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とりあえず、芸能事務所の運営の方は順調だ。
とくに、使い勝手のいい役者は粒ぞろいで、わざわざ根回しをしなくても大丈夫なくらい、それぞれ人気は安定している。
好きな俳優・女優ランキングでは、八百長無しで、トップ10に三人もジュピタープロからエントリーしている。
もしも裏社会から業界への妨害があるとしたら、その、好調な役者陣へ発生するだろうと、聖は睨んでいた。それが一番、ジュピタープロダクションとして痛手だからだ。
まさか、直接的に、暴力行為はして来ないと思うが……。
ジュピターのタレントは勿論、スタッフにも万が一があってはならない。
どんな手を使ってくるのか分からないが、警戒は厳重なほど良い。
聖は、武道の心得のあるマネージャーを二人体制に増やして、それぞれの、売り出し中の三人の役者へ付けた。
スタッフにも、一人で行動しないよう厳しく言い含めた。
この業界、意外と外部からの妨害も頻発するので、聖が詳しく説明しなくても『気を付けろ』という命令を、皆がそれぞれ勝手に納得してくれたのは助かった。
さて、新しく本家から回してもらった真壁であるが……。
「お前は、唯一オレの事情が分かっている男だ。オレの秘書になってもらう」
「はいっ! 」
聖の言葉に、真壁は大きな声で返事をした。
「この真壁了、誠心誠意、組の為に務めさせて頂きます! 」
「――……元気なのはいいが、秘書をやるからにはそれなりに言葉遣いってヤツも考えろ。自分の事はオレじゃなくて、私。組じゃなくて、弊社だ」
そう言うと、真壁は目をパチパチさせ、そして言い直した。
「私真壁は、微力ながら弊社の力になるよう一意専心に尽くします」
口調と仕草まで変え、三十度の角度で腰を折る。
飲み込みは、かなり早そうだ。
ざっと見たところ、テコンドーか空手をしているような、理想的な筋肉のつき方をしている。
腕っぷしも、申し分なさそうだ。
正弘は、聖のオーダー通りの人材を送ってくれたらしい。
これで着ている服が、Tシャツにジャケット&チノパンというラフな格好でなければ、エリート秘書に見えるだろう。
「――お前、スーツは? 」
「あ、そっちの方が良かったですか? アパートに帰って着替えてきますか? 」
「いや、いい」
どうせ、吊るしで二万円以下の汎用品だろう。
そんな安物を着てこられては、こっちの格が下に見られる。
芸能界も極道の世界も、最初のハッタリで勝負は決まるようなものだ。
「就職祝いに、買ってやるよ。午後の予定まで時間もあるし、銀座に行こう。お前、車の運転はできるんだろうな? 」
「えっ! でも、そんな――」
「そのくらいしなきゃあ、お前の兄貴にも悪いからな」
心根の優しい、いい男だった。
かつて、その男に救われた恩は忘れていない。
「……しかしお前、驚くくらい兄貴に似ているなぁ。さすがは兄弟だ」
聖は、懐かしそうな表情になって真壁を見つめながら、微笑みを浮かべてそう言った。
「っ! 」
その綺麗な笑顔に、真壁は一瞬で心を鷲掴みにされた。
――――なんて、美しい……男でこんなに綺麗な人は初めて見たな……。
素直に、そう感じた。
きっと兄も、今の自分と同じように感じたに違いない。
だからあんなに、嬉しそうな顔で御堂聖の事を口にしたのだろう。
(兄貴。オレはあんたの分まで、この男の為に働くよ)
真壁はそう心に誓い、頬を紅潮させながら聖を見た。
しかしこの時は、まだそれが恋だとは思っていない。
ただ、尊敬する極道に対する、憧憬だと信じた。
とりあえず、芸能事務所の運営の方は順調だ。
とくに、使い勝手のいい役者は粒ぞろいで、わざわざ根回しをしなくても大丈夫なくらい、それぞれ人気は安定している。
好きな俳優・女優ランキングでは、八百長無しで、トップ10に三人もジュピタープロからエントリーしている。
もしも裏社会から業界への妨害があるとしたら、その、好調な役者陣へ発生するだろうと、聖は睨んでいた。それが一番、ジュピタープロダクションとして痛手だからだ。
まさか、直接的に、暴力行為はして来ないと思うが……。
ジュピターのタレントは勿論、スタッフにも万が一があってはならない。
どんな手を使ってくるのか分からないが、警戒は厳重なほど良い。
聖は、武道の心得のあるマネージャーを二人体制に増やして、それぞれの、売り出し中の三人の役者へ付けた。
スタッフにも、一人で行動しないよう厳しく言い含めた。
この業界、意外と外部からの妨害も頻発するので、聖が詳しく説明しなくても『気を付けろ』という命令を、皆がそれぞれ勝手に納得してくれたのは助かった。
さて、新しく本家から回してもらった真壁であるが……。
「お前は、唯一オレの事情が分かっている男だ。オレの秘書になってもらう」
「はいっ! 」
聖の言葉に、真壁は大きな声で返事をした。
「この真壁了、誠心誠意、組の為に務めさせて頂きます! 」
「――……元気なのはいいが、秘書をやるからにはそれなりに言葉遣いってヤツも考えろ。自分の事はオレじゃなくて、私。組じゃなくて、弊社だ」
そう言うと、真壁は目をパチパチさせ、そして言い直した。
「私真壁は、微力ながら弊社の力になるよう一意専心に尽くします」
口調と仕草まで変え、三十度の角度で腰を折る。
飲み込みは、かなり早そうだ。
ざっと見たところ、テコンドーか空手をしているような、理想的な筋肉のつき方をしている。
腕っぷしも、申し分なさそうだ。
正弘は、聖のオーダー通りの人材を送ってくれたらしい。
これで着ている服が、Tシャツにジャケット&チノパンというラフな格好でなければ、エリート秘書に見えるだろう。
「――お前、スーツは? 」
「あ、そっちの方が良かったですか? アパートに帰って着替えてきますか? 」
「いや、いい」
どうせ、吊るしで二万円以下の汎用品だろう。
そんな安物を着てこられては、こっちの格が下に見られる。
芸能界も極道の世界も、最初のハッタリで勝負は決まるようなものだ。
「就職祝いに、買ってやるよ。午後の予定まで時間もあるし、銀座に行こう。お前、車の運転はできるんだろうな? 」
「えっ! でも、そんな――」
「そのくらいしなきゃあ、お前の兄貴にも悪いからな」
心根の優しい、いい男だった。
かつて、その男に救われた恩は忘れていない。
「……しかしお前、驚くくらい兄貴に似ているなぁ。さすがは兄弟だ」
聖は、懐かしそうな表情になって真壁を見つめながら、微笑みを浮かべてそう言った。
「っ! 」
その綺麗な笑顔に、真壁は一瞬で心を鷲掴みにされた。
――――なんて、美しい……男でこんなに綺麗な人は初めて見たな……。
素直に、そう感じた。
きっと兄も、今の自分と同じように感じたに違いない。
だからあんなに、嬉しそうな顔で御堂聖の事を口にしたのだろう。
(兄貴。オレはあんたの分まで、この男の為に働くよ)
真壁はそう心に誓い、頬を紅潮させながら聖を見た。
しかしこの時は、まだそれが恋だとは思っていない。
ただ、尊敬する極道に対する、憧憬だと信じた。
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