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優しい声音でそう告げると、静かに聖へ背中を向けて玄関へと向かう。
「ターさん……」
このまま見送るべきか、それとも引き留めるべきか、聖は迷う。
冷徹に徹するなら、多生とは関係を切るべきだ。彼は本来、無頼の人種だ。
多生は、長く女衒を生業にしていた。
それは決して人に褒められるような仕事ではない。
なにせ、オンナを売買する商いだ。
外道だ鬼畜だと罵倒されるような、後ろ暗い暗部の仕事だ。
女衒は酷い悪党だと謗りを受けても、反論も出来ない程に。
社会的な地位を築き、責任のある立場となった聖としては、そんな男と付き合っても一つもメリットは無い。
それはもう、充分過ぎる程に判っている。
――――でも、聖はその女衒をしていた多生に惹かれたのだから、仕方がない。
「待ってくれ、ターさん! ……あんたのその復讐、オレにも手伝わせてくれ」
気が付いたら、口からそのセリフが飛び出していた。
すると、多生の足がピタリと止まった。
聖に背中を向けたまま、低い声が返って来る。
「……やめておけ、後悔するぞ」
「分かってる。でも、あんたをこのまま外に出て行かせるワケにはいかない。青菱の上層部はこの件に関しては係わるつもりはないらしいが、でも、他のヤクザは違うだろう。関川は、舎弟の斎藤をやられたんだ。このままヤツが大人しく隠れている保証はない」
ヤクザは面子を重んじる。
関川にその矜持が残っているなら、多生に落とし前を付けさせようと、いずれ動き出す可能性が高い。
聖としては、関川が動き出すよりも先に、逆にその関川の身柄を押えて警察に突き出してやり、真っ当な社会的制裁を受けさせたいと思っていたが。
しかし多生は、それは望んでいないようだ。
それだけ、咲夜を不幸にした恨みが深いという事か。
(このまま行かせたら、多生に待っているのは破滅しかない)
「ターさん……」
このまま見送るべきか、それとも引き留めるべきか、聖は迷う。
冷徹に徹するなら、多生とは関係を切るべきだ。彼は本来、無頼の人種だ。
多生は、長く女衒を生業にしていた。
それは決して人に褒められるような仕事ではない。
なにせ、オンナを売買する商いだ。
外道だ鬼畜だと罵倒されるような、後ろ暗い暗部の仕事だ。
女衒は酷い悪党だと謗りを受けても、反論も出来ない程に。
社会的な地位を築き、責任のある立場となった聖としては、そんな男と付き合っても一つもメリットは無い。
それはもう、充分過ぎる程に判っている。
――――でも、聖はその女衒をしていた多生に惹かれたのだから、仕方がない。
「待ってくれ、ターさん! ……あんたのその復讐、オレにも手伝わせてくれ」
気が付いたら、口からそのセリフが飛び出していた。
すると、多生の足がピタリと止まった。
聖に背中を向けたまま、低い声が返って来る。
「……やめておけ、後悔するぞ」
「分かってる。でも、あんたをこのまま外に出て行かせるワケにはいかない。青菱の上層部はこの件に関しては係わるつもりはないらしいが、でも、他のヤクザは違うだろう。関川は、舎弟の斎藤をやられたんだ。このままヤツが大人しく隠れている保証はない」
ヤクザは面子を重んじる。
関川にその矜持が残っているなら、多生に落とし前を付けさせようと、いずれ動き出す可能性が高い。
聖としては、関川が動き出すよりも先に、逆にその関川の身柄を押えて警察に突き出してやり、真っ当な社会的制裁を受けさせたいと思っていたが。
しかし多生は、それは望んでいないようだ。
それだけ、咲夜を不幸にした恨みが深いという事か。
(このまま行かせたら、多生に待っているのは破滅しかない)
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