《完結》人生を生き直し、恋に落ちる。

ぜらちん黒糖

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第一章

④再会

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​月日が経つのは早いもので、AV男優をやめてから15年が経っていた。

​玉袋金五郎は、東京の片田舎にある小さな劇団に所属し、53歳になった今も芝居を続けている。名前も玉袋金五郎から、一文字だけ変えていた。

​「砂袋さん」

​劇団員の呼ぶ声に、金五郎が振り返る。

​「なんだい、田中君」

​「事務局長が呼んでますよ、事務所に来てくださいって」

​「え?」

​(まさか、リストラじゃないだろうな)

​劇団の給料だけでは生活が苦しく、アルバイトもしている。そんな自分をクビにするつもりなのだろうか。心配しながら事務所へ向かって歩き出す。

​恐る恐る小さな事務所の扉を開ける。汚れた部屋の小さな丸椅子に、上品な女性がちょこんと座っていた。

​事務局長が慌てて立ち上がり、その女性に金五郎を紹介する。

​「あ、あの二階堂さん、こいつが我が劇団の古株、砂袋です」

​「古株」というセリフに引っかかりを覚えながらも、金五郎は女性に挨拶した。

​「【古株】の砂袋金五郎です」

​女性はゆっくりと立ち上がると、深くかぶった帽子とサングラスを外した。

​「二階堂沙知絵です」

​「はぁ?はぁ…」

​事務局長の大きな声が飛んできた。

「砂袋!まさか二階堂沙知絵さんを知らないのか?」

​残念ながら金五郎は知らなかったが、知っていると答えるべきか考えていると、二階堂沙知絵が先に口を開いた。

​「金五郎さん、お久しぶりです。クミコです」

​そう言って、二階堂沙知絵は深々と頭を下げた。 

​「あの時は本当にありがとうございました」

クミコの名前で、金五郎はすべてを思い出した。

​「……クミ…コ?ああ、あの時の女の子……」

一瞬で金五郎の脳裏に、あの時のクミコの姿が思い浮かんだ。必死でAV出演を拒んでいた若かりし頃のクミコの姿を。

​二階堂沙知絵はにっこり笑って言った。

​「約束を果たしに参りました」

​「約……束?」

​「ええ、あなたは言いましたよね。『もし君が共演者を選べるようになったら、その時は俺を呼んでくれ』って」

​「そんなこと……言ったか?俺」

​「うふふ、でもごめんなさい。まだ私にはそんな力がなくて……だから、ドラマのオーディション、受けてもらえませんか?私、あなたを推薦したんです。どうですか?」

​二階堂沙知絵の目にうっすらと涙が滲んでいた。

​砂袋金五郎は、顔をくしゃくしゃにして返事をした。

​「ありがとう……」

​涙がこみ上げてきて、その言葉しか言えなかった。

​「……どういたしまして」

​二階堂沙知絵も、涙声でそう返事をした。


    
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