マガイモノ

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
48 / 203
6

6-6

しおりを挟む
 聖は、髪の乱れるのも構わず頭を抱え、グシャっと大きくかき混ぜる。

 そうして、ギュッと目を閉じた。

(しっかりしろ、御堂聖! ユウと史郎の両方の手を取る事が出来ないから、どっちかを諦めると覚悟したハズだろう? )
今でも、脳裏に刻まれている。

 あの寒々しいゴミ溜めのような部屋で、鎖に繋がれた無残な姿で震えていた、可哀想な我が子を。

 ユウを――必ずこの手で幸せにするのだと、あの時に誓った筈だ。

 時は流れ、ユウはとうに自立して、立派に自分の足で立って生きている。

 それでも……もう自分父親の力は必要ないとしても。

 やはり聖は、どうしてもユウが可愛い。

 少しでもいいから、何かユウの為に力を貸してやりたい。

 これまで蓄えた財産は全てユウに相続させたいし、ユウの歌手としての仕事も、事務所を上げてもっとバックアップしてやりたい。

 今までは他人のフリをしなければならなかったので、自分の力を最大限にしてユウを助けようにも『度を越している』と周囲の反対意見に阻まれてきた。

 だが、堂々と親子の名乗りを上げた以上、もう誰にも遠慮をする必要は無い。

 ジュピタープロダクションも、自身の持ち株を増やして筆頭株主になった今、実質的に聖の会社だ。

 実子である畠山ユウへ、将来この会社を譲渡する事も容易になったワケだ。

 ならばこれからの人生は、ユウの幸せの為だけに使いたい。

 聖はそう決意し、史郎ではなくユウを選んだ。

 本心では、今でも迷う時があるが……だが、ユウの事を別にしても、聖がまっとうな道を歩むもうとするならば、これから先は反社会勢力ヤクザと付き合うわけにはいかない。

 どうあっても、史郎とは別れなければならないのだ。

「――――御堂さん? 」

 真壁は、頭を抱えたまま動きを止めた聖を気掛かりそうに見遣る。

「どうしたんですか? まさか、本当に頭痛でも……」

「いや。大丈夫だ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

翡翠堂の店主

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:163

俺の天使に触れないで  〜隆之と晴の物語〜

BL / 連載中 24h.ポイント:4,948pt お気に入り:1,050

電車の男

BL / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:553

箱入り御曹司はスーツの意味を知らない

BL / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:1,136

ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:64

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:876

今日見た夢とあの日見た夢

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:57

ココア ~僕の同居人はまさかのアイドルだった~

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:64

処理中です...