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不安を訴える真壁に、ユウはあっけらかんとした口調で言う。
「そんなに心配だって言うなら、自分が動けばいいじゃないですか」
「え?」
茫然とする真壁に、ユウは少しイライラした様子で宣告する。
「だから、真壁さんが直接聖さんを誘えっていうんですよ。オレ、さっきから同じ事を言ってますよね?」
――――真壁が、自らの立場を乗り越えて、仕える主人であるハズの聖をデートに誘う。
一瞬その光景を考え、
「そんな、恐れ多い!!」
真壁は顔を真っ赤にして、即座に首を振った。
「オレは、確かに聖さんを敬愛してますが……でも、分不相応というものは心得ているつもりです。オレは、そんな、図々しいことを言える身分では――」
「でもそれじゃあ、どっかの誰かに攫われるのを、指を咥えて見ているしか出来ないって事ですよ?」
尤もなユウの言い分に、真壁はうっと唸る。
しかし、こうやってユウに言われるまでもない。
ユウは知らないだろうが、真壁は既に、何度か聖へ告白をしている。
――――そう、『告白』だけはしているのだ。
ただ、その先を、真壁からは促したり急かしたりするアクションを起こしていないので、ほとんど進展していない現状なワケだが。
「……でも、あの人は……オレが何か言おうとすると、それ以上はいうなとダメを出すんです。そこを強引に行くのも……」
悲しそうに目を伏せる聖を目の当たりにすると、真壁はもう何も言えなくなってしまう。
ここしばらく、ずっとそんな感じだ。
「だからオレは、あの人の心が落ち着くのを待ってみようかと、そう考えているんです」
切々と胸の内を語ったところ、ユウは呆れたように溜め息をついた。
「それって、ようするにチキンって事ですね」
「は?」
「自分の不甲斐なさを、相手の為だとすり替えるのは卑怯者のやる事ですよ。玉砕しようと何だろうと、正面突破で行けばいいじゃないんですか?」
「そんな、オレなんてっ」
焦って言い募ろうとする真壁の脇腹を、ユウの掌底がドスっと襲った。
「っ!?」
不意打ちで、死角から繰り出された攻撃に反応する事は、如何に真壁がライセンスを所持する元ボクサーだったとしても不可能だ。
それに第一、まさか掌底が来るなんて予想もしていなかったから、腹筋も締めていなかった。完全に油断していた。
思いっきりダメージを喰らい、真壁は息を詰まらせる。
「うぅ……ユ、ユウさん……?」
「言い訳は無用です。そういう不毛な会話は耳障りですから」
「……は、……はい……」
床に崩れるのを必死に堪えている真壁に向かい、ユウは天真爛漫な笑顔を向ける。
「あ、もしかして今の結構効きました? 」
ユウの笑顔は妖精のように可愛く無邪気で、邪念の塊であろうこっちの身としては眩しくて辛いものがある。
堪らず俯く真壁に、ユウは恐ろし気な事を告げる。
「聖さんが、素人は拳を痛めやすいから、攻撃するなら掌底が一番だって言ってたんですよね。あとは、ナニを思いっきり握って捩じれって。これなら、格闘経験なんてないオレでもそこそこケンカ出来るかな?」
多分、次にユウの攻撃を喰らうのは、ユウの恋人である柊・タルヴォ・零であろう。
真壁は腹を抱えながら、そう確信していた。
「そんなに心配だって言うなら、自分が動けばいいじゃないですか」
「え?」
茫然とする真壁に、ユウは少しイライラした様子で宣告する。
「だから、真壁さんが直接聖さんを誘えっていうんですよ。オレ、さっきから同じ事を言ってますよね?」
――――真壁が、自らの立場を乗り越えて、仕える主人であるハズの聖をデートに誘う。
一瞬その光景を考え、
「そんな、恐れ多い!!」
真壁は顔を真っ赤にして、即座に首を振った。
「オレは、確かに聖さんを敬愛してますが……でも、分不相応というものは心得ているつもりです。オレは、そんな、図々しいことを言える身分では――」
「でもそれじゃあ、どっかの誰かに攫われるのを、指を咥えて見ているしか出来ないって事ですよ?」
尤もなユウの言い分に、真壁はうっと唸る。
しかし、こうやってユウに言われるまでもない。
ユウは知らないだろうが、真壁は既に、何度か聖へ告白をしている。
――――そう、『告白』だけはしているのだ。
ただ、その先を、真壁からは促したり急かしたりするアクションを起こしていないので、ほとんど進展していない現状なワケだが。
「……でも、あの人は……オレが何か言おうとすると、それ以上はいうなとダメを出すんです。そこを強引に行くのも……」
悲しそうに目を伏せる聖を目の当たりにすると、真壁はもう何も言えなくなってしまう。
ここしばらく、ずっとそんな感じだ。
「だからオレは、あの人の心が落ち着くのを待ってみようかと、そう考えているんです」
切々と胸の内を語ったところ、ユウは呆れたように溜め息をついた。
「それって、ようするにチキンって事ですね」
「は?」
「自分の不甲斐なさを、相手の為だとすり替えるのは卑怯者のやる事ですよ。玉砕しようと何だろうと、正面突破で行けばいいじゃないんですか?」
「そんな、オレなんてっ」
焦って言い募ろうとする真壁の脇腹を、ユウの掌底がドスっと襲った。
「っ!?」
不意打ちで、死角から繰り出された攻撃に反応する事は、如何に真壁がライセンスを所持する元ボクサーだったとしても不可能だ。
それに第一、まさか掌底が来るなんて予想もしていなかったから、腹筋も締めていなかった。完全に油断していた。
思いっきりダメージを喰らい、真壁は息を詰まらせる。
「うぅ……ユ、ユウさん……?」
「言い訳は無用です。そういう不毛な会話は耳障りですから」
「……は、……はい……」
床に崩れるのを必死に堪えている真壁に向かい、ユウは天真爛漫な笑顔を向ける。
「あ、もしかして今の結構効きました? 」
ユウの笑顔は妖精のように可愛く無邪気で、邪念の塊であろうこっちの身としては眩しくて辛いものがある。
堪らず俯く真壁に、ユウは恐ろし気な事を告げる。
「聖さんが、素人は拳を痛めやすいから、攻撃するなら掌底が一番だって言ってたんですよね。あとは、ナニを思いっきり握って捩じれって。これなら、格闘経験なんてないオレでもそこそこケンカ出来るかな?」
多分、次にユウの攻撃を喰らうのは、ユウの恋人である柊・タルヴォ・零であろう。
真壁は腹を抱えながら、そう確信していた。
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