マガイモノ

亜衣藍

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「クウガ。会長がお前に用があるそうだ」

「はぁ!? 」

「来い」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! ボスに連絡くらいさせて下さいよ! 」

 クウガは泣きそうな声を発しながら、『ボス』に急いで電話を入れる。

 そうして、幸運にも繋がった電話に、息咳き込んで齧りつくように出るが、

「ぼ、ボスっ! ボスっ!! 会長って、ウソですよね!? 」

『――畠山ユウはどうした? 』

「こ、ここにいます。抵抗するもんで、ちょっとヤキをいれて大人しくさせようと……そうしていたら、鈴置さんたちがっ」

『この、ノロマ野郎! 』

 その、押し殺したような怒りの一言だけが発せられ、すぐに電話は切れた。

 一瞬茫然とするクウガであったが、ハッと我に返り、再び電話を入れる。

 だが、もうそれは繋がる事は無かった。

「そ、そんな――――」

 愕然とするクウガを取り囲み、男たちは優しく声を掛ける。

「じゃあ、行くか。本当に、清掃業務の引き上げ時刻だ」

「で、で、でも――」

「――――全員から顔面が変わるまで殴られるのがイヤなら、大人しく付いてくるんだな」

 腹の底がヒヤッとするような声に、クウガは力なく項垂れた。

 その様子を、畳の上に転がされた格好のまま茫然と見上げていた美央は、どうやら自分達は助かったらしいということに思い至り、ホッと息をつく。

「良かった……ユウさん、大丈夫ですか!? 」

 次に美央は、心配げにユウへ視線を向けた。

 あれだけの勢いで二回も蹴られたのだ。どこか痛めていてもおかしくない。

「ユウさん、ユウさんっ」

「……」

 ユウは、無言のまま小さく身体を震わせて、背中を丸め横たわったままだ。

「ユウさん! 」

 すると、あの鈴置という青年が、慌てたように『しっ』と指でジェスチャーをした。
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