マガイモノ

亜衣藍

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 ふと言葉を切ると、一夏はジッと聖を真正面から見据える。

「――――半年前、オヤジの後を追って、Aホテルまで付いて行った」

「……」

「アンタを見た時は驚いたぜ。四十も半ばって聞いていたから、どうせショボいオカマだろうと思っていたのに……」


“傾国の美女と呼ばれ、数多の男を狂わせた”


 そんな話は事前に聞いていたが、どうせ尾ひれの付いた眉唾物まゆつばものだと思っていたのに。

 今、こうして目の当たりにしても、やはりこの男御堂聖は誰よりも美しい。

――――いや、それだけではない。

 聖には、男の獣性を激しく刺激する何かがある。

 この、見るからにプライドの高そうな高嶺の花を、いっそのこと地面に引きずり下ろし無残にへし折って支配下に置きたいと思わせるような……そんな、男の獣めいた本能を揺さぶるような、独特の媚薬のような色香が聖を包むように魅せている。

 父親史郎を始め、多くの男達がこの男に血道を上げたというのも納得できる。

 だがまさか、自分より一回り以上も歳の離れた相手に、この自分もそんな事を感じるとは。

「……あのオヤジがまさか、四十のオカマ相手にのぼせているなんて冗談だろうと思ってたが……アンタには、そういうジョーシキってのは関係ないんだって思い知ったよ」

「――あまり、褒められている気がしませんね」

「そうか? オレなりに、感心してるんだぜ」

 そこでニヤリと笑うと、一夏は組んでいた腕を解いて、一歩聖へ近づいた。

「オレは、お袋を不幸にしたオヤジとアンタに復讐したいと思っている」

「――――だから、あんなでっち上げ記事を作って荒潮に売り込んだんですか? 」

「まぁな」

「……オレに対しては、恨み言を云おうとぶん殴ろうと何だろうと構いやしませんが、息子にだけは手を出さないでもらいたい」

 聖の言葉に、一夏は嘲笑うように言い返す。
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