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8 Eden
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「どこかの国へ強制送還するにしても、移送する事は不可能だ。国籍が無いんだからな。この時点で、もう大人達はノータッチの見物だが――さすがに親がいない10歳の子供を、一人で放っておくことも憚れる。新を保護した民生委員は取り敢えず、養護施設へ赤羽新を入所させたんだ」
そこで、ジンと新は出会ったのだろう。
二人は歳も近い所為か、随分と仲のいい友人関係になったらしい。
その後、ジンは中学を卒業し、養護施設を退所した。
同時に、赤羽新も施設から姿を消したらしい。
「え? でも――ジンが義務教育期間を終えたと言っても、二人ともまだ未成年ですよね? ジンは子役モデルの方も、その頃には辞めているハズだし。そもそも未成年二人を放っておくなんて事があるんですか? 暮らしぶりや生活状況とかは、福祉課のような管轄機関でフォローしないんですか?」
佐々木の尤もな疑問に、綾瀬は首を振って答えた。
「養護施設では、退所後までは面倒を見ないし干渉もしないのさ。基本、無視だ」
「嘘でしょう!?」
「それが本当なんだ。ジンの件もどうかと思うが、新に関しては完全に黙殺状態だ。無国籍児等の放置は問題だと、何度か法律の改正案も国会で提出されたらしいが……この件に関しては全く進展もないようだ。自分の生活に関係ないもんだから、みんなが無関心の所為だろうな。せいぜい、福祉士が自立支援のアドバイスをする程度だ」
その後、ジンと新は福祉士の紹介で二人でアパートを借りて、アルバイトをしながら生活したようだ。
しかし、元々戸籍も無い新の方は、実在しない幽霊のような存在なのに変わりはなかった。養護施設にも、赤羽新という人間の記録は一切が残されていない。
「だから、お前がジンの出生を調べた時、新の方の情報には行き当たらなかったんだろう」
「で、でも――二人ともそこに居たんですよね?」
「本来なら、国籍も戸籍も無い人間を、国の公式機関である児童養護施設で面倒見るわけにはいかないからな。だから職員たちは『赤羽新などいない』と口を噤んだんだ」
佐々木が養護施設へ足を運んだ際の職員の対応を見事言い当て、綾瀬は嘆息する。
「しかし無国籍児の新は保険証が無いし、住民票も無い。当然ながらそれでは就活は不向きだ。だから新とジンは、二人で一人の戸籍を共有したんだろう」
そこで、ジンと新は出会ったのだろう。
二人は歳も近い所為か、随分と仲のいい友人関係になったらしい。
その後、ジンは中学を卒業し、養護施設を退所した。
同時に、赤羽新も施設から姿を消したらしい。
「え? でも――ジンが義務教育期間を終えたと言っても、二人ともまだ未成年ですよね? ジンは子役モデルの方も、その頃には辞めているハズだし。そもそも未成年二人を放っておくなんて事があるんですか? 暮らしぶりや生活状況とかは、福祉課のような管轄機関でフォローしないんですか?」
佐々木の尤もな疑問に、綾瀬は首を振って答えた。
「養護施設では、退所後までは面倒を見ないし干渉もしないのさ。基本、無視だ」
「嘘でしょう!?」
「それが本当なんだ。ジンの件もどうかと思うが、新に関しては完全に黙殺状態だ。無国籍児等の放置は問題だと、何度か法律の改正案も国会で提出されたらしいが……この件に関しては全く進展もないようだ。自分の生活に関係ないもんだから、みんなが無関心の所為だろうな。せいぜい、福祉士が自立支援のアドバイスをする程度だ」
その後、ジンと新は福祉士の紹介で二人でアパートを借りて、アルバイトをしながら生活したようだ。
しかし、元々戸籍も無い新の方は、実在しない幽霊のような存在なのに変わりはなかった。養護施設にも、赤羽新という人間の記録は一切が残されていない。
「だから、お前がジンの出生を調べた時、新の方の情報には行き当たらなかったんだろう」
「で、でも――二人ともそこに居たんですよね?」
「本来なら、国籍も戸籍も無い人間を、国の公式機関である児童養護施設で面倒見るわけにはいかないからな。だから職員たちは『赤羽新などいない』と口を噤んだんだ」
佐々木が養護施設へ足を運んだ際の職員の対応を見事言い当て、綾瀬は嘆息する。
「しかし無国籍児の新は保険証が無いし、住民票も無い。当然ながらそれでは就活は不向きだ。だから新とジンは、二人で一人の戸籍を共有したんだろう」
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