彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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Good-bye, days dear

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 真壁の言葉に、一瞬だけ聖は顔を上げた。

 だが、すぐに視線は、手元の書類へ戻された。

「――そうか」

「ええ。加賀は、完全に役と一体化していたようですね。最終シーンの時なんて、体重も40kgまで落としたそうですよ」

 多分それは、落としたのではなく落ちた・・・のだろう。

 聖と別れた男達は、一様にそんな有様にまで落ち込む。

 誉もきっと、あの後、手ひどい失恋の痛手に食べ物も喉を通らなくなったのだろうが――可愛い嫁さんの為に、一念発起して立ち直ったか。

『本当に――好き、だったよ……』

 あのセリフは、真実だったんだろう。

 誉は、スクリーンの向こうに居るであろう聖に向かって、別れの言葉を告げたに違いない。

(そこから立ち直ったのなら……事務所社長として、主演俳優へ花とシャンパンを贈っても不自然ではないかな……)

 漠然と考えていたら、真壁が朗らかな声で報告してきた。

「ああ、それから、会社名義で加賀の自宅へ花とお祝いも贈っておきました。マスコミ対応の方も、オレの方で手を回しておきましたから、ご安心ください」

「?」

「無事に生まれたそうです。3000gの元気な女の子だそうです」

「そりゃあ……良かったな……」

(もう、オレの出る幕は本当に無さそうだな)

 いい加減にこっちもそれを受け入れて、あとはもう言葉通りに、二度と会わないのが流儀だ。

(花とシャンパンを――――なんて、バカな事を考えなくてよかった)

 真壁に任せておけば、あとはもう問題ない。

 ジュピタープロダクションに所属する一俳優として、今後も滞りなくスケジュールを管理
してくれるだろう。

「――――本当に、良かったよ……」

 聖は自分に言い聞かせるように、そう小さく呟いていた。
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