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Their circumstances
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容赦なくぶっ掛けられるシャワーに、溺れるかと思った。
そして――――采の事が、初めて怖いと思った。
(今までたくさんケンカしたけど、あんなに真剣に怒っている采を見たのは初めてだったな……)
最初から最後まで、ずっと無言のまま達実を乱暴に洗った采は、なぜかラストに達実の股座を開いて、後孔へ指を突っ込んで洗浄してきた。
何でそんな場所を洗われるのか理由が分からず、とにかく何がなにやら分からなかったが、既に全身が痺れて感覚がなかった達実は、されるがままになってしまった。
『……だ』
(え? )
あの時、采が何か呟いた気もするが、シャワーの水音でよく聞き取れなかった。
そうして洗われた後、そのままバスタオルで包まれて、ベッドへ放り出された次第だ。
「う~……肌がヒリヒリする……」
ボディーブラシでゴシゴシと容赦なく洗われたので、所々紅くなってしまっている。
さすがに股間は手の平で洗われたが――――それにしても乱暴だった。
「わっ! 結構痛そうだね。傷薬も持ってこようか? 」
肩に残った擦過痕に気付き、嘉偉が気遣わしそうに声をかけて来た。
「昨日は、采叔父さんったら怖い顔して凄い怒ってたけど――――達実くん、いつものケンカじゃなかったの? 」
「うん……」
「マジケンカか~……でも、初めてだよね」
「え? 」
「達実くんと采叔父さんがケンカするのはしょっちゅうだけど、本気でケンカしたことなんか無かったじゃない」
嘉偉の指摘に、達実は言葉を失った。
――――本気でケンカしたことがないだって?
そんなことはないはずだ。
達実と采は犬猿の仲で――――顔を見れば、いつもケンカになった。
「僕たち、結構……いつも本気でケンカしていたと思ったけど――――嘉偉にはそう見えなかったの? 」
そう訊ねると、嘉偉はコクリと頷いた。
「うん。だって、采叔父さん空手の有段者だよ? でも達実くんの方が、いっつもケンカしたら優勢だったじゃない。采叔父さん、その度に悔しいような顔しているけど、やっぱり達実くん相手に手加減してるんだろうな~って思ってたよ」
「そう……なんだ」
「うん」
嘉偉はあっけらかんと笑うと、また達実へギュッと抱き付いた。
「ねー、達実くん。僕、今度そっちに遊びに行っていい? 」
「ああ――でも、まだ引っ越したばかりで……なのに法要ってので日本に呼び出されたから、向こうも落ち着いてないんだよな」
ああ、困った。
向こうに独り置いてきた、可愛いオメガである奏も気になる。
でも、采に対するこの胸のモヤモヤも、どうにかしたい。
そして、わざわざ日本まで休暇を潰してやって来たアレンも――――。
(そういえば、アレンにアイスティー……? それを渡されて――そこから記憶が飛んでるんだよな)
こうして今現在、二日酔いでダウンしている事を鑑みるに、どうやらアレンが原因でアルコールを大量摂取してしまったようだ。
(アルコールはダメだって、断ったと思ったけど……僕の記憶違いかな? )
よく考えようとするたびに激しい頭痛が襲い、まともに思考が働かない。
達実は『う~』と唸りながら、ピタリと身体を寄せる嘉偉を見遣った。
「……あのさ、ところで采はどこに行ったんだ? 」
「さぁ? 達実くんをベッドに運んだら『このバカの面倒を見てやってくれ』って言い残して、そのまま車でどっかに行ったよ。自分のマンションに帰ったんじゃないの? 」
嘆息して答えると、次に嘉偉は少し恨めしそうに言う。
「采叔父さん、血は繋がってないっていっても、達実くんは自分の弟なわけじゃないか。でもこんなに痣が出来るくらいに乱暴するなんてヒドイよ」
「うん――」
そして――――采の事が、初めて怖いと思った。
(今までたくさんケンカしたけど、あんなに真剣に怒っている采を見たのは初めてだったな……)
最初から最後まで、ずっと無言のまま達実を乱暴に洗った采は、なぜかラストに達実の股座を開いて、後孔へ指を突っ込んで洗浄してきた。
何でそんな場所を洗われるのか理由が分からず、とにかく何がなにやら分からなかったが、既に全身が痺れて感覚がなかった達実は、されるがままになってしまった。
『……だ』
(え? )
あの時、采が何か呟いた気もするが、シャワーの水音でよく聞き取れなかった。
そうして洗われた後、そのままバスタオルで包まれて、ベッドへ放り出された次第だ。
「う~……肌がヒリヒリする……」
ボディーブラシでゴシゴシと容赦なく洗われたので、所々紅くなってしまっている。
さすがに股間は手の平で洗われたが――――それにしても乱暴だった。
「わっ! 結構痛そうだね。傷薬も持ってこようか? 」
肩に残った擦過痕に気付き、嘉偉が気遣わしそうに声をかけて来た。
「昨日は、采叔父さんったら怖い顔して凄い怒ってたけど――――達実くん、いつものケンカじゃなかったの? 」
「うん……」
「マジケンカか~……でも、初めてだよね」
「え? 」
「達実くんと采叔父さんがケンカするのはしょっちゅうだけど、本気でケンカしたことなんか無かったじゃない」
嘉偉の指摘に、達実は言葉を失った。
――――本気でケンカしたことがないだって?
そんなことはないはずだ。
達実と采は犬猿の仲で――――顔を見れば、いつもケンカになった。
「僕たち、結構……いつも本気でケンカしていたと思ったけど――――嘉偉にはそう見えなかったの? 」
そう訊ねると、嘉偉はコクリと頷いた。
「うん。だって、采叔父さん空手の有段者だよ? でも達実くんの方が、いっつもケンカしたら優勢だったじゃない。采叔父さん、その度に悔しいような顔しているけど、やっぱり達実くん相手に手加減してるんだろうな~って思ってたよ」
「そう……なんだ」
「うん」
嘉偉はあっけらかんと笑うと、また達実へギュッと抱き付いた。
「ねー、達実くん。僕、今度そっちに遊びに行っていい? 」
「ああ――でも、まだ引っ越したばかりで……なのに法要ってので日本に呼び出されたから、向こうも落ち着いてないんだよな」
ああ、困った。
向こうに独り置いてきた、可愛いオメガである奏も気になる。
でも、采に対するこの胸のモヤモヤも、どうにかしたい。
そして、わざわざ日本まで休暇を潰してやって来たアレンも――――。
(そういえば、アレンにアイスティー……? それを渡されて――そこから記憶が飛んでるんだよな)
こうして今現在、二日酔いでダウンしている事を鑑みるに、どうやらアレンが原因でアルコールを大量摂取してしまったようだ。
(アルコールはダメだって、断ったと思ったけど……僕の記憶違いかな? )
よく考えようとするたびに激しい頭痛が襲い、まともに思考が働かない。
達実は『う~』と唸りながら、ピタリと身体を寄せる嘉偉を見遣った。
「……あのさ、ところで采はどこに行ったんだ? 」
「さぁ? 達実くんをベッドに運んだら『このバカの面倒を見てやってくれ』って言い残して、そのまま車でどっかに行ったよ。自分のマンションに帰ったんじゃないの? 」
嘆息して答えると、次に嘉偉は少し恨めしそうに言う。
「采叔父さん、血は繋がってないっていっても、達実くんは自分の弟なわけじゃないか。でもこんなに痣が出来るくらいに乱暴するなんてヒドイよ」
「うん――」
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