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今までの経緯を考えれば、当然、第一王女であるアナスタシアの主催するパーティーを一番優先すると思うのに。
意外そうな顔をするユリに、リリスはクスッと笑う。
「もちろん、アナスタシア様は特別のお客様よ。でも、もしもこの先、アナスタシア様がつまづく可能性もゼロではないでしょう?」
「それは――そうですね」
宮廷が、思ったよりも暗雲漂う状況にある事は、王都に着いてからあちこちで耳にしているユリである。
王都から遠く離れた田舎にいた頃は、王都エルドランドはただただ華やかな大都会だとしか思っていなかったが、ここはとんだ魔窟らしい。
そこでハッと気づき、ユリは探るような視線を送った。
「もしかして、ジンさんが何か言ったんですか?」
「ジン? ……ええ、そうね。彼もそう言っていたわ。だからここは、敢えて第二王女の主催するティーパーティーの招待を受けようと思っているの。春の園遊会のような大掛かりなものではないから、アナスタシア様にもそれ程角も立たないだろうしね」
「そういうものなんですか? 貴族との付き合いというのも、複雑ですねぇ」
嘆息するユリに、リリスも苦笑を返す。
「全くそうね。一方に肩入れし過ぎたらバランスが悪いのよ。でもそこを上手く渡り合ってこられたから、こうして生きてこられたのよね」
「やっぱり、ジンさんの手腕で?」
「そうね。彼は私にとって有益な情報を持って来てくれるから、とても助かっているわ」
六年前。
悪魔であるジンの力を使うには――つまり魔法を使うには、その代償が必要だと彼は要求して来た。
憎い相手に死や病をもたらすには、死んでも病んでもいい生贄が必要だという訳だ。
しかしリリスには、そんな代償を用意する事など不可能だった。
ならば、どうすればいいのか?
(まさか、情報や人脈を提供してやる代わりに、私が王都で権勢を振る事が条件になるとは……悪魔が権力を好むなんて、意外だったわね)
意外そうな顔をするユリに、リリスはクスッと笑う。
「もちろん、アナスタシア様は特別のお客様よ。でも、もしもこの先、アナスタシア様がつまづく可能性もゼロではないでしょう?」
「それは――そうですね」
宮廷が、思ったよりも暗雲漂う状況にある事は、王都に着いてからあちこちで耳にしているユリである。
王都から遠く離れた田舎にいた頃は、王都エルドランドはただただ華やかな大都会だとしか思っていなかったが、ここはとんだ魔窟らしい。
そこでハッと気づき、ユリは探るような視線を送った。
「もしかして、ジンさんが何か言ったんですか?」
「ジン? ……ええ、そうね。彼もそう言っていたわ。だからここは、敢えて第二王女の主催するティーパーティーの招待を受けようと思っているの。春の園遊会のような大掛かりなものではないから、アナスタシア様にもそれ程角も立たないだろうしね」
「そういうものなんですか? 貴族との付き合いというのも、複雑ですねぇ」
嘆息するユリに、リリスも苦笑を返す。
「全くそうね。一方に肩入れし過ぎたらバランスが悪いのよ。でもそこを上手く渡り合ってこられたから、こうして生きてこられたのよね」
「やっぱり、ジンさんの手腕で?」
「そうね。彼は私にとって有益な情報を持って来てくれるから、とても助かっているわ」
六年前。
悪魔であるジンの力を使うには――つまり魔法を使うには、その代償が必要だと彼は要求して来た。
憎い相手に死や病をもたらすには、死んでも病んでもいい生贄が必要だという訳だ。
しかしリリスには、そんな代償を用意する事など不可能だった。
ならば、どうすればいいのか?
(まさか、情報や人脈を提供してやる代わりに、私が王都で権勢を振る事が条件になるとは……悪魔が権力を好むなんて、意外だったわね)
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