2 / 9
②レオンの想い
しおりを挟む
「あっ!」
マリカは目を丸くした。
予測していなかったそのキスは、濃厚で、情熱的で、いつもよりもずっと激しかった。
レオンにとって、マリカは初恋の人だった。ずっと、ずっと、この時を夢見ていたのだ。
「愛してる、マリカ……」
その言葉は、彼の心の奥底から湧き上がってきた。自然と、熱いものが頬を伝い落ちる。
「どうしたのよ、コーネル。今日のあなたはなんだか変よ? 大丈夫?」
マリカは心配そうにレオンの顔を覗き込んだ。
彼の瞳に涙が浮かんでいるのを見て、さらに不安が募る。
レオンはマリカからそっと離れると、「後でマリカに話すことがある」とだけ告げ、足早に風呂場へ向かった。
体を洗い終え、湯船に浸かるレオンの心は乱れていた。
そして大きくため息をつく。
(はーっ!いくら外見はコーネルでも、中身が別人格じゃ、彼女を混乱させ、傷つけるだけかもしれないな……)
(今、ここで全てを話すのは、あまりにも無謀だ。今日は、この幸せな時間をもう少しだけ堪能しよう)
そう心に決めると、彼は湯船から上がった。
風呂から上がり食卓へ向かうと、テーブルの上には温かい食事が並び、マリカが待っていた。
食事が始まると、マリカが神妙な顔で尋ねてくる。
「私に話ってなに?」
レオンは一瞬躊躇したが、やはり真実を話す勇気はなかった。代わりに、当たり障りのない、しかし彼にとっては真実の言葉を口にする。
「実は……マリカは俺の初恋の人なんだ」
マリカは小さく笑った。
「知ってるけど?」
「え?」レオンは目を丸くした。
「私が本屋さんで立ち読みをしていたら、あなたが一目惚れしたんでしょ? コーネル、あなた、何度もその話を私にしてくれたじゃない」
(あれ?……知ってたのか!?)
唖然とするレオンにマリカが話しかける。
「本当に大丈夫?今日はやっぱり変よ?」
「……」
(コーネルの奴、俺の初恋の思い出をちゃんとマリカに伝えてくれていたんだな……あいつなりに、俺の想いを大切にしてくれていたのか……)
マリカは箸を置いて、心配そうにレオンの額に手を当てた。
「頭、大丈夫?どこかぶつけたんじゃないの?熱はないみたいだけど……」
「うん、今日、図書館で本棚から分厚い本が落ちて俺の頭に当たったんだ」
「それだわ! 明日になっても記憶がおかしかったり、体調が悪かったら必ず病院へ行ってね?」
「……うん、わかった」
レオンは、目の前にいるマリカの顔をじっと見つめながら食事をした。
レオン にとってマリカの柔らかな表情、優しい眼差し、その全てが愛おしかった。
「ねえ、なんで私の顔を見ながら食事をするの? なんだか見られていると食べにくいんだけど」
マリカは少し照れたように言った。
「我慢してくれ、マリカ。今日の俺は、頭が少しおかしいんだ。ただ、君を見ていたいだけなんだ」
「まあ……いいけど。コーネルの表情、なんか嬉しそうだもんね」
マリカはくすりと笑い、再び食事に集中した。二人はなぜか見つめ合いながら、奇妙だが幸せな時間を過ごした。
食事が終わると、マリカは食器を片付け始める。
一つ一つ丁寧に食器を洗い、隣ではレオンが食器を濯いで水が切れると布巾で拭いた。
手際の良い連携作業で、後片付けも終わり、二人はリビングで温かいお茶を飲みながら、まったりとくつろいでいた。
「ありがとう、手伝ってくれて。今日のコーネルはなんだかマメね」
マリカの言葉に、レオンは穏やかな笑みを返す。
「気にするな。今日の俺は頭が少しおかしいんだ」
マリカはくすっと笑った。
「なんだか、私、今とっても幸せな気分。いつものコーネルと、ちょっと違うけど」
「俺も幸せだ、マリカ……」
沈黙が訪れる。それは、二人の間に流れる穏やかな愛情に満ちた時間だった。
「じゃあ、私はお風呂に入ってくるね」
「あ、ああ、いってらっしゃい」
「ぷぷっ!はーい、行ってきます」
マリカはお風呂場へ行った。
レオンは顔を赤らめ、
「何が行ってらっしゃいだよ!あー恥ずかしい!」
そう言うと両手で顔を抑えた。
夜、寝室。
石鹸の匂いを漂わせて、隣のベッドで眠るマリカ。
レオンは勇気を出して腕を伸ばした。
しかし、レオンの指先がマリカの肩に触れるか触れないかのところで、彼女が寝返りを打った。
「頭に本をぶつけた人が、そんなことして興奮しちゃ駄目でしょ……」
マリカはレオンの気配だけで気づいたのか、囁くように呟いた。
レオンは苦笑した。
だが、大好きなマリカが隣で、穏やかに寝息を立てている、それだけで、十分すぎるほどの幸せだった。
レオンは静かに潜在意識の中に潜り込む。そこでは、今か今かと順番待ちしていたリアナに語りかける。
「よう、またせたな」
「あなた、もういいの? 一つになれなかったんでしょ?」
リアナの声には、わずかな心配と、そして諦めが混じっていた。
「ああ、でもマリカの側にいられて嬉しかった。それだけで満足だ」
「そう、それじゃ次は私ね」
レオンの意識が薄れていく。彼の気配が消え、意識はコーネルが閉じ込められている潜在意識の部屋へと移動した。
椅子に縛り付けられているコーネルに向かって、レオンは穏やかな声で語りかけた。
「コーネル、お前、マリカに俺の初恋の場面を教えてくれていたんだな。ありがとうよ」
コーネルは驚いたようにレオンを見つめた。
「想いを遂げられたのか?」
「いや、だけど、マリカの隣で寝ることができた。キスもできたし、それだけでいい。それに、俺がマリカと一つになるのはおかしいと思う。マリカにすれば俺は他人だからな。」
「レオン……」
レオンの体が、半透明になり始める。
「……俺、意識が……そろそろ遠のきそうだ……」
「レオン!」コーネルは声を上げた。
「今、オネエが行ってるから、オネエの思いを遂げさせてやってくれ。きっと、あいつなら……」
レオンは、コーネルを縛っていた縄をゆっくりとほどいてやった。
「じゃあな……コーネル……」
その言葉を最後に、レオンの姿は完全に消え去った。
夜が明け、ベッドで眠るリアナはゆっくりと目を開けた。隣にはマリカが穏やかな寝息を立てて眠っている。
外はもう明るんでいた。
リアナはマリカを起こさないように、そっとベッドから抜け出した。そして、寝室の大きな鏡に映る自分(コーネルの体)をじっと見つめた。
その表情は、どこか楽しげで、そして、これから始まる新しい一日への期待に満ちていた。静かに着替えを済ませると、リアナはそっとベッドから出て寝室を出て行った。
マリカは目を丸くした。
予測していなかったそのキスは、濃厚で、情熱的で、いつもよりもずっと激しかった。
レオンにとって、マリカは初恋の人だった。ずっと、ずっと、この時を夢見ていたのだ。
「愛してる、マリカ……」
その言葉は、彼の心の奥底から湧き上がってきた。自然と、熱いものが頬を伝い落ちる。
「どうしたのよ、コーネル。今日のあなたはなんだか変よ? 大丈夫?」
マリカは心配そうにレオンの顔を覗き込んだ。
彼の瞳に涙が浮かんでいるのを見て、さらに不安が募る。
レオンはマリカからそっと離れると、「後でマリカに話すことがある」とだけ告げ、足早に風呂場へ向かった。
体を洗い終え、湯船に浸かるレオンの心は乱れていた。
そして大きくため息をつく。
(はーっ!いくら外見はコーネルでも、中身が別人格じゃ、彼女を混乱させ、傷つけるだけかもしれないな……)
(今、ここで全てを話すのは、あまりにも無謀だ。今日は、この幸せな時間をもう少しだけ堪能しよう)
そう心に決めると、彼は湯船から上がった。
風呂から上がり食卓へ向かうと、テーブルの上には温かい食事が並び、マリカが待っていた。
食事が始まると、マリカが神妙な顔で尋ねてくる。
「私に話ってなに?」
レオンは一瞬躊躇したが、やはり真実を話す勇気はなかった。代わりに、当たり障りのない、しかし彼にとっては真実の言葉を口にする。
「実は……マリカは俺の初恋の人なんだ」
マリカは小さく笑った。
「知ってるけど?」
「え?」レオンは目を丸くした。
「私が本屋さんで立ち読みをしていたら、あなたが一目惚れしたんでしょ? コーネル、あなた、何度もその話を私にしてくれたじゃない」
(あれ?……知ってたのか!?)
唖然とするレオンにマリカが話しかける。
「本当に大丈夫?今日はやっぱり変よ?」
「……」
(コーネルの奴、俺の初恋の思い出をちゃんとマリカに伝えてくれていたんだな……あいつなりに、俺の想いを大切にしてくれていたのか……)
マリカは箸を置いて、心配そうにレオンの額に手を当てた。
「頭、大丈夫?どこかぶつけたんじゃないの?熱はないみたいだけど……」
「うん、今日、図書館で本棚から分厚い本が落ちて俺の頭に当たったんだ」
「それだわ! 明日になっても記憶がおかしかったり、体調が悪かったら必ず病院へ行ってね?」
「……うん、わかった」
レオンは、目の前にいるマリカの顔をじっと見つめながら食事をした。
レオン にとってマリカの柔らかな表情、優しい眼差し、その全てが愛おしかった。
「ねえ、なんで私の顔を見ながら食事をするの? なんだか見られていると食べにくいんだけど」
マリカは少し照れたように言った。
「我慢してくれ、マリカ。今日の俺は、頭が少しおかしいんだ。ただ、君を見ていたいだけなんだ」
「まあ……いいけど。コーネルの表情、なんか嬉しそうだもんね」
マリカはくすりと笑い、再び食事に集中した。二人はなぜか見つめ合いながら、奇妙だが幸せな時間を過ごした。
食事が終わると、マリカは食器を片付け始める。
一つ一つ丁寧に食器を洗い、隣ではレオンが食器を濯いで水が切れると布巾で拭いた。
手際の良い連携作業で、後片付けも終わり、二人はリビングで温かいお茶を飲みながら、まったりとくつろいでいた。
「ありがとう、手伝ってくれて。今日のコーネルはなんだかマメね」
マリカの言葉に、レオンは穏やかな笑みを返す。
「気にするな。今日の俺は頭が少しおかしいんだ」
マリカはくすっと笑った。
「なんだか、私、今とっても幸せな気分。いつものコーネルと、ちょっと違うけど」
「俺も幸せだ、マリカ……」
沈黙が訪れる。それは、二人の間に流れる穏やかな愛情に満ちた時間だった。
「じゃあ、私はお風呂に入ってくるね」
「あ、ああ、いってらっしゃい」
「ぷぷっ!はーい、行ってきます」
マリカはお風呂場へ行った。
レオンは顔を赤らめ、
「何が行ってらっしゃいだよ!あー恥ずかしい!」
そう言うと両手で顔を抑えた。
夜、寝室。
石鹸の匂いを漂わせて、隣のベッドで眠るマリカ。
レオンは勇気を出して腕を伸ばした。
しかし、レオンの指先がマリカの肩に触れるか触れないかのところで、彼女が寝返りを打った。
「頭に本をぶつけた人が、そんなことして興奮しちゃ駄目でしょ……」
マリカはレオンの気配だけで気づいたのか、囁くように呟いた。
レオンは苦笑した。
だが、大好きなマリカが隣で、穏やかに寝息を立てている、それだけで、十分すぎるほどの幸せだった。
レオンは静かに潜在意識の中に潜り込む。そこでは、今か今かと順番待ちしていたリアナに語りかける。
「よう、またせたな」
「あなた、もういいの? 一つになれなかったんでしょ?」
リアナの声には、わずかな心配と、そして諦めが混じっていた。
「ああ、でもマリカの側にいられて嬉しかった。それだけで満足だ」
「そう、それじゃ次は私ね」
レオンの意識が薄れていく。彼の気配が消え、意識はコーネルが閉じ込められている潜在意識の部屋へと移動した。
椅子に縛り付けられているコーネルに向かって、レオンは穏やかな声で語りかけた。
「コーネル、お前、マリカに俺の初恋の場面を教えてくれていたんだな。ありがとうよ」
コーネルは驚いたようにレオンを見つめた。
「想いを遂げられたのか?」
「いや、だけど、マリカの隣で寝ることができた。キスもできたし、それだけでいい。それに、俺がマリカと一つになるのはおかしいと思う。マリカにすれば俺は他人だからな。」
「レオン……」
レオンの体が、半透明になり始める。
「……俺、意識が……そろそろ遠のきそうだ……」
「レオン!」コーネルは声を上げた。
「今、オネエが行ってるから、オネエの思いを遂げさせてやってくれ。きっと、あいつなら……」
レオンは、コーネルを縛っていた縄をゆっくりとほどいてやった。
「じゃあな……コーネル……」
その言葉を最後に、レオンの姿は完全に消え去った。
夜が明け、ベッドで眠るリアナはゆっくりと目を開けた。隣にはマリカが穏やかな寝息を立てて眠っている。
外はもう明るんでいた。
リアナはマリカを起こさないように、そっとベッドから抜け出した。そして、寝室の大きな鏡に映る自分(コーネルの体)をじっと見つめた。
その表情は、どこか楽しげで、そして、これから始まる新しい一日への期待に満ちていた。静かに着替えを済ませると、リアナはそっとベッドから出て寝室を出て行った。
1
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる