ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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Is it the love which isn't achieved?

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「そうか……あれを見てしまったのか……タツミはBad timingだったね……」

 達実の言葉を真摯に聴く風を装いながら、アレンは内心でクスリと笑う。

(知っているさ。タツミの性格ならば、すぐに自分で解決しようとサイの元を訪れると踏んでいたからね)

 だから、アレンは事前にコンシェルジュを買収したのだ。

 もしも達実がマンションを訪れたならば、采には確認を取らずに通せ、と。

 達実が本当に赤の他人であれば、さすがにアレンの命令であっても、コンシェルジュはその命令に従わなかったであろう。

 だが、達実は采の血縁者だというのは、既にコンシェルジュは承知していた。

 それに『獅子王』の異名を取るアレンの絶対命令には、並のベータでは抗う事はできない。

 だから、コンシェルジュは采に対して後ろめたさを感じたものの、言われるままに達実を采のマンションへと通したのだ。

 してやったりとほくそ笑むアレンに気付かず、達実は必死の形相になって縋り付く。

「なぁ、正直に教えてくれ。昨日、いったい何があったんだ!? どうしてアレンは、あのオメガを連れて采の所に来ていたんだ!? 」

「正直に――」

「ああ。彼が、采の子を宿しているという会話が聞こえて来たけど……どうしてそれを、アレンが? 」

 じっと見つめてくる達実を見返しながら、アレンは、用意していたセリフを口にする。

「君は、日本に滞在するあいだ、私の宿泊するホテルのゲスト用の部屋を利用することになったんだ。そして一息ついたところで、部屋のミニバーで一杯引っ掛けるような流れになって……でも君は、アルコールに弱かったようで……酔い潰れてしまって、それで――」

 と、そこでアレンは口を閉ざした。

 嘘を許さないような達実の綺麗な瞳に、心が揺れる。

(まるでアイギスの瞳だな、タツミ……)

 眩いばかりに清廉潔白で、矮小な自分はどんどん追い詰められそうだ。

 フッと息を吐き、アレンは何かを吹っ切ったように顔を上げた。

「――――タツミ」

「なんだい? 」

「私の借りたコテージへ、来てくれないか」

 改めて真剣な顔になって、アレンは達実に視線を注ぐ。

「どうか、頼む」

「え、なんで……ここじゃあダメな内容なのか? 」

「小さなナイトがさっきからずっと見張っているので、私は気を遣ってしまいそうなんだ」

「ナイト――? 」

 するとアレンはチラリと視線を外し、扉の方を見遣る。

 それに気付き、達実は嘆息した。

「……嘉偉か。あの子は、僕の身体を心配してくれているから……」

「しかしそれでは、私は正直な事は口にできないよ。采と、君の名誉のためにね」

 アレンの言葉に何か感じ取ったか、達実はキリリと眦に力を入れると小さく頷いた。

「――――分かった。君の案内する場所へ行こう」

「ありがとう」

 すると、それまで閉じていた扉が勢いよく放たれた。

「ダメだ! 達実くんは体調が悪いんだから、そんなの許さないよ! 」

「嘉偉……」

「達実くんはずっとここに居て! 」

 嘉偉はそう言うと、自分より一回り大きい、堂々とした体躯のアレンを睨み付ける。

 対するアレンは無言のまま、嘉偉を見下ろすだけだ。

 決して、脅したり怒鳴ったりはしない。

――――だが、あきらかに迫力が違う。

 そもそもベータとアルファでは、レベルが違い過ぎる。

 それでも嘉偉は、委縮して震えそうになる両足に力を入れながら、アレンを糾弾した。

「達実くんがあんなに具合が悪かったのは、あなたが原因だろう! 何だかんだと言い訳する気だろうが、そんなので誤魔化そうったって許さないぞ! 」

「oh……可愛らしいナイトだね、ボーイ? 」

「ぼ、僕は九条嘉偉だ! ボーイじゃない、もう高校生だ! 子供じゃないぞ! 」

 するとアレンは、フッと柔らかい笑みを浮かべた。

「それは失礼した。ミスター・カイ、私はタツミを連れて行くが、何も強引に攫うワケではないので安心したまえ」

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