彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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最終章

最終章-9

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 安蒜の『美』の努力とは、つまり整形の事であろう。

 確かにある意味、その執念たるや並大抵のものではないと感心する。

 天然の美貌と若々しさを無意識に誇る聖に比べると、安蒜の美に対する意識は病的なほどだ。

「その僕が欲しいと切望するDNAのデータ一覧があります。御堂聖は、その一覧に載っていた美神の一人でした。皆様もそれについて異論はないと思いますが――もしも不満がございましたら、どうぞこの場から退席して頂いても結構です」

 こういった催しが不快であれば、パスしてもいいと促したワケだが、当然退席する者などいない。

 皆、目をギラギラさせ固唾を飲んだまま座っている。

 それを確認し、安蒜と豊川はコクリと頷き合うと、次にパンと手を叩いた。

「――――それでは、ご覧いただきましょう。男ながらに『傾国の美女』と讃えられる、御堂聖を!!」

 それを合図にして、レッドカーペットへと、全裸の男性が連れ出された。

 不愉快そうに眉間にしわを寄せ、唇をキュッと噛んで険しい表情をしているが……その美貌は、まったく損なわれることは無かった。

 むしろ、見世物にされて屈辱を感じているような表情が、かえって被虐のエロスを倍増させ、匂い立つような色香を放出させている。

 その麗しい美貌は文句なしだが、肉体も一級品だ。

 形の良い肩のデコルテラインは美術の見本のようにバランスがいいし、ほっそりとしながらも引き締まった手足には筋肉が程よく乗っていて、これも完璧に美しい。

 背中を覆う彼岸花も、見事だ。

 華奢ではあるが、身長もあり腹筋も胸板もそれなりにあるので、貧相なイメージはない。
 
 とにかく全身のバランスが良く好ましいので、飽きる事無くいつまででも見ていられそうだ。

 そして、何より――――キュッと引き締まっている白い尻と、柔らかそうな淡い和毛からチラチラと顔を出している、綺麗な珊瑚色の雄芯たるや!

……これ程美しい男の肉体など、誰も見た事は無いのではなかろうか?

 生きている生身の美術品を、目の当たりにしている気分だ。

 客たちは一様に、ゴクリを生唾を呑み込んだ。
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