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⑩地獄の二択
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結菜は床に寝かされ、頭には枕を敷いて体に毛布をかけられていた。
「大丈夫かな?彼女」西山が心配して満里奈に聞いてみる。
「大丈夫でしょう、人間って、なかなか死なないから」
「でも、病院に連れて行った方がいいんじゃないのか?」
「そんなことより西山さん、あなた、この子と結婚するの?」
「いや、できれば結婚したくないんだが。だって、君も見ただろう?彼女、二重人格だよ?あの、詩織っていう子はやばいよ。あんなのと一緒に暮らしてたら、いつか本当に殺されちゃうよ」
「そう、それじゃあ私とは?私とは嫌?」
西山は正直迷っていた。本性丸出しの満里奈は色気があり、普段の真面目な満里奈とのギャップがあって、とても新鮮に思えたのだ。ただ一つ心配なのは、人の頭を平気でフライパンで叩く、暴力的なところが恐ろしかった。
結菜と結婚すると、いつ詩織が飛び出してくるかわからない。包丁をちらつかすような女だ。
だが満里奈も大概に恐ろしい。どちらを選んでも、西山にとって、身近に恐怖が付きまとう。
その時、結菜が意識を取り戻した。ゆっくり起き上がるとお腹をさすりながら、「トイレ、どこ?」と満里奈に尋ねた。
満里奈が指を差すと、結菜は無言でトイレに入っていった。
西山の脳裏に結菜のお腹の子供が引っかかる。
「大丈夫かな、彼女、お腹に子供がいるんだけど」
「……」
トイレの水が流れる音がした。そしてしばらくしてから結菜が出てきた。
「私、もう帰るから」そう言って玄関へ向かった。
結菜の体調が気になった西山が、声をかける。
「梅沢さん、お腹は大丈夫なのか?妊娠しているんだろう?」
「え?ああ、それなら大丈夫よ、もう」
「え?」
「私、妊娠していなかったから」
「はあ?」
「今ね、生理が来ちゃった」
それだけ言うと結菜は玄関を出ていった。
「な、なんだそれ……」嬉しいはずなのに、戸惑いの感情が胸の中を這いずり回っているような変な感覚がした。
「なんだよ、もう」
その時、西山の背中から満里奈の腕が回ってきた。
「西山さん、返事をくれる?」
「返事?」
「私と結婚を前提に交際をしない?」
西山の背中に満里奈の柔らかい胸があたり、体が熱くなる。
「ねぇ、梅沢さんとはもう終わったじゃない。今度は私と、ね?」
(精神異常者から精神異常者へ……でも葉山さんのほうが、結菜に比べれば全然ありかもしれない)
そう思った瞬間、西山は満里奈に向き直ると、熱い口づけを交わしていた。
唇を離し、見つめ合いながら二人は、寝室へと入っていった。
「大丈夫かな?彼女」西山が心配して満里奈に聞いてみる。
「大丈夫でしょう、人間って、なかなか死なないから」
「でも、病院に連れて行った方がいいんじゃないのか?」
「そんなことより西山さん、あなた、この子と結婚するの?」
「いや、できれば結婚したくないんだが。だって、君も見ただろう?彼女、二重人格だよ?あの、詩織っていう子はやばいよ。あんなのと一緒に暮らしてたら、いつか本当に殺されちゃうよ」
「そう、それじゃあ私とは?私とは嫌?」
西山は正直迷っていた。本性丸出しの満里奈は色気があり、普段の真面目な満里奈とのギャップがあって、とても新鮮に思えたのだ。ただ一つ心配なのは、人の頭を平気でフライパンで叩く、暴力的なところが恐ろしかった。
結菜と結婚すると、いつ詩織が飛び出してくるかわからない。包丁をちらつかすような女だ。
だが満里奈も大概に恐ろしい。どちらを選んでも、西山にとって、身近に恐怖が付きまとう。
その時、結菜が意識を取り戻した。ゆっくり起き上がるとお腹をさすりながら、「トイレ、どこ?」と満里奈に尋ねた。
満里奈が指を差すと、結菜は無言でトイレに入っていった。
西山の脳裏に結菜のお腹の子供が引っかかる。
「大丈夫かな、彼女、お腹に子供がいるんだけど」
「……」
トイレの水が流れる音がした。そしてしばらくしてから結菜が出てきた。
「私、もう帰るから」そう言って玄関へ向かった。
結菜の体調が気になった西山が、声をかける。
「梅沢さん、お腹は大丈夫なのか?妊娠しているんだろう?」
「え?ああ、それなら大丈夫よ、もう」
「え?」
「私、妊娠していなかったから」
「はあ?」
「今ね、生理が来ちゃった」
それだけ言うと結菜は玄関を出ていった。
「な、なんだそれ……」嬉しいはずなのに、戸惑いの感情が胸の中を這いずり回っているような変な感覚がした。
「なんだよ、もう」
その時、西山の背中から満里奈の腕が回ってきた。
「西山さん、返事をくれる?」
「返事?」
「私と結婚を前提に交際をしない?」
西山の背中に満里奈の柔らかい胸があたり、体が熱くなる。
「ねぇ、梅沢さんとはもう終わったじゃない。今度は私と、ね?」
(精神異常者から精神異常者へ……でも葉山さんのほうが、結菜に比べれば全然ありかもしれない)
そう思った瞬間、西山は満里奈に向き直ると、熱い口づけを交わしていた。
唇を離し、見つめ合いながら二人は、寝室へと入っていった。
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