《完結》異常な女に好かれた男

ぜらちん黒糖

文字の大きさ
10 / 11

⑩地獄の二択

しおりを挟む
結菜は床に寝かされ、頭には枕を敷いて体に毛布をかけられていた。

「大丈夫かな?彼女」西山が心配して満里奈に聞いてみる。

「大丈夫でしょう、人間って、なかなか死なないから」

「でも、病院に連れて行った方がいいんじゃないのか?」

「そんなことより西山さん、あなた、この子と結婚するの?」

「いや、できれば結婚したくないんだが。だって、君も見ただろう?彼女、二重人格だよ?あの、詩織っていう子はやばいよ。あんなのと一緒に暮らしてたら、いつか本当に殺されちゃうよ」

「そう、それじゃあ私とは?私とは嫌?」

西山は正直迷っていた。本性丸出しの満里奈は色気があり、普段の真面目な満里奈とのギャップがあって、とても新鮮に思えたのだ。ただ一つ心配なのは、人の頭を平気でフライパンで叩く、暴力的なところが恐ろしかった。

結菜と結婚すると、いつ詩織が飛び出してくるかわからない。包丁をちらつかすような女だ。

だが満里奈も大概に恐ろしい。どちらを選んでも、西山にとって、身近に恐怖が付きまとう。

その時、結菜が意識を取り戻した。ゆっくり起き上がるとお腹をさすりながら、「トイレ、どこ?」と満里奈に尋ねた。

満里奈が指を差すと、結菜は無言でトイレに入っていった。

西山の脳裏に結菜のお腹の子供が引っかかる。

「大丈夫かな、彼女、お腹に子供がいるんだけど」

「……」

トイレの水が流れる音がした。そしてしばらくしてから結菜が出てきた。

「私、もう帰るから」そう言って玄関へ向かった。

結菜の体調が気になった西山が、声をかける。

「梅沢さん、お腹は大丈夫なのか?妊娠しているんだろう?」

「え?ああ、それなら大丈夫よ、もう」

「え?」

「私、妊娠していなかったから」

「はあ?」

「今ね、生理が来ちゃった」

それだけ言うと結菜は玄関を出ていった。

「な、なんだそれ……」嬉しいはずなのに、戸惑いの感情が胸の中を這いずり回っているような変な感覚がした。

「なんだよ、もう」

その時、西山の背中から満里奈の腕が回ってきた。

「西山さん、返事をくれる?」

「返事?」

「私と結婚を前提に交際をしない?」

西山の背中に満里奈の柔らかい胸があたり、体が熱くなる。

「ねぇ、梅沢さんとはもう終わったじゃない。今度は私と、ね?」

(精神異常者から精神異常者へ……でも葉山さんのほうが、結菜に比べれば全然ありかもしれない)

そう思った瞬間、西山は満里奈に向き直ると、熱い口づけを交わしていた。

唇を離し、見つめ合いながら二人は、寝室へと入っていった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...