魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

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一章

6、仲間

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「……で、害虫駆除って何すればいいわけ?」

 泣き止んだセドリックに話を振る。

「タナブの森の向こう側に小さい集落があるんだよ。こその畑を荒らす魔物が現れるらしい。追い払おうとした人も何人か殺されたみたいだ」
「マジか」

「ああ。そいつはどうやら森から現れているようで。まあ、簡単な話、その駆除だな」
「え……害虫駆除って、魔物退治!?」

「え? そうだけど、何だと思ったんだよ」
「いや……」

 俺はてっきりGHOSTの敵である魔法騎士連中でも襲うのかと思っていた。本当に慈善事業をしているのかもしれない。

「え? じゃあ、もしかして、魔法騎士がいたから、ヘイルをあの森に召喚したのか?」
「そうだ。見つかって捕まるわけにはいかねえからな。ケルベロスだったら魔法騎士でもすぐに逃げると思ったんだよ。なのに、お前は突っ込んできた……アホか」

「いやあー……ごめん。本気で魔物だと思ったんだよ」
「まあ、それもそうだよな……魔物と獣の違いなんて、人間に有害か無害かの違いだから、基本的には見た目じゃ区別はつかねえ」

「じゃあ、俺を助けたのは本当に殴るためだったわけか?」
「それもあるけど……お前、捨てられてたし。ちょっと情が湧いただけ」

「……俺、別に犬とか猫とかじゃないけど」
「……別にいいだろ」

 セドリックはジンのリングをチラッと見る。ジンもセドリックのリングをチラッと見た。猫のようなドクロが象られていた。可愛いのか気持ち悪いのか訳わからない。

「……そう言えば、お前の名前は?」
「俺はジン」
「ジン、ね。オケ。……じゃあ、どうすっかな」

 セドリックは腕を組む。どうすればいいのか考えているのかもしれない。

「なあ……」
「ん? 何だ?」

「セドリックも犯罪者なのか?」

 変な質問でもしたのか、セドリックは目を瞬かせている。

「そうだけど……? それが?」
「……いや、何でもない」

 何を聞きたいのか、何の答えを求めていたのか、正直わからなかった。ただ、自分がそんな組織にいることが、ちょっと受け入れられないというか、戸惑っていたというのは本当だった。

 魔法騎士になって魔物を多く倒し、犯罪者をも取り締まり、国を平和に導く。それが夢に描いていた自分のなりたい姿だったから。魔法騎士の裏側は汚い部分も多い。派閥の抗争や昇進するために騎士同士が足の引っ張り合いをすることもしばしば。でも、それに目をつむるぐらいなら簡単だった。

 魔法騎士団に捨てられて、この組織に拾われたのは事実だ。でも、割り切れない部分があるのは嘘じゃない。だから、もしかしたら彼が犯罪者じゃないことを期待していたのかもしれない。

 それを察したのかどうなのか知らないが、セドリックがポリポリと頭を掻く。

「GHOSTにいる連中は訳アリばっかりなんだ。……でも、どこにも行き場のない俺たちに居場所を作ってくれたのはハカセで、俺はここにいれてよかったと思っているよ」
「……」

「それに、何が正しいのかっていうのは、自分がわかっていればいい。それがこの国と少しズレていたっていうだけだ。だって王が右だと言えば、それが右になる。それがまかり通っている国だからな。だから、この国は、この世界は、ズレている俺たちに犯罪者というレッテルを貼る。ただ、それだけなんだ」

 セドリックはヘイルをそっと撫でた。

「ジン。GHOSTにいるんなら、あまり他人の事を根ほり葉ほり聞かない方がいいと思うぜ。お前だって聞かれたくないことの一つや二つくらいあるだろ」
「そうだな……失礼だったと思う。……ごめんよ」

「いや、別にいいよ……。でも、俺はお前を殴ったことは謝らないからな。俺の友達が傷つけられたから、その制裁だと思え。だからお前も、お前の正義を貫き通せよ」

「俺の正義……か」

 その言葉を口の中で転がせば、戸惑っていた自分の心に、何か、腑に落ちるものがあった。

 そうだ。どこにいたって俺は俺だ。この世界に俺を認めさせるために、場所や組織は関係ない。だから、このGHOSTにいるというだけで、心まで極悪人にする必要は無いのだ。

 俺の正義は、父さんみたいな悪を叩く英雄だ。その悪は、一体何が悪なのかを、俺が決めればいいだけの話なのだ。

「じゃ、これからは仲間としてよろしく」

 セドリックはジンに向って拳を突き出す。

 彼は召喚獣を大切にする、情に厚い人なのかもしれない。それに彼は人が良さそうだ。

 彼自身も言っていた通り、何らかの犯罪者なのだろう。でも、それがどんな罪であろうと、俺はこの人の中身をきちんと見たいと思った。犯罪歴なんて関係ない。魔法騎士団のように魔力だけで人を判断するような人間にはなりたくないからな。

 まだこの組織にいる人には彼を含め三人しか会っていないが、ここにいる人たちのことをまだ知らないだけで、案外普通の人たちの集まりなのかもしれない(ハカセとエルメスは除く)。
 
 それにもう、仲間だもんな。

「ああ、こちらこそよろしくな」

 こつん、と拳を合わせれば、きらり、とお互いのリングが光った。
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