《完結》転生したら女から男になっていました♥

ぜらちん黒糖

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第四章

⑳メースの前世

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 馬車から降りる四人

 先にマリオとメースが降りて、ミシェルとフローリアが降りる。

 すぐにマリオはミシェルの手をエスコートし、メースもフローリアをエスコートした。

「懐かしい」メースがつぶやいた。

「ほんとだね」マリオはミシェルと手をつなぎ、懐かしそうに眺めている。

「では入ろうか」

 メースが先頭で歩き出し、玄関扉の前で立ち止まる。

「確か前回は、後ろを振り向くと誰もついて来ていなかったんだっけ」

 メースが後ろを振り向くと、そこには誰もいなかった。

「え?」

 焦るメース。

「何?どうして誰もいないんだ?」

 馬車はちゃんと止まっているのにマリオとミシェルがいない。フローリアもいない。

「ははーん、わかったぞ」

 ゆっくりと馬車のところまで歩いて行くと、

「なんだよ~、また?もう俺もいい年なんだから、驚かないよ。さあ、早く出て来いよ」

 そう言って馬車の中を覗き込む。

「……」

 馬車の下も見てみたが、誰もいない。

「どうなっているんだ?いったい」

 その時、誰かがメースを呼ぶ声がした。

 意識が段々と遠のいていくメース。そして膝から崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ。


 メースが目を覚ますと、何やら景色が変だった。なんだろう、この狭い部屋は…でも見覚えがある。

 洗面所があるのに気づき、行ってみる。大きな鏡が壁にはまっていて、見覚えのある姿が映った。

 その瞬間、メースの頭の中は渦が巻くようにぐるぐると回って、ゆらゆらと、脳が揺れる感じがしたのが止まると、全てを思い出していた。

 じっと自分が映っている鏡を見ながら、

「思い出したわ、全部」

 鏡には女の姿が映っていた。

「私は田島沙織」

 急いで今日の日付を知りたいと思った沙織はベッドに目をやる。

「あった」

 スマホを手に取りカレンダーを開く。

「今日は、正彦とのデートの日だわ。急がなくちゃ」

 沙織は急いで出かける支度をして、部屋を後にした。

 通りに出てタクシーを拾うと、待ち合わせのホテルへと向かった。

 ホテルに入ると、ロビーの待合席で正彦がこちらを見て手を振っている。

「待った?」

「いや、今きたところさ」

 なぜか今日の正彦は自信に満ちて見える。

 〘まさか、チェリーボーイを卒業したんじゃないでしょうね〙

 高層階ホテルのレストランの窓際に座る二人。

 ワインを飲みながら、ほろ酔い気分になり、沙織は正彦に聞いてみる。

「ねえ、どうしたの?」

「何が?」

「今日の正彦は、なんだか自信に満ち溢れた顔をしているわ」

「ふふふ、その通り。今の俺に怖い物はない」

「まあ、どういう風の吹き回し?」

「え?」

「この前はホテルへ入ろうって言ったら逃げたくせに」

 〘そうだわ、このあと正彦はカッコつけてカードキーを取り出すのよ〙

 正彦はカードキーを指に挟んで、自信満々の顔で、

「部屋は取ってある。泊まって行くだろう?」

 〘そうよ、そして私が、ええ、もちろんって、答えるの〙

「ええ、もちろん」

 二人はエレベーター乗り場へ向かった。

 そして、エレベーターのドアの前に立つ。

 〘駄目、駄目よ!このエレベーターに乗っちゃ駄目!〙

 だが正彦はボタンを押して扉が開くと足を踏み入れた。

「正彦!危ない!」

 正彦の足元にあるはずのエレベーターがなかったのだ。

「沙織ーーー…………」

「正彦ーーー!」



 ああ、全てを思い出したわ。そして私が死んだ理由も……

 私は、正彦が亡くなった後、駅の階段を踏みそこねて、そのまま死んだ。

 寝不足で疲れ切っていたの。しかも、長い階段だった。

 私は男に転生していたのね。妻もいるなんて……。メースの記憶が流れ混んでくるわ。はあ……ふふ、マリオのことが好きだったのね。

 その時、肩を叩かれた。振り向くと、占いの店の占い師が立っていた。

「あなたはあの時の占い師……」

「ついて来なさい。正彦に合わせてあげよう」

 沙織はそのまま、その男の後ろをついて行った。占い師が沙織に話しかける。

「ほら、あそこにいるのが正彦だ」

「え?」

 沙織の目の前には見覚えのある、ホテルの一室があった。
 そして部屋の中にはフローリアとマリオがいた。

沙織の姿からメースの姿に戻る。

「あ、そんな……二人が不倫をしていたのか」

「よく見ろ。あの二人はまだ、高等部の学生だ」

「そう言えば、若い」

 洗面所でフローリアとマリオが裸になっていた。

「フローリアの奴、マリオとは何でもないって言ってたのに」

 マリオとフローリアは一緒にお風呂へ入って行った。

 浴槽に浸かる二人。マリオが突然ぞうさんを浮上させて、

「潜水艦」とやって、

 フローリアも真似して

 腰を浮かす。

「たわし」

 爆笑するマリオとフローリア。

 それを見ていたメースは「あの、バカ」とがっくりと俯く。

 二人が会話を始める。

「マリオさん、あなた、前世ではどういう名前だったんですか?」

「真里って言うの」

 マリオも前世があったのか……

「私は正彦って言うの。正しいに、彦左衛門の彦」と、フローリアが言う。

 え?正彦だって?まさか……

 そして二人は洗面所で変身する。

 フローリアは徐々に男の体となり正彦になった。

 フローリアは正彦の生まれ変わりだったのか…

 そしてマリオも男から女性の真里に変身した。

 メースはやっと理解した。あの頃、マリオは女性になって俺に抱かれたがっていた。

 だが、俺が拒否をしたので、前世が男のフローリアと出会い、マリオは結ばれた、ということか。

 占い師が言った。

「当時、フローリアの体は正彦が支配していた。そしてマリオの体は真里が支配していたのだ」

「そして二人は前世の思いを達成して成仏したんだ」

「だから、二人は前世のことも現世で結ばれたことも忘れているんだ」

「ちょっと待って、正彦の望みは沙織と合体することだっだはずだ」いつの間にか沙織から元の自分に戻っていたメースが聞いた。

「ふふふ、その通りだ。だが正彦には秘密があったのだ」

「秘密?」

「正彦は包茎だったんだよ」

「へ?ホーケー?」

「そうだ、正彦はアルバイトで必死でお金をためて、包茎手術を受けたんだ。そしてやっと正常なぞうさんになって、沙織と合体出来ると思った矢先に、亡くなった。」

「そうか、ホテルのレストランであんなに自信満々だったわけが、ようやくわかった」

「だから正彦にとって最大の無念は、完全体になったぞうさんで合体することにあったのだ。」

「さて、君とフローリアの間に子供が出来なかった訳を教えよう」

 メースが後ろを振り向くと、占い師の男の他に、もう一人、大鎌を持った黒尽くめの衣装のフードを被った男が立っていた。

 次の瞬間、その男は大鎌を振り下ろした。

 目を瞑って殺されると思ったメース。目を開けると、大鎌を持った男の目の前を、魂がユラユラと浮かんでいた。

 男がメースに質問をする。

「どうだ、スッキリしただろう?これは沙織の魂だ。私が天国へ連れて行く」

「あなたは誰なんですか?」

「私は死神だ。わざわざこんな異世界にまで迷い込んだ魂を迎えに来たんだよ」

「……」

「お前の体に沙織の魂が宿っていた事で、フローリアとの間に子供が出来なかったのだ。お前もマリオやフローリアのように前世の記憶がなくなって、これからは、うまく歯車が回って行くだろう」

 その時、ぷかぷかと浮かんでいた沙織の魂が、メースの頬にスリスリしてきた。

 死神が優しく声をかけた。

「お前にさようならと言っておる」

「そうですか」

 メースが沙織の魂に、

「元気でな」

 そう声をかけると、魂はメースから離れ、死神とともに姿を消した。

 そして、メースの意識も段々となくなっていった。




     
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