彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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 漏斗の購入者の正体を察して青ざめる真壁に対し、綾瀬探偵は淡々と事実を告げる。

「そして、その時刻帯に訪れた客も、防犯カメラの解析から判明した。被疑者は笊川多生。傷害と売春防止法違反で逮捕歴のあるゴロツキだ」

 真壁も、多生はよろしくない・・・・・・人物と認識していた。
 昔、青菱会系の末端組織で、女衒を生業にしていたろくでもない男だと。
 そんな男をマンションへ匿っている聖を案じて、それとなく忠告もしていた。
 だが、笊川多生に殺人の容疑が掛かっているなんて知らなかった。

 まさか、警察まで動いていたとは!

「それは、全部本当の事なんですか?」

 事実と分かっていても、つい訊き返してしまった真壁に、探偵は同情したように頷く。

「ああ、本当の事だ。日本の警察は真面目で優秀だ。奴等は笊川多生の足取りを追う為に、この半年分の街中の防犯カメラを解析中だ。すでに、二週間前に〇〇通りの歩道に座り込んでいた笊川の情報をキャッチしている。そして、その笊川に声を掛けていた人物も……」
「っ!」

 真壁の顔から、一気に血の気が引く。

「な、なんだって! それじゃあ、警察の捜査の手は――」
「急いだ方が良い」

 探偵は、そう告げる。

「強制捜査の令状が出るのも時間の問題だ。このままだと、御堂聖は犯人隠避の容疑で捕まるかもしれない。知らぬ存ぜぬを押し通すなら、早急に笊川を追い出すか、さもなくば逆に警察へ通報するかだ」

“昔の知り合いだったのでマンションへ泊めてしまったが、話をする内に、凶悪な事件を起こしたらしいと知って怖くなったので通報した”

 そういう形を取れば、御堂聖はただの気の毒な被害者だ。

(聖さん……! オレは、あなたを護りたい。でも、オレがそれをしたら、あなたはオレを恨むかもしれない……)

 苦し気に顔を歪める真壁に、探偵は慰めるように言う。

「――ま、どうするかは貴方次第だ。この情報だって、昔の知り合いから情報を横流ししてもらった訳だから表沙汰には出来ない。全部、秘密の事だ」

「…………綾瀬さん……ありがとうございます」
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