ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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Is it the love which isn't achieved?

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「でも――」

「私もね、最初は自分に都合よく誤魔化そうと思っていたが――――もう止めることにしたんだよ」

 アレンの立てた最初の予定では、このまま傷心の達実を言葉巧みに口説き、再び酩酊させたうえで確固たる関係・・を結ぶというものだった。


 そう、アレンは、達実の項を噛んで『』の契約を強行するつもりであったのだ。


 きっと達実は、首筋に刻まれた噛み痕に狼狽えて、激しく惑乱するであろうが――――だが、元が純情な達実だ。

 真摯に、これほどにまでに愛しているのだと繰り返し情熱を以ってプロポーズすれば、彼はアレンの愛を受け入れるであろう。

 そう、アレンは確信していた。

 達実は、そういう男だからだ。

 本気の男のまことを捧げられては、余程それがイヤな相手でない限りは、達実は必ず首を縦に振る。

 もちろん、アルファの男同士では、子を生す事は到底不可能だ。

 その奇跡は、あくまでオメガだけに与えられた能力なのだから。

 だから当然、項を噛んだからといって、アルファ同士ではオメガのような『番』とは成らないが、法律上は正式に夫婦と認められる。

 つまり、遣い切れぬほどのアウラ家の莫大な財産は、アレンの伴侶へ渡る事になるのだ。

 通常ならば、その話を聞いただけで世界中のオメガもベータもアルファも目の色を変えて飛びつくだろうが、そんな物には何の意味も無い事はとうに承知している。

 九条凛の遺産に全く興味を示さないように、アレンの持つ莫大な資産にも、達実はなんの興味も持っていない。

 達実の心を射止める為に必要なのは、嘘偽りのない真摯な言葉だけだ。

 “何よりも君こそを愛している”

 彼を手に入れる事の出来る魔法の言葉は、ただそれだけだ。

 余計な小手先は、かえって邪魔だ。

「どうか、お願いだ。決して君に無体な真似などしないと約束をするから――――一緒に来てくれないか。話は、そこで伝えたい」

「……分かった」

「達実くん! 」

「ありがとう、嘉偉。でも僕は、今はアレンと一対一で話がしたいんだ」

 我が身に起こった事もそうだが、それ以上に、采に関することなら尚更だ。


 達実は、真実が知りたい。たとえそれが、どんなに残酷なことでも。


「連れて行ってくれ、アレン」

「thank you」

「達実くん……でも……」

 不安そうな嘉偉を見遣り、達実はニコリと笑う。

「大丈夫だよ、嘉偉。心配してくれてありがとう」

 その、大輪の薔薇の花が艶やかに咲いたような笑みに、嘉偉は言葉を失って見惚れる。




 そうして、二人は伴って九条邸を後にしたのであった。



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