92 / 148
第2部2章 草原とヒト
085 ミッション
しおりを挟む
ソの人たちに言わせると「取り戻してきた」、俺たちから見ると「さらってきた」オークの子どもたちは野営地で普通に育てられていた。
彼らも「ソ」だと言うだけあって、接し方も分け隔てがない。
赤ん坊は乳の出る若い女性のところ、それ以外は子どものいない女性のところで育てられているが、基本的にはキャンプの人間全員で育てるという感じである。俺たちのところに来なかったのは「これからたくさん子どもが生まれるだろうから」なのだそうだ。まぁ、何もしていないのに子どもは生まれないんだけどね。
「彼らは大きくなったら、普通にここで子をなし、また育てていくのだそうだ」
小屋の外で座って縄をなう俺の横でチュウジが「聞き取り」と「観察」の結果得られたことを教えてくれる。
ここでいうオークというのはブタ鼻の怪物だったりはしない。
筋骨隆々で灰褐色の肌、耳がやや尖っていて、犬歯が発達している「亜人」だ。
実のところ、耳と犬歯を除けば、ソと大差ない。
耳だって、横にびろんと伸びているわけでもない。日本で彼らと同じ形状の耳を見たとしても特徴的な耳だなと思う程度のものである。犬歯も口から突き出していたりしない。
「要するにソというのは『人間』と『亜人』およびその混血の共同体であって、オークもほぼ同じと言って良いらしい」
当たり前だがここらへんは座学で習わなかったことだ。
「たとえば、彼は『オーク』だ」
遠方で歓談する青年のほうに視線をやってチュウジが言う。
言われてみれば、確かに彼はオークだ。
オークと名前をつけるから、違いが際立って見えただけで、実のところ、少し特徴的な容姿で片付いてしまうレベルでしかないわけだ。
昔、焚き火のそばで教えてもらったこの世界の神話では、亜人はもともと人だったものが姿を変えられたみたいな話だった。
最初に遭遇した「亜人」がゴブリンで容姿がかなり違ったこともあったから、変な固定観念にとらわれていたのかもしれない。
「驚いたか?」
「そりゃ驚く。でもな、この前、ジョクさんが『ソとして育つ』とか言ってたじゃん。あれで俺は納得してしまったわ」
俺は続ける。
「彼らは何をなすかを重視するんだろう。俺たち、ここに来る前は拷問虐殺なんでもござれの審問官様と魔法使い様と一緒だったじゃん。ソはやたらと戦いたがるとこがあるけれど、俺はこっちのほうが居心地がいい」
チュウジは無言でうなずく。
そして、熱心に作っていた人形を近くで遊んでいた子どもたちに与える。
とても美しい光景だ。
人形がどう見ても五寸釘を打ちつけるアレにしか見えないのを除けばだが。
「おい、呪いの座敷童子! お前、いたいけな子どもたちに丑の刻参りでも教えるつもりか?」
「だまるのだ、たわし野郎! いつの日か、ちゃんとした人形を作れるようになるわ!」
「ちゃんとした人形」と言われても、こいつを見ていると、夜中に洋館で血まみれになって踊り狂いそうなフランス人形か髪が伸びて夜に廊下を疾走する日本人形が出来上がる未来しか思いつかない。
そろそろ夏も終わりだ。怪談もそろそろ季節外れだぜ。
◆◆◆
こうして夏はおだやかに過ぎていった。
冬が来て、俺たちは冬のキャンプ地に移動することになった。
しばらくすれば、商人たちがウシの取引にやってくるだろう。
昨年の冬はソのキャンプをたずねる側だったが、今回はソの中で商人たちを出迎える側である。
俺たちも少しウシを売って、穀物や調味料を買おうかと相談している。
「米、持ってきてくれるとありがたいなぁ。なかったら頼もうぜ」
三度の飯より米が好きな俺は米を買いたくてたまらない。
「どれくらいウシを手放すかとかちゃんと考えなきゃね」
ミカがウシの「ミカ」にブラシをかけながら言う。
ソの「成人式」的なもので、俺たちは自分の名前をそれぞれ気に入ったウシにつけた。
これは自分のウシの中でも大切にしないといけない。絶対に売ってはいけない。
自分の分身であり、友であるのだそうだ。
俺たちが死ぬようなことがあったら、彼らがその共をすることになっている。
ちょうどヨルさんが亡くなったときに同じ名前を持つウシを捧げたのと同じだ。
「ミカさーん」
俺はウシの「ミカ」の背中に頬ずりをする。
以前はウシに蹴飛ばされかけた俺だが、最近ではちゃんと世話できるようになっている。
「うっ、くせぇ」
舌でぺろりとやられる。
「失礼しちゃうわね。ねぇ大きなあたし」
ミカはウシのミカをなでると、あっかんべーと舌を出す。
こちらのミカにならぺろりとやられても大歓迎なのに。
「そちらのミカさんも俺をぺろんとやっていただいても……」
俺のほっぺたがつねられて伸びる。
「そんなことしてあげないよっ」
そう言いながら、彼女はウシのミカに舐められたのと反対の頬に軽く口付けをして去っていく。
「あざぁーすっ!」
言ってみるもんだ。心の日記帳にしっかりと書き留めておこう。
◆◆◆
俺たちが冬のキャンプ地に移動してしばらく経った頃、商人たちがやってきた。
ただし、今回はやたらと人数が多い。
家畜取引の一行は往路は穀物や雑貨、装飾品に武具などソがほしがるものを積んでくる。
換金しやすく(家畜に比べれば)かさばらないものを運ぶ往路は復路に比べて危険なので、途中までカステの騎馬隊の護衛がつく。
これは騎馬隊の小遣い稼ぎとウシの値段が高騰しないようにするための政策が入り混じって出来上がった慣習らしい。
盗賊の出そうな地域を抜ける頃には騎馬隊は帰路につき、護衛は俺たちのような探索家またの名を便利屋だけとなる。
したがって、村につくときには馬車1、2両と徒歩の護衛数名になっているはずだ。
それが今回は違う。
そもそも馬車の数からして違うし、騎乗している者もいる。
騎乗している護衛はカステの主流派教会の修道騎士っぽい。サーコートには彼らの好みそうな文言が刺繍されている。
彼らと直接もめたことはないが、彼らに関わりのある人物を思い出すと嫌な気分になる。
馬車の扉が開く。
あいつが出てきたらどうしようとびくっとしたが、ありがたいことにそれはなかった。
ただ、教会関係者らしい。
注意しておくべきなのかどうか迷う。
もちろん、あいつが出てきたら、問答無用で追い出せと忠告に走るんだが、どうしたものか。
「とりあえず様子見をしましょう。私たちは受け入れてもらえていると言っても新参者です。彼らの決定に口を出すような傲慢なことをしてはいけませんしね」
サゴさんが俺の心を読んでいたかのようにつぶやく。
みんなでうなずく。
どちらにせよ、いきなり異教徒討伐に来たとか言い出すわけではないだろう。
万が一そんなことがあったら、商人と一緒に現われるわけはない。
よく見ると、チュオじいさんのところに挨拶に向かっている商人は以前、護衛をしたことのある顔見知りだ。
目が合った気がしたので、頭を下げる。
向こうもおぼえていたのか、東屋での話が終わった後、こちらに寄ってきて驚いた顔で話しかけてくる。
「あんたら、ここで何してるんだい? あたしらより先に出た商人はいないと思ってたんだが……まさか、ここで暮らしてたのかい?」
「まぁ、そのまさかというやつでして……」
サゴさんが額をかきながら答える。
「物好きな人もいたもんだ。そうそう、物好きって言えばね」
ここまで言うと、商人は教会関係者らしき3人の男のもとに走っていく。
彼らとなにか話し、3人を引き連れて戻ってきた。
「ちょうど良かったよ。今回は布教と調査という名目でここにいらした司祭様たちだ」
商人はこう言うと、司祭のほうを向いて話し出す。
「こいつらはね、あたしの護衛をしてくれた探索隊なんですが、なんかここに住み着いているみたいでね。色々顔も聞くだろうし、言葉もあたしたちよりわかるでしょうから、紹介しておきますわ」
商人は俺たちを紹介する。
相手の反応を見る限り、俺たちが彼らの同僚と仕事をした者だということはわかっていないようだ。
まぁ、1審問官の仕事を手伝った外部の人間とか知るわけ無いだろう。
教えたってデメリットだけでなんのメリットもなさそうなので触れないでおく。
「ベルマンと申します。よろしくお願いします」
3人はここにいくつかの施設を作って、人々の生活を助けながら布教に励むのだそうだ。
「ミッション系学校がここにもできちゃったりして」
ミッション系女子校出身のミカがつぶやく。
「教育と医療、宣教師のとる常套手段だ」
チュウジがいぶかしげに目を細めて宣教師たちを眺めながら返事をする。普段から悪い目つきがさらに悪くなる。
「宣教師、1549光るザビエルの頭」
ちなみに彼らは禿げているわけでも、剃っているわけでもない。
たとえ、くだらない冗談であっても、不意の一撃は効果がある。
サチさんがこらえきれずに吹き出すと、俺のほうを向いて「ごめんなさい」と言う。俺のほうを向いているが、その言葉は俺に向けられたものではない。
背後に気配を殺して忍び寄ってきたサゴさんは後ろから俺の頭をつかむと頭頂部にカミソリを押し当てた。……あなたはどうして今カミソリ持ってるんですか?
「君もトンスラにしてあげましょうか?」
ミカがゴーサインを出し、俺の頭頂部の髪の毛がなくなる感触がする。
「『君も』って……サゴさんはトンスラじゃなくて、ハ……」
俺のトンスラは広がった。肌が荒れるから、せめてもっと優しく剃って……。
「あんまりネタにしてたら、バチがあたるからね」
後でキレイな丸刈りにしてあげるからとミカが笑っていう。
こうして、冬の野営地にミッションがやってきて、俺は青々とした頭になった。
夜風が涼しい。
彼らも「ソ」だと言うだけあって、接し方も分け隔てがない。
赤ん坊は乳の出る若い女性のところ、それ以外は子どものいない女性のところで育てられているが、基本的にはキャンプの人間全員で育てるという感じである。俺たちのところに来なかったのは「これからたくさん子どもが生まれるだろうから」なのだそうだ。まぁ、何もしていないのに子どもは生まれないんだけどね。
「彼らは大きくなったら、普通にここで子をなし、また育てていくのだそうだ」
小屋の外で座って縄をなう俺の横でチュウジが「聞き取り」と「観察」の結果得られたことを教えてくれる。
ここでいうオークというのはブタ鼻の怪物だったりはしない。
筋骨隆々で灰褐色の肌、耳がやや尖っていて、犬歯が発達している「亜人」だ。
実のところ、耳と犬歯を除けば、ソと大差ない。
耳だって、横にびろんと伸びているわけでもない。日本で彼らと同じ形状の耳を見たとしても特徴的な耳だなと思う程度のものである。犬歯も口から突き出していたりしない。
「要するにソというのは『人間』と『亜人』およびその混血の共同体であって、オークもほぼ同じと言って良いらしい」
当たり前だがここらへんは座学で習わなかったことだ。
「たとえば、彼は『オーク』だ」
遠方で歓談する青年のほうに視線をやってチュウジが言う。
言われてみれば、確かに彼はオークだ。
オークと名前をつけるから、違いが際立って見えただけで、実のところ、少し特徴的な容姿で片付いてしまうレベルでしかないわけだ。
昔、焚き火のそばで教えてもらったこの世界の神話では、亜人はもともと人だったものが姿を変えられたみたいな話だった。
最初に遭遇した「亜人」がゴブリンで容姿がかなり違ったこともあったから、変な固定観念にとらわれていたのかもしれない。
「驚いたか?」
「そりゃ驚く。でもな、この前、ジョクさんが『ソとして育つ』とか言ってたじゃん。あれで俺は納得してしまったわ」
俺は続ける。
「彼らは何をなすかを重視するんだろう。俺たち、ここに来る前は拷問虐殺なんでもござれの審問官様と魔法使い様と一緒だったじゃん。ソはやたらと戦いたがるとこがあるけれど、俺はこっちのほうが居心地がいい」
チュウジは無言でうなずく。
そして、熱心に作っていた人形を近くで遊んでいた子どもたちに与える。
とても美しい光景だ。
人形がどう見ても五寸釘を打ちつけるアレにしか見えないのを除けばだが。
「おい、呪いの座敷童子! お前、いたいけな子どもたちに丑の刻参りでも教えるつもりか?」
「だまるのだ、たわし野郎! いつの日か、ちゃんとした人形を作れるようになるわ!」
「ちゃんとした人形」と言われても、こいつを見ていると、夜中に洋館で血まみれになって踊り狂いそうなフランス人形か髪が伸びて夜に廊下を疾走する日本人形が出来上がる未来しか思いつかない。
そろそろ夏も終わりだ。怪談もそろそろ季節外れだぜ。
◆◆◆
こうして夏はおだやかに過ぎていった。
冬が来て、俺たちは冬のキャンプ地に移動することになった。
しばらくすれば、商人たちがウシの取引にやってくるだろう。
昨年の冬はソのキャンプをたずねる側だったが、今回はソの中で商人たちを出迎える側である。
俺たちも少しウシを売って、穀物や調味料を買おうかと相談している。
「米、持ってきてくれるとありがたいなぁ。なかったら頼もうぜ」
三度の飯より米が好きな俺は米を買いたくてたまらない。
「どれくらいウシを手放すかとかちゃんと考えなきゃね」
ミカがウシの「ミカ」にブラシをかけながら言う。
ソの「成人式」的なもので、俺たちは自分の名前をそれぞれ気に入ったウシにつけた。
これは自分のウシの中でも大切にしないといけない。絶対に売ってはいけない。
自分の分身であり、友であるのだそうだ。
俺たちが死ぬようなことがあったら、彼らがその共をすることになっている。
ちょうどヨルさんが亡くなったときに同じ名前を持つウシを捧げたのと同じだ。
「ミカさーん」
俺はウシの「ミカ」の背中に頬ずりをする。
以前はウシに蹴飛ばされかけた俺だが、最近ではちゃんと世話できるようになっている。
「うっ、くせぇ」
舌でぺろりとやられる。
「失礼しちゃうわね。ねぇ大きなあたし」
ミカはウシのミカをなでると、あっかんべーと舌を出す。
こちらのミカにならぺろりとやられても大歓迎なのに。
「そちらのミカさんも俺をぺろんとやっていただいても……」
俺のほっぺたがつねられて伸びる。
「そんなことしてあげないよっ」
そう言いながら、彼女はウシのミカに舐められたのと反対の頬に軽く口付けをして去っていく。
「あざぁーすっ!」
言ってみるもんだ。心の日記帳にしっかりと書き留めておこう。
◆◆◆
俺たちが冬のキャンプ地に移動してしばらく経った頃、商人たちがやってきた。
ただし、今回はやたらと人数が多い。
家畜取引の一行は往路は穀物や雑貨、装飾品に武具などソがほしがるものを積んでくる。
換金しやすく(家畜に比べれば)かさばらないものを運ぶ往路は復路に比べて危険なので、途中までカステの騎馬隊の護衛がつく。
これは騎馬隊の小遣い稼ぎとウシの値段が高騰しないようにするための政策が入り混じって出来上がった慣習らしい。
盗賊の出そうな地域を抜ける頃には騎馬隊は帰路につき、護衛は俺たちのような探索家またの名を便利屋だけとなる。
したがって、村につくときには馬車1、2両と徒歩の護衛数名になっているはずだ。
それが今回は違う。
そもそも馬車の数からして違うし、騎乗している者もいる。
騎乗している護衛はカステの主流派教会の修道騎士っぽい。サーコートには彼らの好みそうな文言が刺繍されている。
彼らと直接もめたことはないが、彼らに関わりのある人物を思い出すと嫌な気分になる。
馬車の扉が開く。
あいつが出てきたらどうしようとびくっとしたが、ありがたいことにそれはなかった。
ただ、教会関係者らしい。
注意しておくべきなのかどうか迷う。
もちろん、あいつが出てきたら、問答無用で追い出せと忠告に走るんだが、どうしたものか。
「とりあえず様子見をしましょう。私たちは受け入れてもらえていると言っても新参者です。彼らの決定に口を出すような傲慢なことをしてはいけませんしね」
サゴさんが俺の心を読んでいたかのようにつぶやく。
みんなでうなずく。
どちらにせよ、いきなり異教徒討伐に来たとか言い出すわけではないだろう。
万が一そんなことがあったら、商人と一緒に現われるわけはない。
よく見ると、チュオじいさんのところに挨拶に向かっている商人は以前、護衛をしたことのある顔見知りだ。
目が合った気がしたので、頭を下げる。
向こうもおぼえていたのか、東屋での話が終わった後、こちらに寄ってきて驚いた顔で話しかけてくる。
「あんたら、ここで何してるんだい? あたしらより先に出た商人はいないと思ってたんだが……まさか、ここで暮らしてたのかい?」
「まぁ、そのまさかというやつでして……」
サゴさんが額をかきながら答える。
「物好きな人もいたもんだ。そうそう、物好きって言えばね」
ここまで言うと、商人は教会関係者らしき3人の男のもとに走っていく。
彼らとなにか話し、3人を引き連れて戻ってきた。
「ちょうど良かったよ。今回は布教と調査という名目でここにいらした司祭様たちだ」
商人はこう言うと、司祭のほうを向いて話し出す。
「こいつらはね、あたしの護衛をしてくれた探索隊なんですが、なんかここに住み着いているみたいでね。色々顔も聞くだろうし、言葉もあたしたちよりわかるでしょうから、紹介しておきますわ」
商人は俺たちを紹介する。
相手の反応を見る限り、俺たちが彼らの同僚と仕事をした者だということはわかっていないようだ。
まぁ、1審問官の仕事を手伝った外部の人間とか知るわけ無いだろう。
教えたってデメリットだけでなんのメリットもなさそうなので触れないでおく。
「ベルマンと申します。よろしくお願いします」
3人はここにいくつかの施設を作って、人々の生活を助けながら布教に励むのだそうだ。
「ミッション系学校がここにもできちゃったりして」
ミッション系女子校出身のミカがつぶやく。
「教育と医療、宣教師のとる常套手段だ」
チュウジがいぶかしげに目を細めて宣教師たちを眺めながら返事をする。普段から悪い目つきがさらに悪くなる。
「宣教師、1549光るザビエルの頭」
ちなみに彼らは禿げているわけでも、剃っているわけでもない。
たとえ、くだらない冗談であっても、不意の一撃は効果がある。
サチさんがこらえきれずに吹き出すと、俺のほうを向いて「ごめんなさい」と言う。俺のほうを向いているが、その言葉は俺に向けられたものではない。
背後に気配を殺して忍び寄ってきたサゴさんは後ろから俺の頭をつかむと頭頂部にカミソリを押し当てた。……あなたはどうして今カミソリ持ってるんですか?
「君もトンスラにしてあげましょうか?」
ミカがゴーサインを出し、俺の頭頂部の髪の毛がなくなる感触がする。
「『君も』って……サゴさんはトンスラじゃなくて、ハ……」
俺のトンスラは広がった。肌が荒れるから、せめてもっと優しく剃って……。
「あんまりネタにしてたら、バチがあたるからね」
後でキレイな丸刈りにしてあげるからとミカが笑っていう。
こうして、冬の野営地にミッションがやってきて、俺は青々とした頭になった。
夜風が涼しい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる