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「こっちは浮気ネタの信憑性を増すために、わざわざお前を楽屋まで運んだけど、ここは本当は完全防音のスタジオ――」
「ああああぁぁ――――! 」
もはや、ユウの耳には何も入らない。
魂を削るような叫び声を上げて、悲痛な苦鳴を繰り返すだけだ。
「クソッ! 何なんだよお前っ!? 予定よりも早くバレちまったから、しょうがなく計画を前倒しで進めたのがマズかったってのか? 」
その後も『ボスにどやされる』だの『タコ殴りにされる』だのブツブツとクウガは言っていたが、轢き付けを起こしたようにビクッと震えて白目を剥くユウの様子に、さすがにこれは本当にマズいと覚悟を決めたらしい。
だがそれは、美央が恐れていた『ナイフで殺傷行動に出る』というものではなかった。
クウガは手にしていたスマホを操作して、件の『ボス』へと連絡を入れたのだ。
「――――あ、オレです。マズい事になっちまいました。ターゲットが……ああ、はい。無傷です。でも……いえ、手は出してませんって。あ、あのそれが――」
だが、電話の向こうでも何事かあったらしい。
クウガは一瞬言葉に詰まりながら、返事をかえす。
「そんなっ! 話が違うじゃないっすか! 」
抗議の声を上げるも、また何ごとか言われたのか、急に焦ったような様子になった。
「――えっ? マジですか? こっちに向かいそうって――わ、分かりました」
そう言って電話を切ると、クウガは慌てた様子で楽屋のセットから飛び出し、すぐに清掃作業道具を積んだ代車を曳いて引き返してきた。
「おい! 二人とも、大人しくこれに乗れ! 」
代車の上に乗せていた、重そうな大型カートンをひょいと持ち上げると、そのカートンの下がくり抜いてあるのが分かった。どうやらユウと美央は、このくり抜いたカートンを被された状態で、カモフラージュしてここまで連れてこられたらしい。
「早くしろ! 」
切羽詰まったような声でクウガはそう命令すると、ナイフを閃かせて脅してきた。
「さっさと乗らないと、マジで顔に傷をつけるぞ……」
だがその声は、正気を取り戻したらしいユウの怒声によってかき消された。
「お前なんか大嫌いだっ! 地獄へ堕ちろ! 」
「ああああぁぁ――――! 」
もはや、ユウの耳には何も入らない。
魂を削るような叫び声を上げて、悲痛な苦鳴を繰り返すだけだ。
「クソッ! 何なんだよお前っ!? 予定よりも早くバレちまったから、しょうがなく計画を前倒しで進めたのがマズかったってのか? 」
その後も『ボスにどやされる』だの『タコ殴りにされる』だのブツブツとクウガは言っていたが、轢き付けを起こしたようにビクッと震えて白目を剥くユウの様子に、さすがにこれは本当にマズいと覚悟を決めたらしい。
だがそれは、美央が恐れていた『ナイフで殺傷行動に出る』というものではなかった。
クウガは手にしていたスマホを操作して、件の『ボス』へと連絡を入れたのだ。
「――――あ、オレです。マズい事になっちまいました。ターゲットが……ああ、はい。無傷です。でも……いえ、手は出してませんって。あ、あのそれが――」
だが、電話の向こうでも何事かあったらしい。
クウガは一瞬言葉に詰まりながら、返事をかえす。
「そんなっ! 話が違うじゃないっすか! 」
抗議の声を上げるも、また何ごとか言われたのか、急に焦ったような様子になった。
「――えっ? マジですか? こっちに向かいそうって――わ、分かりました」
そう言って電話を切ると、クウガは慌てた様子で楽屋のセットから飛び出し、すぐに清掃作業道具を積んだ代車を曳いて引き返してきた。
「おい! 二人とも、大人しくこれに乗れ! 」
代車の上に乗せていた、重そうな大型カートンをひょいと持ち上げると、そのカートンの下がくり抜いてあるのが分かった。どうやらユウと美央は、このくり抜いたカートンを被された状態で、カモフラージュしてここまで連れてこられたらしい。
「早くしろ! 」
切羽詰まったような声でクウガはそう命令すると、ナイフを閃かせて脅してきた。
「さっさと乗らないと、マジで顔に傷をつけるぞ……」
だがその声は、正気を取り戻したらしいユウの怒声によってかき消された。
「お前なんか大嫌いだっ! 地獄へ堕ちろ! 」
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