彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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後日談

Eternal-4

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 そんな抗議を無視しながら、史郎はそのまま聖を抱え上げた。

 何度も利用しているこのホテル。

 勝手知ったるもので、まるで我が家のような足取りで、史郎は聖を抱えたまま広いバスルームへと向かう。

「史郎! 最初にオレの質問に答えろ」

「分かったわかった」

 言いながら、聖をバスの中へと座らせると、史郎は上ジャージのファスナーをシャッと下ろした。

 流れるようなその作業に、聖は口を挟む隙も無い。

「おい!」

「ん?」

 器用にジャージの上着を腕から抜いてやりながら、史郎は手を止める事なく問い返す。

「何を訊きたいってんだ?」

「だから、青菱の――おいっ!」

 今度はシャワーを勢いよく頭から掛けられ、聖は怒って立ち上がろうとするが。

「危ないから座ってろ」

 言うと同時に、肩に強い力が掛かり、聖の抵抗は封じられた。

 そのままボディソープを頭から掛けられてしまい、動くにうごけなくなる。

「史郎、おまっ――ぷっ」

「口開けると泡が入るぞ。目も瞑ってろ」

「~」

 ムッとするが、確かにこれでは動けないし喋れない。

 それに、昨日から緊張状態がずっと続いていたので、ここに来てようやくホッとしているのも事実だ。

(海風に当たって、髪も服も潮の香りが染みついていたからな。マンションに帰ったら一番にシャワーで流そうと思っていたところだ……。ちょうどいいって言えば、そうだが)

 だが、この男と一緒にいて、無事で済むはずがない。

『史郎、言っておくが――オレはヤルつもりはないからな』

 と、念を押すつもりであるのだが、如何せん全身泡まみれになって洗われている状態にあっては、ロクに口を開く事が出来ない。
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