ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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Is it the love which isn't achieved?

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 ただとにかく、その時の采は、近寄りがたいくらいに怒りのオーラを放っていた。

『支配者』としてのアルファが本気で怒気を放つと、並のベータやオメガは近寄る事もできない。

 嘉偉は本能的にすっかり委縮してしまい、采に理由を訊くことも出来ずに、そのまま屋敷を立ち去る采を見送ってしまった。

 それは、嘉偉の母である恵美も同様で、普段であれば遠慮なく甥の采を問い詰めるところであろうに、質問もせずに言われるまま達実を預かった次第だ。

 そこから一昼夜経っているワケだが、今日は恵美は、出張で北海道へ行ってしまっている。現在この広い九条邸に留まっているのは、嘉偉と達実と、数人の使用人だけだ。

(僕が、達実くんを守らないと! )

 嘉偉はそう自分に言い聞かせると、意を決して声を上げた。

「待って! 達実くんは、本当に体調がイマイチなんだ。今日だって、無理して采叔父さんのマンションに行って――――そこから帰って来て、こんなに顔色が悪いなんて普通じゃないよ。今朝よりヒドイじゃないか! だから、お客さんには帰ってもらおう! 」

「嘉偉……」

「ね! 僕、達実くんの代わりに、そう言って来てやるよ」

 自分の為に男気を見せる嘉偉を、達実は愛しいものを見つめるように暖かい視線を注ぎ、次にギュッと抱き寄せた。

「ありがとう、嘉偉。僕、いっぱい迷惑かけたのに、優しくしてくれて」

「達実くん……」

(超、良い匂い……本当に大好き)

 嘉偉は、頬を染めて達実に更に抱き付こうとするが、それより先に達実がパッと離れた。

「僕は、大丈夫だよ。とにかく、アレンには訊きたい事があるんだ。向こうから来たなら、ちょうどいい。昨日から起こった事をしっかりと聞いて、抜けている記憶を埋めたいと思っていたんだ」

 もう、そこには迷いはなかった。

 達実は、清廉な精神を持つ潔癖のアルファだ。

 いつまでも、訳の分からない状況で諾々と悩み悶えるような性格ではない。

 白と黒。

 ハッキリと決着をつけなければ、気が済まない!

「僕は、アレンに会うよ」

「達実くん!? で、でも……」

「心配してくれてありがとう。でも、ウジウジといつまでも悩んでいるのは嫌なんだ」

 会って、抜けている記憶と、あのオメガとの関係を問い質す。

 達実は嘉偉へハッキリとそう告げると、キュッと踵を返した。

   ◇

「oh!! タツミ……なんてヒドイ顔色だ! 」

 アレンは達実の顔を見るなり、青い瞳を潤ませて驚きの声を上げた。

「可哀想に……! 滞在用に新しくコテージを借りたんだ。私の主治医も別棟へ呼び寄せてあるから、すぐに行って診てもらおうじゃないか。君も、このままクジョーに居るよりはそっちの方がリラックスできると思うよ」

 言うなり、アレンは達実の手を取って客間から出て行こうとする。

 しかし達実は首を振ると、握られていた手を振り解いた。

「――アレン。僕は君に、訊きたい事があるんだ」

「何だい? 」

「どうして、僕は……君に触られただけで悪寒が走ったんだろうか? 」

 そう呻くように声をもらすと、達実はスッと袖を捲ってみせた。

 そこには、鳥肌の立った達実の腕があった。

「……ねぇ? どうして僕はこうなったんだろう? 僕は、君に触られたくないと、今はそう感じている。身体が拒否をしているんだ」

「タツミ――」

「この原因と、僕が君のホテルに行って――――あんな前後不覚になるくらいに酔っ払った理由が知りたい。……君は、僕に何をしたんだ? 」

 前置きもなく繰り出される達実の追及に、アレンは無言になった。

 しかしそれに構わず、達実は続ける。

「そして、さっきの午前中のこと――」

「午前中? 」

「……僕、采のマンションに行ったんだ。そこで、君と……オメガを見たんだ……」
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