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ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。
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自棄になっている訳でも、卑下している訳でもなく、林檎は淡々と事実だけを言う。
「だから――――どっかで野垂れ死ぬ前に、運命の番なんて贅沢は言わないが、せめて長く一緒に暮らしていけるくらいのヤツを見つけたいんだよね」
「しかしっ」
「ま、30になっても無理そうだったら、スッパリあきらめるさ。歳食ってまで、いつまでも未練たらしく番を探す気はないしね。そうなったら友達に頼んで、居酒屋のバイトでも紹介してもらおうって思ってるよ」
いっそ清々しく言い放つと、林檎はアレンを見遣る。
「――――采のことは、本気で好きだった。オレは初めて、自分がオメガで良かったと思ったよ。でも、自分の方を見ていない相手を番にするなんてのは、実際は無理なもんなんだな……」
「リンゴ――」
「この林檎様が、そんな甘っちょろい純愛野郎だったなんて、自分でも意外だったよ。経済力のあるアルファなら誰でもいいと思ってたけど……」
ふぅと溜め息をつくと、林檎はニコリと笑った。
「ま、次の恋こそ最後だと思って、ゆっくり捜すさ」
じゃあ、タクシーを呼んでくれよと言う林檎を、アレンはジッと見つめた。
そうして彼は、おもむろに口を開く。
「君は……可愛い部類の容姿ではあるが、だからといって、際立って秀でているとは言えないだろう」
「なんだよ? そんなの、とっくに自覚済みだけど」
ムッとしながら、林檎はアレンを睨む。
だがアレンは、林檎を侮蔑するでもない凪いだ瞳のまま、穏やかな口調で続ける。
「――だが君は、とても強い。こんなに強かなオメガは、初めて見たよ」
今までアレンの周囲にいた、他者に依存する事を第一に考えているような、そんなオメガではない。
林檎は、自分の確固たる『核』を持つ、奇跡のオメガだ――――そう、アレンは思う。
「私は、正直言って……今までずっとオメガを軽蔑していた。カナデ博士が、オメガの発情を100%抑え副作用もなく安価な薬を開発したというのに、それを拒んで相変わらずフェロモンを垂れ流す輩は、最低だと思っていた」
「最低で悪かったな! アンタに迷惑は掛けてないだろう!! 」
カッとする林檎の前で、アレンは…………なんと、深々と頭を下げたのだ!
これには驚いた林檎だが、それ以上に、遠巻きにこちらの様子を伺っていた――――アレンに付き従っていた侍従や秘書、そしてSPはもっと驚いた。
これまでアレンが、誰かに対して、こんなに深々と頭を下げた事など無いからだ。
衆人環視の中、恥じることなく、アレンは謝罪の言葉を口にした。
「――――すまなかった。私が間違っていた」
「いっ……いいよ、そんなの! アンタ以上に、もっと露骨にオレを罵ってきたヤツもいるんだから。一々気にしてないっての! 」
たじろぐ林檎の前で、更にアレンは驚愕の行動に出る。
なんと彼は、その場に屈んで、床に片膝をついたのだ!
驚いた林檎へ向かい、アレンはスッと手を差し伸べる。
「リンゴ、どうかこの私と夕食を共にしてほしい」
「は、はぁ!? 何でだよ? 」
「今回の無礼を詫びたい」
「だから、気にしてねーって」
「……では、言い直そう。どうかこの私の番になって欲しい。もちろん、君がイヤなら諦めるが……」
「嫌だね! 采にはああ言ったけど、オレの本音は、日本語が通じない国には行きたくないんだよ! 」
即座に断った林檎を、またしても愕然とした顔で見上げながら……次に、アレンは相好を崩してスッと立ち上がった。
「ハハハハ! 君は本当にミラクルなオメガだ。私が膝をついて頼んだというのに、それを断るなんて前代未聞の珍事だよ――」
ひとしきり笑うと、アレンはブルーの瞳を輝かせて林檎を見つめる。
「私はこの通り、日本語はペラペラだよ。そこにいる執事も皆、日本語に精通している。アメリカに来ても不自由はしないと思うが……それでもダメかい? 」
「――――それ、本気で言ってんのか? 」
疑り深く言う林檎に苦笑しながら、アレンは頷く。
「信じられないかもしれないが、私が他者に番になってくれとプロポーズしたのは……たったの二回しかないんだ」
「なんだ、じゃあオレは二回目かよ」
「その一回目の相手には、フラれたばかりだ」
「あ……」
達実のことだと察して、林檎は無言になる。
アレンが本気で、本来は恋愛対象にならないはずの、同族であるアルファに恋をしていたのは充分に伝わっていたから……。
「その、まぁお互い、今回は縁が無かったということで……」
「そんな事はない」
「? 」
「私はいま、君に惹かれている。強かで狡猾で、でも清冽な君に。私はこの縁を大事にしたいのだが……リンゴは私の言葉を疑うのかい? 」
この男は、真の部分はピュアだ。
それを本能で察知していた林檎は、困ったような顔になる。
そして、少しの沈黙の後に――――ポツリと言った。
「じゃあ……お友達から」
「thank you」
「だから――――どっかで野垂れ死ぬ前に、運命の番なんて贅沢は言わないが、せめて長く一緒に暮らしていけるくらいのヤツを見つけたいんだよね」
「しかしっ」
「ま、30になっても無理そうだったら、スッパリあきらめるさ。歳食ってまで、いつまでも未練たらしく番を探す気はないしね。そうなったら友達に頼んで、居酒屋のバイトでも紹介してもらおうって思ってるよ」
いっそ清々しく言い放つと、林檎はアレンを見遣る。
「――――采のことは、本気で好きだった。オレは初めて、自分がオメガで良かったと思ったよ。でも、自分の方を見ていない相手を番にするなんてのは、実際は無理なもんなんだな……」
「リンゴ――」
「この林檎様が、そんな甘っちょろい純愛野郎だったなんて、自分でも意外だったよ。経済力のあるアルファなら誰でもいいと思ってたけど……」
ふぅと溜め息をつくと、林檎はニコリと笑った。
「ま、次の恋こそ最後だと思って、ゆっくり捜すさ」
じゃあ、タクシーを呼んでくれよと言う林檎を、アレンはジッと見つめた。
そうして彼は、おもむろに口を開く。
「君は……可愛い部類の容姿ではあるが、だからといって、際立って秀でているとは言えないだろう」
「なんだよ? そんなの、とっくに自覚済みだけど」
ムッとしながら、林檎はアレンを睨む。
だがアレンは、林檎を侮蔑するでもない凪いだ瞳のまま、穏やかな口調で続ける。
「――だが君は、とても強い。こんなに強かなオメガは、初めて見たよ」
今までアレンの周囲にいた、他者に依存する事を第一に考えているような、そんなオメガではない。
林檎は、自分の確固たる『核』を持つ、奇跡のオメガだ――――そう、アレンは思う。
「私は、正直言って……今までずっとオメガを軽蔑していた。カナデ博士が、オメガの発情を100%抑え副作用もなく安価な薬を開発したというのに、それを拒んで相変わらずフェロモンを垂れ流す輩は、最低だと思っていた」
「最低で悪かったな! アンタに迷惑は掛けてないだろう!! 」
カッとする林檎の前で、アレンは…………なんと、深々と頭を下げたのだ!
これには驚いた林檎だが、それ以上に、遠巻きにこちらの様子を伺っていた――――アレンに付き従っていた侍従や秘書、そしてSPはもっと驚いた。
これまでアレンが、誰かに対して、こんなに深々と頭を下げた事など無いからだ。
衆人環視の中、恥じることなく、アレンは謝罪の言葉を口にした。
「――――すまなかった。私が間違っていた」
「いっ……いいよ、そんなの! アンタ以上に、もっと露骨にオレを罵ってきたヤツもいるんだから。一々気にしてないっての! 」
たじろぐ林檎の前で、更にアレンは驚愕の行動に出る。
なんと彼は、その場に屈んで、床に片膝をついたのだ!
驚いた林檎へ向かい、アレンはスッと手を差し伸べる。
「リンゴ、どうかこの私と夕食を共にしてほしい」
「は、はぁ!? 何でだよ? 」
「今回の無礼を詫びたい」
「だから、気にしてねーって」
「……では、言い直そう。どうかこの私の番になって欲しい。もちろん、君がイヤなら諦めるが……」
「嫌だね! 采にはああ言ったけど、オレの本音は、日本語が通じない国には行きたくないんだよ! 」
即座に断った林檎を、またしても愕然とした顔で見上げながら……次に、アレンは相好を崩してスッと立ち上がった。
「ハハハハ! 君は本当にミラクルなオメガだ。私が膝をついて頼んだというのに、それを断るなんて前代未聞の珍事だよ――」
ひとしきり笑うと、アレンはブルーの瞳を輝かせて林檎を見つめる。
「私はこの通り、日本語はペラペラだよ。そこにいる執事も皆、日本語に精通している。アメリカに来ても不自由はしないと思うが……それでもダメかい? 」
「――――それ、本気で言ってんのか? 」
疑り深く言う林檎に苦笑しながら、アレンは頷く。
「信じられないかもしれないが、私が他者に番になってくれとプロポーズしたのは……たったの二回しかないんだ」
「なんだ、じゃあオレは二回目かよ」
「その一回目の相手には、フラれたばかりだ」
「あ……」
達実のことだと察して、林檎は無言になる。
アレンが本気で、本来は恋愛対象にならないはずの、同族であるアルファに恋をしていたのは充分に伝わっていたから……。
「その、まぁお互い、今回は縁が無かったということで……」
「そんな事はない」
「? 」
「私はいま、君に惹かれている。強かで狡猾で、でも清冽な君に。私はこの縁を大事にしたいのだが……リンゴは私の言葉を疑うのかい? 」
この男は、真の部分はピュアだ。
それを本能で察知していた林檎は、困ったような顔になる。
そして、少しの沈黙の後に――――ポツリと言った。
「じゃあ……お友達から」
「thank you」
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