彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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真壁了、犬の生活🐕

真壁了、忠犬の日常🐕

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 きっと聖は、瞳をキラキラさせながら真壁の元を訪ねて来るだろう。

 そのついでに、飼い主である真壁の方にも興味を持ってもらえれば万々歳だ。

 これならモチベーションアップになるし、命を懸けて必ず犬を大切にする!

(うん、それなら四方丸く収まるぞ。奮発していいワインを用意しておけば、聖さんもご機嫌のままオレのマンションへ滞在してくれるかも……)

 ゆったりとした部屋着姿で、自宅リビングのコタツでくつろいでいる聖の姿を想像するだけで、つい頬の緩む真壁である。

 そうしてムフフっとほくそ笑んでいると、対岸の歩道をオラオラで歩くガラの悪い連中が目についた。

 今時、まだあんなチーマーのような輩がいるのかと意識をそちらへ向けたところ、見知った顔が先頭にいることに気付く。

「あっ!」

「っ!?」

 相手も、真壁に気付いたようだ。

 そのまま道路を横断して近付いてくる様子に、真壁は仕方なしに路肩へ車を停車させる。

 窓を開けて「何か用か?」と訊ねようとしたところ、向こうの方から口火を切って来た。

「久しぶりだな、オッサン」

「――ああ、そうだな」

 声をかけてきた男は、先日互いに犬になっていた青菱一夏であった。

 しかし一夏はあまり記憶が残っていないのか、ちょっと訝し気に首を傾げる。

「ええと、最後に会ったのは……ん? 青菱の本部だったか?」

 ボクサー犬とポメラニアンになって、互いに腹を見せて聖に構ってアピールをしていた記憶は、やはり曖昧のようだ。

 頭を振りながら、一夏は『そんな事はどうでもいいか』と言い、次に思いもかけぬことを口にした。

「オレの親父が、昨日から行方をくらましてんだ。お前、どっかで見なかったか?」

「親父? 青菱史郎のことか?」

「そうだよ。それ以外に誰がいるってんだ? お陰でこっちは、昨日から全構成員へ招集かけて秘密裏に探し回ってんだ。敵対する組織に拉致られたか、どっかの女の所へしけ込んでんのか……親父もマジで気紛れだからな……」
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