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「あ、ありがとうございます! 」
七海の太鼓判に、奏の顔はパァっと輝いた。
奏の最も尊敬する天才が言うのだから、間違いない!
新薬は、本当に完成したのだ!!
これで、最も下卑な存在として、長い間最下層へと追い遣られていたオメガの地位は復権できるに違いない。
――――しかし……。
「オメガのフェロモンの方は、相変わらずという点は要注意だな――――今までは誘う側だったオメガが、諸悪の根源のように見做されていたが…………これは世界がひっくり返るような大転換だ」
そのセリフに、奏の顔は曇った。
そうだ、そうなのだ。
正嘉は……奏のオメガのフェロモンに抵抗できずに、オスの本能を剥き出しにして襲い掛かって来た。
…………とても、怖かった。
項に噛みつかれた時の衝撃と絶望たるや、言葉にならない。
本当に、目の前が真っ暗になった。
抵抗虚しく、項に『番の上書き』をされてしまった――――もう、この身は栄太のモノではなくなってしまった。そんな失意のどん底の落とされ、奏は…………。
そこで、奏はハタと気付いた。
「な、七海先輩……今、僕は……アルファの支配を受けていないと……」
すると、七海は力強く頷いて答えた。
「ああ! 奏は『番』の鎖に繋がれていないから、安心しな! 」
「ほ、本当ですか? 」
「本当だよ。従来通りなら、アルファに項を噛まれて番にされてしまうと、オメガは行動も感情も大きく支配されてしまって――――アルファの命令一つでどんな醜態も晒す傀儡になってしまうところだけれど、奏はそんな事にはならない筈だ」
そう言うと、七海は別の成分データをタブレットに表示させる。
「――これは、ついさっき奏から採血させてもらったデータだ。アルファの番を持ったオメガの血液は変異して血小板凝集が見られるんだが、奏には現在そんな現象は見られない。――――いや、正確に言えば、正嘉に噛まれた事により一時的に従来の反応は示したんだが、その後緩やかに状態を戻した感じだな」
「そんな事が――」
「データは嘘をつかない。アルファに噛まれ、即効性の毒に侵された状態になった奏は、いったんは従来のオメガのような反応をしたに違いない。だが、それからこの状態に戻った! ……これまでは、通常なら有り得ない事だ。これは明らかに、新薬の効果だろう」
「……」
「そして、奏がずっと握り締めていたハンカチを取ったところ、さっきも言った通り容態は安定して戻って行った。その経過を観察したデータもあるよ。ほら、これだ」
「本当だ……」
確かに、七海の言う通りだった。
一度変異したオメガの身体が、再び元に戻るなんて――……考えられない事だが、全てのデータが、それが本当の事だと教えている。
「じゃあ、じゃあ……もしかして――――もう『番』そのものが成り立たなくなるのでしょうか? 」
奏の言葉に、七海は微笑んだ。
「そうだね。でも、それは歓迎して良い事じゃないか? これからはベータもアルファも関係なく、オメガは好きな相手と恋愛して結婚する事になるだけさ。発情期は、今まではオレ達にとってただ辛いだけの時期だったけれど、それも意味が変わる事になる」
理性も何もかも吹っ飛び、性の虜になってしまうオメガの発情期。だが、この新薬は、身体の方は相変わらず発情期特有のフェロモンを発するが――――頭の方は、冷静でいられる。
子供を望むオメガは、発情期に合わせて結婚相手と子作りをするようになるだろう。
今までは、そんな選択さえオメガは出来なかった。
しかしそれが、自由意思で決定可能になる。そういう未来が待っている。
「よかった――――」
本当に安堵して、奏はポロっと涙を零した。
「ぼ、僕……もう終わりだって。項に――――正嘉さまに上書きされて……目の前が真っ暗になって……でも、このデータが正しいなら……僕は、正嘉さまのモノにはなっていないんですね? 」
七海の太鼓判に、奏の顔はパァっと輝いた。
奏の最も尊敬する天才が言うのだから、間違いない!
新薬は、本当に完成したのだ!!
これで、最も下卑な存在として、長い間最下層へと追い遣られていたオメガの地位は復権できるに違いない。
――――しかし……。
「オメガのフェロモンの方は、相変わらずという点は要注意だな――――今までは誘う側だったオメガが、諸悪の根源のように見做されていたが…………これは世界がひっくり返るような大転換だ」
そのセリフに、奏の顔は曇った。
そうだ、そうなのだ。
正嘉は……奏のオメガのフェロモンに抵抗できずに、オスの本能を剥き出しにして襲い掛かって来た。
…………とても、怖かった。
項に噛みつかれた時の衝撃と絶望たるや、言葉にならない。
本当に、目の前が真っ暗になった。
抵抗虚しく、項に『番の上書き』をされてしまった――――もう、この身は栄太のモノではなくなってしまった。そんな失意のどん底の落とされ、奏は…………。
そこで、奏はハタと気付いた。
「な、七海先輩……今、僕は……アルファの支配を受けていないと……」
すると、七海は力強く頷いて答えた。
「ああ! 奏は『番』の鎖に繋がれていないから、安心しな! 」
「ほ、本当ですか? 」
「本当だよ。従来通りなら、アルファに項を噛まれて番にされてしまうと、オメガは行動も感情も大きく支配されてしまって――――アルファの命令一つでどんな醜態も晒す傀儡になってしまうところだけれど、奏はそんな事にはならない筈だ」
そう言うと、七海は別の成分データをタブレットに表示させる。
「――これは、ついさっき奏から採血させてもらったデータだ。アルファの番を持ったオメガの血液は変異して血小板凝集が見られるんだが、奏には現在そんな現象は見られない。――――いや、正確に言えば、正嘉に噛まれた事により一時的に従来の反応は示したんだが、その後緩やかに状態を戻した感じだな」
「そんな事が――」
「データは嘘をつかない。アルファに噛まれ、即効性の毒に侵された状態になった奏は、いったんは従来のオメガのような反応をしたに違いない。だが、それからこの状態に戻った! ……これまでは、通常なら有り得ない事だ。これは明らかに、新薬の効果だろう」
「……」
「そして、奏がずっと握り締めていたハンカチを取ったところ、さっきも言った通り容態は安定して戻って行った。その経過を観察したデータもあるよ。ほら、これだ」
「本当だ……」
確かに、七海の言う通りだった。
一度変異したオメガの身体が、再び元に戻るなんて――……考えられない事だが、全てのデータが、それが本当の事だと教えている。
「じゃあ、じゃあ……もしかして――――もう『番』そのものが成り立たなくなるのでしょうか? 」
奏の言葉に、七海は微笑んだ。
「そうだね。でも、それは歓迎して良い事じゃないか? これからはベータもアルファも関係なく、オメガは好きな相手と恋愛して結婚する事になるだけさ。発情期は、今まではオレ達にとってただ辛いだけの時期だったけれど、それも意味が変わる事になる」
理性も何もかも吹っ飛び、性の虜になってしまうオメガの発情期。だが、この新薬は、身体の方は相変わらず発情期特有のフェロモンを発するが――――頭の方は、冷静でいられる。
子供を望むオメガは、発情期に合わせて結婚相手と子作りをするようになるだろう。
今までは、そんな選択さえオメガは出来なかった。
しかしそれが、自由意思で決定可能になる。そういう未来が待っている。
「よかった――――」
本当に安堵して、奏はポロっと涙を零した。
「ぼ、僕……もう終わりだって。項に――――正嘉さまに上書きされて……目の前が真っ暗になって……でも、このデータが正しいなら……僕は、正嘉さまのモノにはなっていないんですね? 」
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