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9 living hell
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そうなのだ。
ジンは安蒜と会うために今まで様々な手を使ったのだが、どうしても安蒜本人と顔を合わせる事は叶わなかった。
二年前、モデルとしてこの業界へ強引に潜り込んだのは、彼なりに考え出した最終手段だったのだが――――しかし、やはり安蒜は姿を見せず、ジンは焦燥を深めていた。
そんな折、手駒にしようと誑し込んだ豊川安生の息子からAHIRUのシークレット・ショーの存在を耳にし、貴重な情報を手に入れることが出来た。
“AHIRUシークレット・ショーには、スポンサーの豊川安生とデザイナー兼オーナーの安蒜昂輝も必ず出席する”
そう聞き及び、AHIRUのエージェントの一人を捜し出して接近し、上手く奴等の欲しがっているリストの情報を手に入れ、やっと組織へ潜入する切っ掛けを掴んだと思ったのだが。その矢先に、あの刃傷沙汰が起こった。
万事休すかと思ったが、それがまさか起死回生のチャンスに繋がるとは。
だがそれもこれも、この場に本当に安蒜昂輝が姿を見せないなら意味が無い。
「なぁ、どうなんだよ?」
「オーナーは忙しい方で、世界中を飛び回っておりますから……」
「だが、シークレット・ショーの時は必ずオーナーも立ち会うって聞いているぞ。安蒜昂輝は、ここに来るんだろうな?」
豊川安生の方は、既に居場所を把握している。
ジンが誑し込んだ豊川のバカ息子が、あの刃傷沙汰の後も懲りずに、未だにせっせと情報を流してくれているので、いつでも奇襲する事は可能だ。
問題は安蒜の方だ。
ヤツは常に移動しているので場所を特定する事が出来ず、復讐を遂げるには今のままでは難しい。
だからジンは、このシークレット・ショーを最後のチャンスと思って、全てを賭けた。
リストに載っていたジュピタープロダクションの社長『御堂聖』に狙いを絞り、接近して誘惑し、見事この島まで連れて来た……。
チクリと胸が痛んだが、ジンは平静を装って男へ詰め寄った。
「こっちの苦労も分かってくれよ。かの有名な『傾国の美女』を落とすのに、どれだけ苦労した事か。少しはオレだって、良い思いをしたって良いだろうが」
ジンは安蒜と会うために今まで様々な手を使ったのだが、どうしても安蒜本人と顔を合わせる事は叶わなかった。
二年前、モデルとしてこの業界へ強引に潜り込んだのは、彼なりに考え出した最終手段だったのだが――――しかし、やはり安蒜は姿を見せず、ジンは焦燥を深めていた。
そんな折、手駒にしようと誑し込んだ豊川安生の息子からAHIRUのシークレット・ショーの存在を耳にし、貴重な情報を手に入れることが出来た。
“AHIRUシークレット・ショーには、スポンサーの豊川安生とデザイナー兼オーナーの安蒜昂輝も必ず出席する”
そう聞き及び、AHIRUのエージェントの一人を捜し出して接近し、上手く奴等の欲しがっているリストの情報を手に入れ、やっと組織へ潜入する切っ掛けを掴んだと思ったのだが。その矢先に、あの刃傷沙汰が起こった。
万事休すかと思ったが、それがまさか起死回生のチャンスに繋がるとは。
だがそれもこれも、この場に本当に安蒜昂輝が姿を見せないなら意味が無い。
「なぁ、どうなんだよ?」
「オーナーは忙しい方で、世界中を飛び回っておりますから……」
「だが、シークレット・ショーの時は必ずオーナーも立ち会うって聞いているぞ。安蒜昂輝は、ここに来るんだろうな?」
豊川安生の方は、既に居場所を把握している。
ジンが誑し込んだ豊川のバカ息子が、あの刃傷沙汰の後も懲りずに、未だにせっせと情報を流してくれているので、いつでも奇襲する事は可能だ。
問題は安蒜の方だ。
ヤツは常に移動しているので場所を特定する事が出来ず、復讐を遂げるには今のままでは難しい。
だからジンは、このシークレット・ショーを最後のチャンスと思って、全てを賭けた。
リストに載っていたジュピタープロダクションの社長『御堂聖』に狙いを絞り、接近して誘惑し、見事この島まで連れて来た……。
チクリと胸が痛んだが、ジンは平静を装って男へ詰め寄った。
「こっちの苦労も分かってくれよ。かの有名な『傾国の美女』を落とすのに、どれだけ苦労した事か。少しはオレだって、良い思いをしたって良いだろうが」
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