だからもう一度、俺とやり直さないか?」
「お腹に子供はいなくても?」
「ああ、今回のことで自分にとって大切な人は誰かがよく分かったよ」
「それは……誰?」
「君だよ、セシル」
マイケルはセシルを力いっぱい抱きしめた。今度は、セシルは逃げなかった。
「マイケル……本当はね……」
「?」
「お腹に子供がいるの」
「……セシル」
マイケルはセシルを強く抱き締めたまま、無言で目を大きく見開いていた。
それを知らないセシルの目から、嬉し涙がこぼれ落ちた。
❖❖❖
執務室でくつろぐゲイリックにマリアンが言った。
「ねえ、ゲイリック、あなた、本当はあの時、グレイスを選ぼうとしていたんでしょう?」
「あの時?」
「私とグレイスがあなたに迫った時のことよ」
「……」
「羽虫が目の前を飛んでいて……」
慌てて、釈明するゲイリック。
「マイケルの奴だな?あいつ、思いの外、口が軽いな。あ、勘違いしないでくれ、あれはつい誇張してマイケルに話をしてしまっただけだ。確かに虫は飛んでいたが、私が選んだのは君なんだ、マリアン」
マリアンは笑いながら19年前のことを思い出していた。
グレイスとマリアンが共にゲイリックに手を差し出した時、彼がどちらの手を取るのか、実はマリアンは薄目を開けてその瞬間を見ていたのだ。
ゲイリックが本当はグレイスを選んだことを知っていた。だからゲイリックが今でもグレイスに惹かれているのを許している。
グレイスを想像して自分を抱いているゲイリックのことも許している。
それは二人を騙した自分への罰だと思って……。
先ほど、セシルの田舎に帰ると挨拶に来たマイケルとセシルが、馬車に乗り込み屋敷を出ていこうとしていた。
二人を乗せた馬車はゆっくりと動き出した。
ゲイリックとマリアンが執務室の窓から眺めている。
「あの二人は幸せになるのかな?」
ゲイリックが呟くとマリアンが答えた。
「三人でしょ?」
「え?」
「彼女のお腹の中には、あなたの子供がいるんじゃないの?」
ゲイリックが顔面蒼白になっていた……。
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