彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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最終章

最終章-5

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「……私はどうでもいいよ。彼がずっと会いたがっていたデザイナーは、君だ。君が決めればいい」

 どうやら豊川は、自分の血縁が係わったスキャンダルの件もあり、あまりジンに対して強硬な態度に出る事を躊躇っているようだ。

 さもありなん、万が一、面白おかしくマスコミに醜聞を暴露されてはたまらないと思っているのだろう。

 息子のスキャンダルについては、金とコネの力を使ってどうにか騒ぎになる事は防いだが、また同じ事が起こった場合を考えるとリスクは当然高い。

 しかしそれは、安蒜も同じだ。

 彼らは一蓮托生だ。

 裏ビジネスの、好調なデザイナーベビー事業を嗅ぎつけられては困る。

 不承不承、安蒜は頷いた。

「……分かった。物騒な物やメディアツールのような余計な物を持っていないかボディチェックをしたら、彼を招待客の一人として正式に入室を許可しよう」

 主人の命令に、黒服たちは通常通りのボディチェックを行った。

 金属探知機で、スーッと体の後ろと前と、その表面を滑らせる。

 もしもジンが、刃物やスマホを隠し持っていればたちまちバレるが……。

――――音は、鳴らなかった。

「よし、いいだろう。こちらの席へどうぞ」

「……どうも」

 ジンはチラリと、安蒜と豊川へ目線を向けた。

 二人は共に、ステージの下座の方へ座ろうとしていた。

 ジンの席からは少し距離が有り、間には黒服のSPが陣取っている。

(あのSPは邪魔だな。チャンスは一度だから、慎重に行動しないと……)

 ジンはそう思い、席へ腰を下ろしながらそのチャンスを待つことにした。

 いったい彼は、武器を持っていないのに・・・・・・・・・・・どうやって安蒜と豊川へ復讐をするというのか?

 そんな謎を残しながら、ステージ・ショーの幕が開けた。

「皆様、どうぞ心ゆくまで美しいモデルモルモットをご覧ください」
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