菊智夕

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「追い込みすぎてる」

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真琴は寝た。

俺の怒りも落ち着いた。

「雨宮。起きてるか」

雨宮がゴロッとこっちに向き直った。

「起きてるよ。てか、真琴とヤらないと眠れないんだよ」

取り敢えず、こいつら何とかせんとな。

「明日から俺は、1週間休暇を取る」

「そんな取れんの?」

「休め休め言われてるしな。仕事も今落ち着いてる。リモートでできることも結構あるし。その間に、お前だけでも何とかするわ」

「何? 何とかって」

「真琴はもう、お前の人形みたいになってるから。多分、元に戻るのにかなりかかる」

「人形って」

「明らかに人形だろ、こんなもん。で、まあ。お前、明日服買って、散髪だ」

「髪、雪人が切ってくれる?」

「まあ、それはいいだろう。何とかなる。最悪、坊主になっとけ」

「ひっでぇ」

いや、お前が一番酷えわ。

「お前ら今日見てて、狂ってんのはよくわかった」

「そぉお?」

「その原因はな、今日見ただけで大きく2つある。1つは、お前ら追い込み過ぎてる。そこだろうな」

「追い込んでる?」

こいつに冷静に話して通じんのか、とは思ったが、話すだけ話さねえと。

「ああ。好きとか何とか、そういうのはよくわかる。けど、それが大きすぎて、追い込み過ぎてる。互いにな」

「そっかなぁ」

「で、2つめは。お前が単純におかしい。性癖的なもんでな」

「えー」

危機感のない雨宮の返事に次第に苛立つ。

「お前、わかってんだろ? このままだとヤバいぞ、マジで」

「そぉお?」

「お前もヤバいって思ったから、真琴連れて俺んとこまで来たんだろうが」

「んー」

「じゃあ、逆に聞くけど。何で、今日急に、俺んとこ来た? しかも、真琴連れて。俺の前で挑発までしやがって」

今殴りてえわ。

「どうだろ。幸せなんだけど、何か俺も真琴もつらいのはあったかも」

「だろ? 何でつらい? 何がつらい?」

苛立ちを抑えているが、畳み掛けてしまうのは仕方がない。

「真琴の顔色が段々悪くなってきたから」

「お前のツラもかなり酷えわ。んで、それは何でなったかわかるか?」

「んー、何でだろ」

「取り敢えずな。お前、一気には変えられんから。まず、食事だけ普通に摂れ」

「食べてるよ?」

「食べ方と飲み方だ。普通に食え。口移しすんな」

「え? ダメなの?」

「ああ、もう、すぐやめろ。明日からやめろ」

「わかった。煙草も?」

「まあ、煙草くらいなら許してやる。栄養に関係ねえし」

急に全部やめさすと反動が怖え。

「わかった」

「あとさっきも言ったけど。真琴との最中に俺の名前は絶対呼ばせんな」

「んー」

「お前も声に出てたぞ。つれえつれえって。悲しそうな声出しやがって」

「気持ちいいのに」

頭が痛え。

「取り敢えず、お前の気持ちいいは一旦捨てろ。俺は気持ち悪いし。お前マジで、性的に倒錯してる」

言いたいこと言わんと。

「えぇ。俺、そんなおかしいの?」

「もう多分、かなり危ない。何なん、お前。人にこう。寝取らせっつうのか? そういう趣味でもあんのか?」

「何、それ?」

「わからんならわからんでいいが。それかお前、ドMだ。何にせよ、名前は禁止な。お前はお前なんだから、お前の名前を呼ばせろ。わかったか」

お前って何回言やあいいんだ。

じゃあ、どこで学んできたのか、問い詰めたくなるのを抑えた。

「俺Mじゃないけど、わかった」

精神的に、テメエはドMなんだよ、馬鹿が。

「これ、今、お前にいろいろ話してんのは。俺は真琴に、昔のように戻って欲しいと思ってるからだ。お前だけなら別に、死のうがどうでもいい」

「うん」

結局はこいつの面倒もみねえとしょうがねえけど。

「せっかく、真琴もお前もいい感じに付き合ってんだろうと思ってたのに、馬鹿が」

「幸せだよ?」

アホが。

「こんな縛りあって幸せじゃねえわ。あと、お前ら。3ヶ月じゃ待婚期間があるから、結婚してねえだろ」

「うん、してない」

「お前が真剣にやらなかったら、もう俺は。俺がどうやってでも真琴と再婚して、お前に会わせないようにするからな」

「それはイヤかな」

「じゃあまず、しばらくは俺の言うことを聞け。急にあれこれ言っても、お前にも真琴にもキツいと思ってる、俺はな」

「うん」

「3つめの問題があるとすれば、お前ら2人とも加減がわかってねえんだよ。なんつうか、他の人間と関わってねえんだろ、どうせ」

「うん、ずっと2人で一緒だったよ」

まあ、そうなんだろ。

「で、お前ら2人とも、特殊っつうか、変な生い立ちだからな。学校にも行ってない。まともな仕事もしてない。人間関係希薄。まあ、そこは追々考えるけど。一先ず、俺が話したいことは話した。まだいろいろあるんだろうけど」

「そんなに変かな?」

無知っつうのは怖え。

「明日からまた話していく。で、お前や真琴が改善していくんだ。明日は真琴置いて服買いに行くぞ。先に髪切るけど」

「真琴置いてくの?」

「真琴は家で1人で過ごさせろ。明日だけでも」

「何で? 俺ら、離れたことないのに」

「ちょっと離れたくらいじゃ死なんから。むしろ、ちょっと別々にいた方がいいわ、お前ら」

「寂しいなぁ」

「子供じゃねえんだから、1日数時間くらい我慢しろ」

「はぁい」

「疲れる。マジで。俺はもう寝るからな。話は終わりだ」

「俺」

「ああ?」

めんどくせえ。

「俺、真琴のこと、大事にしてるんだけどなぁ」

俺は雨宮の言葉にため息をついた。

「肉体的には、ある程度そうかもしれん。けど、精神的には大破壊してる」

「真琴も幸せって言ってたのに」

「あのな。ぶっちゃけた話。お前らは精神病院に入院した方がいいレベルだと思った。真琴は病んでるし。とにかく、話は終わりだ。俺もしばらくまともに寝てねえし、今日はもう寝る。明日また話してやるから、お前も寝ろ。寝れなくても目え瞑って休め」

「うん…おやすみ」

「おやすみ」

何で俺はこんな奴の面倒をみてるんだろうな。

ああ、けど。

いろいろ気がかりながらも、ゆっくり眠れそうだ。

喋り過ぎて疲れた。
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