彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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「っ!」

「ま、そっちの件はジュピタープロダクションは関係ない話だと思って、別ファイルにしておいたワケです。関川は狡猾な男で、それら悪事の証拠も残していないようだし……恨みは、相当買ってるようだが」

 そこで言葉を切ると、探偵はそれまで浮かべていた柔和な雰囲気をスーッと変えた。
 それに何かを感じ取り、真壁は真剣な顔になって探偵を見つめる。

「綾瀬さん、何かオレに言いたい事が?」

「こっからは完全オフレコだ。書面には残さないので、その耳でしっかりと頭に叩き込んでほしい」

 つまり今後、万が一証拠となって残らないよう口頭で伝えるという事か。
 即座に理解した真壁は、頷き返す。綾瀬探偵も軽く頷くと、小声でそれを告げた。

「……ずいぶんと、マズい事になっているようだよ?」
「マズい事?」
おたくジュピターは御贔屓さんだし、社長の御堂とは知己な事だし、遠回りな社交辞令はやめておこう。ハッキリ言って、御堂の匿っている笹川多生の尻には火が付いている状態だ」
「なんだって!?」

 笊川多生の名が探偵の口から出て、真壁は仰天する。

「何で笊川が、ここで出て来るんですか!?」

「半年前、斎藤というヤクザが泥酔状態で車道に飛び出し、車に撥ねられて死んだ。自業自得だし、死んだのはヤクザだ。事件性も無いということで誰も気にもしなかった。だが……ヤツの兄貴分だった関川・・がしつこく食い下がり、司法解剖に回されたんだ」

「また関川ですか?……とにかく、続きを」

「司法解剖の結果、斎藤の喉奥が、金属のような物で傷付いているのが分かった。成分を解析したところ、ステンレス製で喉奥4.8㎝の位置で正確に円状に傷が付いていた。つまり斎藤は、身動きの出来ない状態で口にステンレスの漏斗を突っ込まれ、大量の酒を飲み込まされたワケだな」

「っ!!」

「注ぎ口が4.8㎝だと、外径は41.8㎝もの大型漏斗になる。警察が販売店を調べたら、履歴から直ぐに分ったらしいよ。半年前の17時、それを買った人物がいた事に」
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