60 / 203
8
8-3
しおりを挟む
ふと言葉を切ると、一夏はジッと聖を真正面から見据える。
「――――半年前、オヤジの後を追って、Aホテルまで付いて行った」
「……」
「アンタを見た時は驚いたぜ。四十も半ばって聞いていたから、どうせショボいオカマだろうと思っていたのに……」
“傾国の美女と呼ばれ、数多の男を狂わせた”
そんな話は事前に聞いていたが、どうせ尾ひれの付いた眉唾物だと思っていたのに。
今、こうして目の当たりにしても、やはりこの男は誰よりも美しい。
――――いや、それだけではない。
聖には、男の獣性を激しく刺激する何かがある。
この、見るからにプライドの高そうな高嶺の花を、いっそのこと地面に引きずり下ろし無残にへし折って支配下に置きたいと思わせるような……そんな、男の獣めいた本能を揺さぶるような、独特の媚薬のような色香が聖を包むように魅せている。
父親を始め、多くの男達がこの男に血道を上げたというのも納得できる。
だがまさか、自分より一回り以上も歳の離れた相手に、この自分もそんな事を感じるとは。
「……あのオヤジがまさか、四十のオカマ相手にのぼせているなんて冗談だろうと思ってたが……アンタには、そういうジョーシキってのは関係ないんだって思い知ったよ」
「――あまり、褒められている気がしませんね」
「そうか? オレなりに、感心してるんだぜ」
そこでニヤリと笑うと、一夏は組んでいた腕を解いて、一歩聖へ近づいた。
「オレは、お袋を不幸にしたオヤジとアンタに復讐したいと思っている」
「――――だから、あんなでっち上げ記事を作って荒潮に売り込んだんですか? 」
「まぁな」
「……オレに対しては、恨み言を云おうとぶん殴ろうと何だろうと構いやしませんが、息子にだけは手を出さないでもらいたい」
聖の言葉に、一夏は嘲笑うように言い返す。
「――――半年前、オヤジの後を追って、Aホテルまで付いて行った」
「……」
「アンタを見た時は驚いたぜ。四十も半ばって聞いていたから、どうせショボいオカマだろうと思っていたのに……」
“傾国の美女と呼ばれ、数多の男を狂わせた”
そんな話は事前に聞いていたが、どうせ尾ひれの付いた眉唾物だと思っていたのに。
今、こうして目の当たりにしても、やはりこの男は誰よりも美しい。
――――いや、それだけではない。
聖には、男の獣性を激しく刺激する何かがある。
この、見るからにプライドの高そうな高嶺の花を、いっそのこと地面に引きずり下ろし無残にへし折って支配下に置きたいと思わせるような……そんな、男の獣めいた本能を揺さぶるような、独特の媚薬のような色香が聖を包むように魅せている。
父親を始め、多くの男達がこの男に血道を上げたというのも納得できる。
だがまさか、自分より一回り以上も歳の離れた相手に、この自分もそんな事を感じるとは。
「……あのオヤジがまさか、四十のオカマ相手にのぼせているなんて冗談だろうと思ってたが……アンタには、そういうジョーシキってのは関係ないんだって思い知ったよ」
「――あまり、褒められている気がしませんね」
「そうか? オレなりに、感心してるんだぜ」
そこでニヤリと笑うと、一夏は組んでいた腕を解いて、一歩聖へ近づいた。
「オレは、お袋を不幸にしたオヤジとアンタに復讐したいと思っている」
「――――だから、あんなでっち上げ記事を作って荒潮に売り込んだんですか? 」
「まぁな」
「……オレに対しては、恨み言を云おうとぶん殴ろうと何だろうと構いやしませんが、息子にだけは手を出さないでもらいたい」
聖の言葉に、一夏は嘲笑うように言い返す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
43
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる