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La Vie en rose
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たとえその後、アレンの気持ちを汲んで求愛を受け入れてくれたとしても、その一番最初の遺恨は決して消えないだろうと思う。
そうなれば二度と、達実はアレンに屈託なく笑いかけなくなるかもしれない。
薔薇の棘で体を覆うように、アレンを受け付けなくなったとしたら――――アレンはそれが、何よりツライ。
達実には、艶やかに華やかに、いつも傍らで笑っていてほしいのだから。
「謝るよ、タツミ。私は君を愛するあまりに、どうしても君を手に入れたくて、危うく一線を超えるところだった」
正直に懺悔するアレンに、達実は戸惑いながらも小さく頷いた。
「……それは、許すよ。結局何もなかったんだろう? 」
それに、過ちを犯しそうになる寸前まで、達実のことを愛しく思っていたと正直に言われては……あまり冷たくもなれない。
我ながら甘いのかもしれないが、ストレートに好意を寄せてくるアレンの事は、嫌いになれそうもなかった。
――――誰もが口をそろえて、達実のことを美しい薔薇のようだと誉めそやす。
これまで、それなりに数多の男女から告白もされた。
しかしここまで、情熱的に愛を口にする男はいなかった。
「酒を飲ませただけで、あとは何もなかったなら――――もう、許してやってもいいよ」
微かに頬を赤くしながら、達実はそう言った。
「ありがとう、タツミ」
その言葉を受け、アレンは、ほうっと安心したように息を吐く。
そんなアレンを見遣りながら、達実はもう一つの疑問を口にした。
「ところで――――何となく思い出したんけど。あのタテだかヨコだかっていうオメガ、アレンのホテルで会ったような気がするんだけど……」
何となく、井戸の底を覗くように、ユラユラとした記憶が頭の底で揺らめいている。
鼓膜を貫くように火災報知器が鳴り響いて、そこから――?
そうだ、たしか立野林檎という名前だった。
ワゴンに載せられて、その一味に連れ出されたような気がする……。
するとアレンは、苦く笑った。
「タツミを抱こうとしてた時に、救出に現れたのが彼らだよ。見事な連携プレーで、彼等はタツミをホテルから連れ出したんだ」
そう言うと、アレンはその状況の詳しい説明をした。
火災報知器が鳴り、その直後に消防が駆け付け――――と思ったら、催涙スプレーを吹き付けられて達実を奪われた顛末を。
アレンはもう隠す気はないので、ありのままを伝えた。
「……そうして君は、救い出されたわけだ」
しかし、こんな真似をした犯人は直ぐに突き止めることが出来る。
ホテル側に内通者がいるのは間違いないのだし、アレンは厳正に処罰を指示しようとしたワケだが、それを先制するように、我こそが犯人だと名乗り出て来たのがあのオメガの立野林檎だったわけだ。
「彼は、『全部自分一人でやった、誰の命令でもない』と言い張っていたが……」
「そんなバカな。僕は、あいつとは一回しか顔を合わせた事がないし、むしろあいつは、敵意を剥き出しに僕のことを見てきたんだ。あいつは――」
「ああ、そうだ。リンゴは采の命令で、君を救い出したんだよ」
林檎は全ての罪を一身に罪を被ろうとしたが、采もまた彼一人に、全ての罪を被せて知らぬ振りを貫くことはしなかった。
知らぬ存ぜぬを押し通して、罪を背負った愛人を切り捨てる事などいくらでも出来たであろうに。
「彼は、私と違って――――存外情の深い男のようだね」
「なぁ、アレン。あいつ……妊娠してるって話は本当なのか? 」
か細い声で訊ねる達実に、アレンは初めて迷うような視線を送った。
当初の謀略では、このまま林檎は采の番に収まり、アレンは傷心の達実を手に入れるという算段だった。
だが――――この計画は、ハッキリ言って無理がある。
それでも、勢い次第ではどうにかなるかもしれない。
とにかくアルファに、オメガの項を噛ませれば番になるのだから。
そう思って、強引に采の元へ押しかけたのだが……。
溜め息をつきながら、アレンは口を開く。
「リンゴは、妊娠は…………していないよ」
「っ!? 」
そうなれば二度と、達実はアレンに屈託なく笑いかけなくなるかもしれない。
薔薇の棘で体を覆うように、アレンを受け付けなくなったとしたら――――アレンはそれが、何よりツライ。
達実には、艶やかに華やかに、いつも傍らで笑っていてほしいのだから。
「謝るよ、タツミ。私は君を愛するあまりに、どうしても君を手に入れたくて、危うく一線を超えるところだった」
正直に懺悔するアレンに、達実は戸惑いながらも小さく頷いた。
「……それは、許すよ。結局何もなかったんだろう? 」
それに、過ちを犯しそうになる寸前まで、達実のことを愛しく思っていたと正直に言われては……あまり冷たくもなれない。
我ながら甘いのかもしれないが、ストレートに好意を寄せてくるアレンの事は、嫌いになれそうもなかった。
――――誰もが口をそろえて、達実のことを美しい薔薇のようだと誉めそやす。
これまで、それなりに数多の男女から告白もされた。
しかしここまで、情熱的に愛を口にする男はいなかった。
「酒を飲ませただけで、あとは何もなかったなら――――もう、許してやってもいいよ」
微かに頬を赤くしながら、達実はそう言った。
「ありがとう、タツミ」
その言葉を受け、アレンは、ほうっと安心したように息を吐く。
そんなアレンを見遣りながら、達実はもう一つの疑問を口にした。
「ところで――――何となく思い出したんけど。あのタテだかヨコだかっていうオメガ、アレンのホテルで会ったような気がするんだけど……」
何となく、井戸の底を覗くように、ユラユラとした記憶が頭の底で揺らめいている。
鼓膜を貫くように火災報知器が鳴り響いて、そこから――?
そうだ、たしか立野林檎という名前だった。
ワゴンに載せられて、その一味に連れ出されたような気がする……。
するとアレンは、苦く笑った。
「タツミを抱こうとしてた時に、救出に現れたのが彼らだよ。見事な連携プレーで、彼等はタツミをホテルから連れ出したんだ」
そう言うと、アレンはその状況の詳しい説明をした。
火災報知器が鳴り、その直後に消防が駆け付け――――と思ったら、催涙スプレーを吹き付けられて達実を奪われた顛末を。
アレンはもう隠す気はないので、ありのままを伝えた。
「……そうして君は、救い出されたわけだ」
しかし、こんな真似をした犯人は直ぐに突き止めることが出来る。
ホテル側に内通者がいるのは間違いないのだし、アレンは厳正に処罰を指示しようとしたワケだが、それを先制するように、我こそが犯人だと名乗り出て来たのがあのオメガの立野林檎だったわけだ。
「彼は、『全部自分一人でやった、誰の命令でもない』と言い張っていたが……」
「そんなバカな。僕は、あいつとは一回しか顔を合わせた事がないし、むしろあいつは、敵意を剥き出しに僕のことを見てきたんだ。あいつは――」
「ああ、そうだ。リンゴは采の命令で、君を救い出したんだよ」
林檎は全ての罪を一身に罪を被ろうとしたが、采もまた彼一人に、全ての罪を被せて知らぬ振りを貫くことはしなかった。
知らぬ存ぜぬを押し通して、罪を背負った愛人を切り捨てる事などいくらでも出来たであろうに。
「彼は、私と違って――――存外情の深い男のようだね」
「なぁ、アレン。あいつ……妊娠してるって話は本当なのか? 」
か細い声で訊ねる達実に、アレンは初めて迷うような視線を送った。
当初の謀略では、このまま林檎は采の番に収まり、アレンは傷心の達実を手に入れるという算段だった。
だが――――この計画は、ハッキリ言って無理がある。
それでも、勢い次第ではどうにかなるかもしれない。
とにかくアルファに、オメガの項を噛ませれば番になるのだから。
そう思って、強引に采の元へ押しかけたのだが……。
溜め息をつきながら、アレンは口を開く。
「リンゴは、妊娠は…………していないよ」
「っ!? 」
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